「インド太平洋」を内陸へ 日本、インド北東部開発に注力―投資呼び込み、中国封じ込めも
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023041700658&g=int

『【ニューデリー時事】日本政府がインド北東部の開発支援に力を入れている。著しい経済成長を続けるインドだが、内陸の北東部は開発から取り残されており、隣接するバングラデシュと一体化した経済圏構築を目指す。周辺地域への影響力を拡大する中国を封じ込める狙いもある。
「インド太平洋」に9.9兆円 新計画発表、平和・繁栄へ4本柱―岸田首相演説
「この地域に新たな産業バリューチェーンをつくる」。鈴木浩・駐印大使は今月11日、北東部トリプラ州アガルタラで開かれたシンポジウムでこう宣言し、投資を呼び掛けた。シンポには日系企業関係者に加え、インドやバングラの政府高官ら約130人が出席した。
北東部は同州を含む8州から成る。飛び地のように見えるが、バングラを挟み、狭い回廊でインドの半島部とつながっている。8州の総人口は5000万人前後とみられる。山がちで未発達の交通インフラに加え、分離独立運動が続き、投資先として敬遠されてきた。インドに進出する日系約1440社で、8州に生産拠点を置く企業は皆無だ。
インドは東南アジアとの経済連携を図る「アクト・イースト政策」の下、結節点である北東部の開発に日本の協力を仰いできた。インフラ整備を中心に日本が投じた政府開発援助(ODA)は累計で約4020億円に上る。3月に訪印した岸田文雄首相は「自由で開かれたインド太平洋」実現に向けた新行動計画を発表。北東部をその重要地域に挙げた。
開発のエンジンと位置付けるのは、円借款を活用して建設中のバングラ南部マタバリ港だ。大型の貨物船が着岸できる深海港で、2027年の商業利用開始を目指す。同港とのアクセスを向上させ、産業活性化につなげる青写真を描く。
日本政府筋は「『インド太平洋』が生み出すチャンスを内陸にも広げる」と力を込める。シンポに参加した日系の物流企業幹部は「開港をにらみ、これから北東部へのサービス網拡張を検討したい」と語った。
日印が北東部の開発に力を入れるのは、安全保障上の要衝であることも大きい。一部は中国との係争地で、クーデターにより国軍が実権を握ったミャンマーとも接している。
中国はミャンマー国内の少数民族を支援しており、つながりのある民族が暮らす北東部にも間接的に影響を及ぼしかねない。雇用を吸収できる産業を育てることで地域の安定化を図るほか、中国の影響を受けるバングラを日印の側につなぎ留めたい思惑もある。 』