みずほ・LINEの新銀行 なぜ開業断念?

みずほ・LINEの新銀行 なぜ開業断念?
イチからわかる金融ニュース
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB313OI0R30C23A3000000/

 ※ LINEのサーバー管理が韓国に置かれ、中国からアクセス可能になっていた事件も、微妙に影を落としたと思う…。

『みずほフィナンシャルグループ(FG)とLINEは3月30日、共同で開業を目指してきた新銀行「LINEバンク」の設立中止を決めたと発表しました。スマートフォンを使って本格的な銀行サービスを展開する予定でした。なぜ、開業を断念したのでしょうか。

この記事のポイント
LINEバンクとは?
なぜ、開業断念?
経営体制の影響は?
LINEバンクとは?

みずほFGとLINEが共同で新銀行をつくると発表したのが2018年11月です。当初は20年度の開業を目指すとしていました。新型コロナウイルス禍もあり、開業時期を22年度に延期していました。

従来のように店舗を各地に開いてサービスを展開するのではなく、スマートフォンを使った銀行サービスを想定していました。当初は「手のひら」の手軽な決済銀行というイメージでしたが、新型コロナウイルス禍でデジタル化が進むと判断し、本格的な銀行を目指そうと路線転換を図りました。

構想で掲げていた目標は強気でした。20年秋ごろまでは口座数で400万、預金残高を3000億円とする計画でした。21年に入って開業2年で口座数を1000万まで伸ばす内容に上方修正していました。

なぜ、開業断念?
一つは銀行サービスを取り巻く環境の変化です。構想の発表から撤退を判断するまで4年以上がかかりました。この間、個人情報の保護、サイバーセキュリティー、経済安全保障やマネーロンダリング(資金洗浄)対策などについて社会の関心が高まり、システム面の対応コストが上がりました。

2021年にシステム障害が複数回起きた

みずほ銀行では21年にシステム障害が起きました。同じ年にLINEは利用者の情報が中国からアクセスできる状態にあった問題で、利用者から疑念を持たれることになりました。

システム対応のハードルが高まったこともあり、みずほとLINEは勘定系システムの開発を富士通から韓国の業者に切り替えました。富士通とはシステムの要件やコスト負担などで折り合えなかったためとみられます。

みずほとLINEが手間取っている間にライバルはどんどん先行していました。約1300万口座の楽天銀行をはじめ、ネット銀行はすでに激しい戦いを繰り広げています。みずほとLINEは追加投資を続けて開業しても勝算はないと判断しました。

経営体制の影響は
両社の経営体制の変化も開業を断念した理由の一つです。開業を発表した後にZホールディングス(HD)とLINEが経営統合しました。ZHDにはすでにPayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)を抱えています。ジャパンネット銀行は2000年に開業したネット銀の老舗で、名称をキャッシュレス決済でブランドが浸透しているPayPay銀行に変えました。大株主のソフトバンクなどからも「LINEが金融事業をやる意味はあるのか。グループに2つも銀行はいらない」といった声が漏れていました。

経営統合の記者会見で握手するZホールディングスの川辺健太郎社長㊧とLINEの出沢剛社長
ZHDは2月にヤフー、LINEと3社合併する方針を公表しました。事業の選択と集中が急務となるなか、構想の発表から4年が経過しても設立のメドがたたないLINEバンクは事業整理の対象リストの最上位にあったとみられます。

一方のみずほ側もシステム障害を経て経営陣が一斉交代。22年2月に木原正裕社長が就任しました。みずほ社内でも撤退ムードが強まっていたと言います。

みずほはデジタル戦略で後れをとっています。LINEバンクの頓挫で、今後は自らバンキングアプリの使い勝手向上や機能集約、出資した楽天証券を通じた若年層の開拓などに注力することになります。

(五艘志織、松田直樹)

【注目記事】

・みずほ「LINEバンク」断念 失われた4年、システム鬼門
・みずほ、LINEバンク断念発表 サービス開始「見通せず」 』

LINEの個人情報はなぜ中国からアクセスでき、韓国にデータを置いていたのか。本当の問題点は
https://allabout.co.jp/gm/gc/487634/

『更新日:2021年03月24日

LINEは3月23日、日本国内における個人情報の取り扱いを強化していくと発表した。そもそもなぜ、LINEの日本ユーザーのデータに中国からアクセスできる状態だったのか。データが韓国に保管されていた理由は。ITジャーナリストの石川温が解説する。

更新日:2021年03月24日
石川 温
執筆者:石川 温

携帯電話・スマートフォンガイド

3月23日、LINEは日本国内における個人情報の取り扱いを強化していくと発表した。

一部報道で、LINEでやりとりされている個人情報に中国からアクセスできる状態であったことが明らかになった。また、トーク上の画像や動画などを韓国のデータセンターで保管しているという。本来、ユーザーにこうした情報を明示すべきであったが、LINEでは具体的な国名を明示していなかった。

