中国、磁石技術の禁輸を検討 レアアースで主導権
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM059FE0V00C23A4000000/
『【北京=多部田俊輔】中国政府はレアアース(希土類)を使った高性能磁石などの製造技術の輸出を禁止する方向で検討に入った。レアアースは電気自動車(EV)など幅広い製品に使用される。半導体などのハイテク分野で米中対立が先鋭化するなか、中国はレアアース分野で主導権を握ることで米国などに対抗する。
中国の商務省と科学技術省が2022年末に発表した「中国輸出禁止・輸出制限技術リスト」の改訂案で、43項目を追…
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『08年にまとめたリストと20年の改訂版に比べ、技術の要件を詳細にすることで規制を強化した。
具体的には、輸出を禁止、制限するレアアースの精錬や加工などについて、詳細を盛り込んだ。レアアースを使う高性能磁石に必要な合金の製造などにも禁止や制限事項を定めた。専門家の意見聴取などを終えており、早ければ今年中の改訂を実現するとみられる。
レアアースを巡っては、2010年の尖閣諸島を巡る日中対立で中国は対日輸出を一時的に止めた。日本はレアアースを使う高性能磁石を得意とし、米国は高性能磁石を搭載するハイテク製品を手掛ける。この問題を機に、両国は経済安全保障で大きな危機感を持つようになった。
米国は自国での鉱山開発に動き、米地質調査所(USGS)によると、レアアース生産に占める中国の比率は10年前の約9割から22年に約7割まで下がった。しかし、中国は精錬や加工分野を引き続き握っており、米国は自国で生産したレアアースの多くを中国に輸出して現地で精錬してから輸入する。
米中対立が先鋭化し、米国や日本は中国に依存しないレアアースのサプライチェーン(供給網)の構築を進める。同時に先端半導体の対中輸出を厳しく規制し、ハイテク分野における中国の台頭を抑え込む狙いだ。
一方、習近平(シー・ジンピン)指導部は米国に対抗できる「製造強国」をめざす。先端半導体では劣勢であることから、「レアアースを日米の弱点として、交渉カードとして利用していくのではないか」(資源業界の関係者)との見方が浮上する。
松野博一官房長官は5日の記者会見で「日本としては重要鉱物などの物資のサプライチェーンの強靱(きょうじん)化に努めたい」と述べた。「中国による制度の影響を注視していく」とも語った。
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