米国のEV税優遇、域外生産車適用せず 日本メーカー打撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN312FB0R30C23A3000000/
『【ワシントン=飛田臨太郎】米財務省は31日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の指針を発表した。日本と欧州、韓国が求めていた北米以外で生産した輸入車への優遇適用を見送った。日欧韓の車メーカーは米メーカーより実質的に高価格でEVを販売するか、北米で現地生産するかの判断を迫られる。
税優遇は2022年8月に成立した歳出・歳入法(インフレ抑制法)に盛り込まれ、今年から適用が始まる。購入者が最大7500ドル(約100万円)の税額控除が得られる対象を北米で組み立てたEVとプラグインハイブリッド車(PHV)に限定した。
日欧韓の政府は「米メーカーへの過度な優遇措置で、自国の自動車産業にとって大打撃になる」と見直しを求めていた。特に欧州各国は「西側の分裂をもたらす」(フランスのマクロン大統領)などと強く反発した。
バイデン米大統領は修正に応じる考えを示していたが、財務省の新たな指針でも輸入車への適用は認められなかった。自国産業を重視する米連邦議会から適用拡大に反対の声が上がり、最小限の修正にとどまった。
日本や欧州は完成車以外にも、電池原料の重要鉱物の調達・加工、電池部品の製造・組み立ての一定割合を北米域内に制限する要件の緩和を訴えてきた。米財務省は重要鉱物は日本や欧州も米国などと同等の扱いに見直す方針だが、電池部品の製造に関する要件は変更されなかった。
イエレン財務長官は声明で「米国の強力な産業基盤を構築し、サプライチェーン(供給網)を強化する」と述べた。北米生産車のみを優遇することでEV関連の投資を呼び込み、この分野で急成長する中国に対抗する。
財務省は4月中旬に優遇対象車種を公表し23年販売分から適用する。日欧韓は引き続き輸入車への適用拡大を訴える考えだが、実現は見通せない。
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中西孝樹
ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト
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別の視点 国際政治はパワーがモノ言うわけで、産業側は波風を凌ぎながら最終的にユーザーに選んでもらって生きていくしか術はないでしょう。日本車はそうやって発展してきたのです。政治的妥協への淡い期待はあっても、電池は地産地消、EVは適材適所(欧米は地産地消)で行くしかないという覚悟はできているはずです。ホンダは2024年にGMから2モデルのEVを調達し、LGESとの電池工場を作り、メアリースビルの主力工場を完全なEV専用工場に転換することを決定しています。過去2年間この日のことを考えホンダは様々なことを決断してきた印象ですが、トヨタは明らかに後手に回っていると言わざるを得ないでしょう。
2023年4月1日 9:09いいね
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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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貴重な体験談 政権の幹部や安全保障の担当者の間では、中国の抑止では、同志国や友好国とのフレンドショアリングが重要という認識が共有されている。されど、ルール化の段階では、米国内の政治の分断、製造業の国内回帰を求める議会の意向が働いて、米国第一主義に変質してしまう。
とあるシンポジウムで耳にした米国の安全保障に関わる元高官が口にされた言葉を思い出しました。
2023年3月31日 23:26いいね
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菅野幹雄
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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ひとこと解説 西側諸国や民主主義勢力の結束を訴えながら、結局は自国優先か。そんな米国のダブルスタンダードを思わせる動きです。
バイデン大統領としては野党の共和党に弱みを見せたくない思惑もあるでしょうが、それにしても日独など同盟国を甘くみすぎです。
中国やロシアとの対決で団結する必要があるにせよ、こうした決定には、日本としても厳しい声を発するべきだと思います。米国に疑念を上回る論理があるなら、きちんと説明してほしいです。
日本の自動車産業の雇用にかかわる自分勝手な方針に、岸田首相は決然と対応すべきではないでしょうか。そうでないというなら、説明が必要です。
2023年3月31日 22:44 』