紙幣を受託製造している最大手が経営難に。

紙幣を受託製造している最大手が経営難に。
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/31305631.html

『印刷技術が向上している今、偽札を作るのが難しい紙幣を作るのは、どこの国でもできる仕事ではありません。自前で、そういう技術を持たない国は、技術のある国へ紙幣の製造を発注します。日本の場合、人間国宝並の加工技術を持つ技師が、原版を作るので、偽札造りのメッカである北朝鮮でも、完全にはコピーできず、偽札を摘発されています。その分野で、世界最大の規模を持つのが、イギリスのデ・ラ・ルー社です。今、この会社の株が下落していて、最盛期の1/5になっています。

この会社の受け持つ紙幣は、世界150カ国に達していて、自前の造幣局を持たない国の殆どをカバーしています。この原因なのですが、それだけ貨幣の電子決済が進んで、紙幣の需要が落ちているという事があげられます。何も、仮想通貨の例を挙げる事もなく、日本も含めて、貨幣の電子化を推進する国が、増えています。これは、プリペイド・カードやデビッド・カード、クレジット・カードなどの電子決済も含みます。貨幣を電子化すると、殆ど野放し状態になっている商行為が記録として残る為、税金の徴収が自己申告ではなく、客観的なデータに基いて可能になるという利点があります。それと、十分に電子化が進むと、紙幣発行という、物凄く莫大な経費がかかる作業をする必要が無くなります。

紙幣や貨幣の発行というのは、めちゃくちゃ金のかかる作業で、しかも流通の管理もしないといけません。つまり、銀行などの金融機関を通じて、古い紙幣や貨幣は、集めて確実に破棄して、新しいものと交換する必要があるのですね。実に面倒です。こうした事にかかる費用というのは、馬鹿にならない金額になるので、国にとって通貨の発行というのは、金ばかりかかる、やっかいな作業なのです。

フィンテック企業など、新たなサービスと結びついた、従来の金融機関とは異なるネット系の金融サービスは、電子決済を取り入れる事で、とても便利である為、発展途上国も含めて、紙幣の需要というのは、右肩下がりで減っています。これが、デ・ラ・ルー社の株価が下落している原因です。つまり、望む望まないに関わらず、紙幣というものの役割が減っているのです。この辺りを狙って、ドイツで先進企業として展開していたワイヤーカード社のドイツ金融史上最大の不祥事と言われた不正会計問題を扱ったYoutube動画を作成中です。Part1は公開済みですので、よかったら、前記事のリンクからどうぞ。

この問題、かなり深刻で、顧客である国からすると、自国の紙幣の製造を依頼しているのですから、経営が悪化して潰れたりしたら、即、通貨の発行が行き詰まる事になります。切り替えると言っても、特殊印刷という極秘技術の塊みたいな分野ですから、簡単に他所の会社に依頼できません。電力という資源が、どの国でも足りなくなってきているので、全面的に電子化すれば、安心という問題でも無く、単にアナログからデジタルへの切り替えの過度期と片付けてしまえる問題でもありません。停電したら、使えませんでは、通貨は済まないからです。この問題、かなりセンシティブで、簡単には解決しない問題です。

そして、以下に通貨の発行というのが、いかに国にとって負担かという事を、この会社の母国であるイギリスの財政事情が示しています。イギリスは、先日、エリザベス女王が逝去され、チャールズ皇太子が国王に就任したので、当然ながら紙幣のデザインが変わります。今は、エリザベス女王が紙幣に印刷されていますが、これがチャールズ国王になるわけですね。ところが、新紙幣の発行は予定されているのですが、現在流通している紙幣を交換するとなると、その費用が捻出できず、今の紙幣も当分の間は、平行して利用できるように決めました。チャールズ国王の印刷された紙幣は、流通量が著しく減った時の補填か、極めて限定された量しか発行されない事が、既に決まっています。

イギリスは、国の規模に合わない手厚い福祉と社会保障で、国家財政がボロボロでして、しかも経済の調子もEUを離脱した影響で良くありません。特に、ポンドが国際決済通貨である事から、欧州の金融の中心はロンドンのシティーであり、絶対的な影響力を持っていたのですが、EU離脱で資金の流通に手続きや費用がかかるようになった事で、欧州各国に分散し始めています。既に、その座の切り崩しは、かなり急テンポで進んでいて、虎視眈々と金融センターの座を奪うべく狙われています。

今のイギリス経済は、四面楚歌状態な上、思想的に強迫観念でも持っているのかと思うくらい、CO2排出規制に振れて、石炭火力発電所を廃して、風力発電などの自然エネルギーへ転換した為、恒常的に電力不足な上、電力料金がバカ高くなっています。今年の冬は、電気代が家賃と同額になるくらい、料金の負担が増えました。それでも、電力会社は赤字だったりします。つまり、国を運営する費用が割高な上、権利ばかり見て持続性を検証しない高度な福祉行政で、常に金が無い状態が、今のイギリスという国家です。欧州に散らばっている難民が、最終的にイギリスを目指すのも、何も持っていなくても、最低限の生活が保証されるからです。もちろん、費用は、全てイギリス政府の持ち出しです。

高度な福祉行政と言っても、先日の記事で書いたように、救急車の出動回数を減らす為に、救急車要請の電話が入ると、担当医が病状を聞いて、緊急性が無いと判断すると、断るなんて事をしています。つまり、制度として高度な医療体制は維持されているのですが、金が無いから適用するのに制限をかけているのです。また、こうした緊急性を要さない患者というのは、診察まで待機状態にさせられるのですが、これが常に十万人単位で詰まっている状態で、いつ医療を受けられるのか、患者が判らない状態になっています。ただし、制度としては、確かに欧州でも最も手厚い医療制度になっています。機能していないだけで。実際、素人の患者が、うまく病状を電話で説明できるはずもなく、救急搬送を断わられて、自宅で病死した人も出ています。制度だけ見て、素晴らしいなんて言っているのは、実に愚かだという事が判ります。運用まで含めて見ないと、法律なんていうのは、魂の入ってない仏みたいなものです。条文では、いくらでも良い事が書けますからね。実行が伴ってこその法律です。

なんで、何か国内で問題が発生すると、欧州に外遊しに行って、「欧州は素晴らしい。それに較べて日本は・・・」とか言ってる政治家は、それだけで信用に足りません。恐らく、上っ面しか見てないからです。議論上での「あるべき論」とか、現実社会では、クソの役にも立たない事が多いのです。結局、イギリスは廃止する予定の原子力発電所の運転を継続し、更に新設する計画まで復活させざるを得なくなりした。もちろん、抜け目なく、原発をクリーンエネルギーに含めるという操作を先にやっています。クリーンエネルギーなら、頼っても良いという、実に都合の良い論理です。

私は、EVも行き詰まった時点で、これをやってくると見ています。欧州の掌返しは、今に始まった事ではなく、180度逆の事を平気で言い始めます。そもそも、EVの前は、「ディーゼル・エンジンこそ、環境問題の答えだ」とか言ってましたからね。そして、フォルクスワーゲンのCO2排出データ捏造事件ですよ。旗色が悪くなると、あっさり捨てて、EVに切り替えましたね。なので、基本的に信用しちゃいかんのです。そういう地域だと思って付き合わないと、振り回されて終わりです。』