TPP英国加盟、太平洋経済圏が欧州に拡大 中台扱い難題

TPP英国加盟、太平洋経済圏が欧州に拡大 中台扱い難題
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『環太平洋経済連携協定(TPP)の参加国は31日、英国の加盟を認めると発表した。発足時の11カ国以外の参加は初めてだ。インド太平洋を中心とする経済圏が欧州に広がる。拡大に弾みがつくが加盟申請した中国と台湾への対応は難しい。ウクライナ危機で進む世界の分断も影を落とす。

31日にオンライン形式で閣僚級が出席する会合を開き「実質的な妥結を歓迎した」と記した共同声明をまとめた。7月に予定する閣僚級の会合で…

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『7月に予定する閣僚級の会合で協定への署名を目指す。

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国内総生産(GDP)の合計額は11.7兆ドル(約1550兆円)から14.8兆ドルに増え、世界全体のGDPに占める割合は12%から15%に高まる。

英国にとってTPP加盟は、欧州連合(EU)離脱後の外交方針である「インド太平洋地域への関与強化」の目玉政策の一つだった。

岸田文雄首相は31日、英国加盟の合意を「歓迎する」と述べた。首相官邸で記者団に「アジア太平洋地域にとどまらず自由で公正な経済秩序を構成していく意味で大きな意義がある」と強調した。

英国の加盟で拡大の機運が高まる。現在、参加を申請しているのは中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイだ。各国は中台の扱いに頭を悩ませている。

中国は台湾が自国の一部だという「一つの中国」原則を主張している。両者の共存は難しい。協議に入っても貿易や投資に関するTPPの高い要求水準を中国が満たすハードルは高い。国有企業の優遇や外国企業への技術移転の強要の問題などが指摘される。

海外との認識のズレは大きい。中国は国有企業について「特別な待遇は受けていない」(商務省)と主張する。日本は「ハイレベル(なルール)を完全に満たす用意ができているかしっかり見極める」(後藤茂之経済財政・再生相)と厳しく審査する構えだ。

インド太平洋地域は米中の覇権争いの舞台になってきた。中国は地域の経済圏づくりで主導権を握ろうとTPPへの加盟を申請したとの見方が大勢だ。

日本や韓国、東南アジアなど15カ国の東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)でも中国の存在は大きい。世界全体の国内総生産(GDP)に占める加盟国の割合はRCEPは3割と、現状のTPPの2倍以上ある。

離脱した米国の復帰は遠い。日本は繰り返し呼びかけているが米国内で慎重論が強い。米国はTPPに代わる中国への対抗軸づくりを急ぐ。22年に日本やインドなど14カ国が参加する「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を立ち上げた。

日本はTPP、RCEP、IPEFのいずれにも名を連ねる。自由主義陣営の一角として、自由で透明性の高い経済圏づくりで役割を果たせるかが問われる。(加藤晶也、ロンドン=中島裕介、深圳=川手伊織)

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