【フランス】第5共和国憲法の改正
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000188_po_02370104.pdf?contentNo=1
※ 『•政府の信任をかける表決の制限:現行法律では、首相は、ある法律について政府の信任をかけることができる。すなわち、首相のその表明の後、24時間以内に不信任
動議が可決されない限り、当該法律は表決を行わずに採択されたとみなされる。今
後は、この手続きの対象を、予算法案及び社会保障財政法案等に限定する。また、
この手法は、各会期、上記法案以外の1つの法案についてのみしか採ることができ
ないと定めた(第49条第3項)。』
※ 今回、これを使ったわけだな…。
※ ある意味、サルコジ-マクロンの「連係プレー」か…。
※ 種は、2008年(15年前-リーマンの年(起きたのは、9月))に、蒔かれていたわけだ…。
※ 上記.pdfを、テキスト変換した。
『立法情報
【フランス】第5共和国憲法の改正
海外立法情報課•鈴木尊紘
・フランスは、2008年7月23日、24回目の第5共和国憲法の改正を行った。サルコジ大統領は、
大統領選挙期間中から「過去との断絶」の必要性について述べていたが、今回の憲法改正は、
議会、大統領、及び市民の権利を含む「諸制度の現代化」が目的となっている。
憲法改正までの経緯
サルコジ大統領は、就任後、「第5共和制における統治機構の現代化及び均衡化に
関する検討•提案委員会」を発足させ、バラデュール元首相がこれを主宰した。同委
員会の報告書「より民主的な第5共和制」に原則的に沿いつつ、政府は、憲法改正案
を策定し、2008年4月23日議会に提出した。上下両院の第1、第2読会を経た後、
両院合同会(Congres)が開かれ、賛成539票、反対35T票で、有効投票の5分の3
を上回ったことにより、憲法改正案が承認された。
今回の憲法改正の柱は、①大統領の執行権の行使方法の見直し、②議会権限の強化、
③新しい市民権の拡大、である。本稿では、とりわけ①及び②に焦点を合わせ、紹介
を行う。
大統領の執行権の行使方法の見直し
•大統領任期の制限:大統領の連続任期に関する憲法規定がなかったが、その上限を2
期までと明記した(第6条)。
•人民主導による人民投票制度の導入:現行憲法では、大統領は、公権力の組織に関
する法律等に関して、人民投票(レファレンダム)にかけることができることが定
められている。今後は、こうした法案が、総議員の5分の1以上から提案され、全
有権者の10分の1以上により支持された場合には、憲法院が合憲性を審査した後、
議会が一定期間審議しないとき、大統領は、当該法案を人民投票にかけることがで
きることを新たに定めた(第11条)。
•大統領任命権の議会による監督:大統領は、高級文・武官(高級公務員)を任命す
ることができるが、この任命につき、今後は上下両院の常任委員会が審査し、それ
ぞれの委員会が5分の3以上の多数で反対を示した場合には、大統領は任命行為を
中断しなくてはならないことを規定した(第13条)。
•恩赦権:集団恩赦権を廃止し、大統領は個人に対する恩赦権のみを有する(第17条)。
•大統領の両院合同会での所信表明:これまで大統領は、教書(message。を上下両
院に送付するのみ(すなわち、国防及び外交が大統領の所管領域であり、議会はあくまで首相の
所管領域であるという「棲み分け」が原則的にある。)であったが、今後は、大統領は、両院
合同会に招集された国会議員に対して所信を表明することができ、その後、討論が
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行われる。
しかし、この討論に大統領は参加できず、いかなる表決も行われないこ
とを明記した(第18条)。
議会権限の拡大
•議会による行政監視及び政策評価の明文化:「議会は、法律を議決する。議会は、政
府活動を統御し、公共政策を評価する」と明記した(第24条)。
•軍事行動の議会による統御:軍事的介入を行う場合には、政府は、遅くとも介入後3
日以内に議会に報告をしなければならない。軍事介入が4か月を超える場合には、
議会にその承認を求めなければならない(上院[元老院]が反対する場合には、下院[国民議会]
にのみ承認を得ればよい。)ことを新たに定めた(第35条)。
•法案修正対象の厳格化:昨今、フランス議会では、提出される法案とその修正が多
すぎるという状況が続いているが、現行憲法第34条に列挙される法律で定めるべき
事項に属さない法案は、政府が不受理を申し立てることができる。これに加えて、
上下両院議長も不受理の申立てをすることができると定めた(第41条)。
•本会議における審議の対象:現行憲法では、政府提出法案に関しては、本会議で審
議される対象は、政府提出の法文(原案)であるとされている。しかし、今後は、
予算法案、社会保障財政法案及び憲法改正法案以外は、本会議の前に行われる委員
会で審議・修正された法文について本会議で審議することを規定した(第42条第1、
2項)。
•委員会における審議時間の確保:本会議前の委員会での審議が十分に行われるよう
に、先議の院では法案が提出されてから6週間、後議の院においては送付を受けて
から4週間、本会議での審議はできないことを定めた(第42条第3項)。
•緊急手続きの改善:政府がある法案に対し緊急性を宣した場合には、上下両院の1
回の読会の後、国会同数合同委員会(両院協議会)を開き、上下両院が受諾する妥
協案を模索することができるが、今後は、両院議長が一致してこの手続きに反対し
た際には、上下両院で第2読会を開くことを定めた(第45条第2項)。
•議事日程の議会による決定:現行憲法では、本会議の議事日程は政府が定めること
になっており、政府は自らが優先する法案を優先的に通すことができる。しかし、
今後は、政府が定めることができるのは4週のうち2週だけとし、残り2週は議会
が議事日程を決定する。また、そのうち1週は法案審議、もう1週は政府活動の統
御及び公共政策を評価することに充てられる。加えて、4週の審議のうち1日は、
その議事日程を野党が決めることができることとした(第48条)。
•政府の信任をかける表決の制限:現行法律では、首相は、ある法律について政府の
信任をかけることができる。すなわち、首相のその表明の後、24時間以内に不信任
動議が可決されない限り、当該法律は表決を行わずに採択されたとみなされる。今
後は、この手続きの対象を、予算法案及び社会保障財政法案等に限定する。また、
この手法は、各会期、上記法案以外の1つの法案についてのみしか採ることができ
ないと定めた(第49条第3項)。
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