米下院議長、台湾総統と会談 「絆は過去最高に強い」

米下院議長、台湾総統と会談 「絆は過去最高に強い」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN04CWW0U3A400C2000000/

『【この記事のポイント】
・台湾の蔡英文総統とマッカーシー米下院議長が会談
・マッカーシー氏、超党派で台湾を支援する方針伝達
・中国の反発強く、米国との対立が一段と強まる恐れ

【シミバレー(米カリフォルニア州)=大越匡洋】台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は5日、訪問中の米西部カリフォルニア州で共和党のマッカーシー下院議長と会談した。マッカーシー氏は「これほど我々の絆が強かったことはない」と語り、超党…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『超党派で台湾を支援する方針を伝えた。中国側が反発し、米国との対立が一段と深まる恐れがある。

【関連記事】

・米国務長官「中国は緊張高める行動自制を」 蔡氏訪米で
・米議長・台湾総統、折衷の加州会談 中国の対抗措置焦点
・「レーガンの遺産」訴えた台湾総統、米中対立で原点回帰
両氏はロサンゼルス郊外の「レーガン大統領図書館」で会談した。会談後にマッカーシー氏と蔡氏は並んで声明を読み上げた。

マッカーシー氏は「台湾市民と米国民の友好は自由主義世界にとって極めて重要だ」と指摘。「それは経済的な自由、平和と地域の安定を維持するために不可欠だ」と言明した。「台湾は成功した民主主義で経済は繁栄し、ヘルスケアや科学では世界のリーダーだ」と持ち上げた。

会談に関し「共和党と民主党は結束した超党派の会談だ」と言及し、長期的な支援を約束した。会談には下院中国特別委員会のマイク・ギャラガー委員長(共和党)やラジャ・クリシュナムルティ筆頭理事(民主党)らが参加した。

5日、記者会見に臨む蔡英文氏㊧とマッカーシー氏(カリフォルニア州)
蔡氏は中国を念頭に「我々が維持してきた平和や必死に築いてきた民主主義が前例のない挑戦に直面していることは自明だ」と述べた。レーガン元大統領が掲げた「力による平和」に触れて「私たちは協力するともっと強くなれる」と力説した。「台湾は孤立していない」と繰り返し、防衛や貿易、経済で米台協力の拡大を訴えた。

レーガン政権は1982年、台湾への武器売却について中国と事前協議しないことなどを定めた「6つの保証」を台湾に伝え、米台の安保協力の柱とした。そのレーガン氏をたたえる地で会談し、米国による台湾支援の強化を印象づけた。

共和党のマッカーシー氏は対中強硬派として知られる。かねて台湾訪問に意欲を示してきたが、米中対立が深刻になるなか台湾訪問そのものは先送りした。蔡氏は国交のある中米2カ国の歴訪から台湾に戻る「経由地」として米西海岸に立ち寄った。

会談に先立って米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は5日、記者団に中国をめぐり「攻撃的なやり方で反応したり、過剰反応したりする理由はない」と重ねて強調した。

一方、中国側の反発は強い。下院議長は大統領の継承順位が副大統領に次ぐ2位。これほど高位の米政治家と台湾との接触は、中国本土と台湾は不可分の領土で台湾は中国の一部だという中国の主張「一つの中国」原則に反すると非難している。

2022年8月に当時のペロシ下院議長(民主党)が台湾を訪れて蔡氏と会談した際は、中国は対抗措置として台湾を取り囲むような大規模な軍事演習で威嚇した。日本の排他的経済水域(EEZ)に弾道ミサイルも撃ち込んだ。

すでに中国の戦闘機が台湾海峡の事実上の停戦ライン「中間線」を頻繁に越えるようにもなっている。中国側が今回の会談に乗じ、現状を変更して「新常態」をつくりだす試みを加速する可能性がある。

蔡氏は今回の中米歴訪の往路で「経由地」として米ニューヨークに立ち寄り、保守系シンクタンク、米ハドソン研究所からグローバル・リーダーシップ賞を授与された。

【関連記事】

・台湾総統選出馬の柯氏、二大政党の対中姿勢「非現実的」
・米中、不信と敵意の果てに 軽視できない軍事衝突の恐れ
・仏大統領が北京入り 習主席と6日会談へ 欧州委員長も
米中Round Trip

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
コメントメニュー

分析・考察 今回の蔡英文・マッカーシー会談は、「一つの中国」原則を強く主張している中国からすれば、実に腹立たしい出来事である。言葉の面で、中国は表面的には強く反発するだろう。だが習近平指導部は、この一件で米中関係を一段と悪化させるのは得策ではないと、冷静に判断するのではないか。24年には台湾で総統選が行われる。親中国的な国民党が政権を奪還すれば、中国には吉報。そうした選挙結果になるよう促す上では、このタイミングで台湾海峡の軍事的緊張を一気に高めたり、経済面から台湾を強く圧迫するのは、決して得策ではない。総統選に向けて、現在の与党であり蔡英文氏が所属する民進党に、追い風が吹いてしまうからである。
2023年4月6日 7:49いいね
10

柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
コメントメニュー

分析・考察 台湾をめぐる合従連衡はどんどん深まっている。しかし、その主導権は台湾になく、どちらかといえば、アメリカ人の反中感情を背景に、アメリカ政府が主導しているようにみえる。それによって台湾にとってどういうメリットとデメリットをもたらされるかは少し冷静に考える必要がある。台湾を第二のウクライナにしないためには、こういう政治的パフォーマンスだけでは、何も意味がなく、米中が直接向き合わないといけない。このままでは、日本も巻き込まれてしまう可能性が高くなる
2023年4月6日 7:42いいね
23』