特別永住者証提示断った在日韓国人の口座開設を銀行拒否 「外国人差別」と救済申し立て

特別永住者証提示断った在日韓国人の口座開設を銀行拒否 「外国人差別」と救済申し立て
https://news.yahoo.co.jp/articles/c60a5ef8b4d9452c8c31dad10cbfcd15e12026ab

『在日韓国人男性が大阪市内のりそな銀行支店で預金口座を開設しようとした際、本人確認のための運転免許証を提示したが特別永住者証明書を提示しなかったとして口座開設を拒否された。

 男性は3月10日、日本国内に住居がある在日外国人の口座開設に特別永住者証明書や在留カードの提示を求めるのは外国人差別だとして、日本弁護士連合会(日弁連)にりそな銀行と金融庁に対し差別的取り扱いをやめるよう警告することを求める人権救済申立書を提出した。

 申立人の男性は韓国籍の在日3世で、特別永住者の在留資格がある。男性は2021年12月、りそな銀行鶴橋支店近くの職場に勤務することになったため口座を開設しようと同支店を訪れた。書類に必要事項を記入して運転免許証を示し、韓国籍の特別永住者であると告げたところ、窓口の担当者は特別永住者証明書の提示を求めた。男性は運転免許証で本人確認をしているから特別永住者証明書を提示する必要はないと主張した。

 窓口担当者と代わった支店長は、りそな銀行の内規を示しながら日本国籍でない顧客については国籍、在留資格、在留期間を確認できる書類の提示を求めていると説明。男性は特別永住者証明書などを提示しなければ口座を開設できないというのは差別的取り扱いだとして提示を拒み、口座を開設できなかった。男性は他の2金融機関でも同様の扱いを受け、多民族共生人権教育センター(大阪市生野区)に相談して人権救済申し立てに踏み切った。

 申立書によると、りそな銀行が示した内規は「お客様の確認事項」として氏名、住所、生年月日、職業などのほか、日本国籍がない場合は国籍、在留資格、在留期間を挙げている。こうした確認事項は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、犯収法)に規定されているが、犯収法では日本国内に住居がある外国人の確認事項は日本人と同様と定められており、在留期間などを確認事項とする法的根拠はない。

 具体的には、確認事項の写真付き本人確認書類として、犯収法施行規則は運転免許証、パスポート、特別永住者証明書、在留カードなどを挙げていずれかの書類を提示すれば足りるとしており、運転免許証があれば特別永住者証明書などはなくてもよいとしている。』

『背景に「テロ対策」か

 ではなぜ、りそな銀行などの銀行が法的根拠のない特別永住者証明書や在留カードの提示を求めるのか。申立書は金融庁が21年2月作成の「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問」で、在留期間の定めのある外国人についてリスク低減措置として在留期間を確認するなどの顧客管理を実施する必要性を示唆しているからだと説明する。

 こうしたことから申立書は、りそな銀行が日本国内に住居がある外国人の口座開設にあたって特別永住者証明書や在留カードの提示を求めるのは不合理な外国人差別だとし、金融庁は自由権規約や人種差別撤廃条約の締約国として銀行によるこうした差別的取り扱いをやめさせる条約上の義務を負うとして、りそな銀行と金融庁に警告を出すことを求めている。

 申立人を支援する多民族共生人権教育センターの文公輝事務局長によると、1980年代まで在日外国人が口座を開設しようとした際に外国人登録証の提示を求められたが、抗議行動によって提示しなくてもよくなった。2012年の改正出入国管理法施行で外国人登録証は特別永住者証明書と在留カードに替わったが、以前と同様のことが起きたのは、外国人は犯罪リスクが高いとする差別意識が変わっていないからだと批判する。

 筆者の取材に対し、りそな銀行大阪本社は「日本国籍のない人の口座開設については在留期間などの確認のために在留カードの提示を求め、特別永住者証明書は在留期限のないことの確認のためにお願いしている」、金融庁は「本人確認事項などの調査は金融機関がリスクに応じて判断すべき事柄であり、一律に特別永住者証明書などによる確認を求めているものではない」と回答した。』