現状、海外の企業に業務委託することは個人情報保護法には抵触しない。また、LINEでは個人情報が流出したり、詐欺に悪用されたりなどの事実はないとしている。LINEの出沢剛社長は「法的にどうこうという問題ではない。ユーザーが気持ち悪いと感じるなど、ユーザーへの配慮が足りなかった」と釈明した。
LINEの池邉智洋上級役員(左)、出澤剛社長(中央)、舛田淳CSMO(右)。3月23日の会見にて
LINEの池邉智洋上級役員(左)、出澤剛社長(中央)、舛田淳CSMO(右)。3月23日の会見にて

中国からのアクセスの何が問題なのか
そもそも、中国から日本の個人情報にアクセスできるのが、なぜ問題視されるのか。中国では数年前から「国家情報法」という法律によって、民間企業が扱うデータが中国政府に渡るリスクが存在する。アメリカのトランプ政権が通信機器メーカーのファーウェイやTikTokを敵視し続けてきたのも、「アメリカ国民の個人情報が脅かされ、国家安全保障にも影響を及ぼす」という強い懸念があったからだ。

数年前まで、LINEだけでなく、多くのインターネット企業は開発や顧客管理などの業務委託を中国の企業に依頼してきた。中国であれば低コストでの開発、運用が可能となるからだ。

LINEでは日本だけでなく、韓国、台湾、ベトナム、タイ、インドネシア、中国と世界に7つの開発拠点を持っている。

かなり前から中国企業での開発を続けていたが、数年前に中国で国家情報法が成立。本来ならば、そのタイミングで中国企業に対する業務を見直す必要があった。しかし、LINEはそれを怠ってしまった。出沢社長は「(中国での開発を)長く続けてきたが、2017年から18年の潮目の変化など、我々として見落としていた」と素直に落ち度を認める。

LINEの出沢剛社長
LINEの出沢剛社長

LINEでは3月23日現在、プライバシー性の高い個人情報に関して、中国からのアクセスを遮断した。

普段我々が使っているLINEのトークに関しては通常は「Letter Sealing」と呼ばれる暗号化がされており、ユーザーの端末間においては、LINEのシステム開発者であっても中身を確認することができない。

トークのテキストに関しては日本のデータセンターで管理されているが、動画や画像に関しては韓国のデータセンターで保存されている。LINEでは2021年6月までに画像や動画データを日本国内のデータセンターに移転する計画だ。』

『なぜ韓国に画像データを置いていたのか

では、なぜLINEは画像データを韓国に置いていたのか。

LINEの舛田淳CSMOは「画像や動画のデータはテキストのメッセージに比べてサイズが大きい」とした上で「日本だけではなく、アジア圏、中東、ロシアに向けて、データの遅延が小さくなる場所を探した。セキュリティが担保され、人材がいる。コスト面も条件だった」という。

LINEはかつてロシアや中東でも人気のメッセンジャーだった。これらの地域でも、快適に画像や動画のデータをやりとりできる場所として、韓国が候補に挙がったようだ。また、LINEの親会社が、韓国NAVER社だったことから韓国のデータセンターが選ばれたとのことだ。

韓国で保管しているデータは、日本のデータセンターに統一する
韓国で保管しているデータは、日本のデータセンターに統一する

可能性としてはLINEだけではない

現在、LINEだけがメディアなどで問題視されているが、立地、技術、コスト面でデータセンターの場所として韓国が選ばれたとするならば、LINE以外のSNSや個人情報を扱うWebサービスも韓国のデータセンターを利用していることも考えられる。

アメリカ企業のSNSも、イメージとしてはアメリカのデータセンターを採用していると考えられるが、アジアや中東向けのデータに関しては韓国で保存されている可能性もゼロではなさそうだ。

今回を契機に、LINE以外のSNSやWebサービスも「個人情報はどこのデータセンターを使っているか」といった情報開示が必要になってくるかもしれない。

今回、騒動が大きくなったのは、日本において、LINEのユーザーは8600万人以上いるという点があるだろう。スマホを持つユーザーの大半がLINEをインストールして使っている。そのため、政府や地方自治体などが公式アカウントを設け、住民に向けて情報発信をしている。

やはり、政府や地方自治体としては、扱うデータや個人情報が、中国に筒抜けになっていては、LINEの活用に二の足を踏んでしまうのは仕方ない。

LINEでは政府や自治体向けのLINE公式アカウントのデータアクセスに関しては、完全に日本国内に制限するとしている。データの保管場所についても2021年8月までに国内に移転する。

一部の自治体では、コロナワクチン接種の予約をLINEで受け付けているところもあるが、予約システムに関するデータは国内のデータセンターのみに保管し、国内からのみアクセスできるとしている。

LINEとしては個人情報などに関して、すでに国内への移管を計画していたようだが、今回の騒動が起きたことで、計画を前倒しで進めていくようだ。

LINEは無料のメッセンジャーから、ゲームや音楽、決済や金融、広告など事業範囲を大幅に拡大。2021年3月からはYahoo!を傘下に持つZホールディングスと経営統合している。

これまで急ピッチで成長してきたLINEであるが、個人情報保護という点においては、先延ばしし、ややおざなりになっていたのかもしれない。

LINEは国内のIT企業の中でも、もはやユーザーの生活に根ざした社会インフラと言える。この騒動で、ユーザーには不信感が広がってしまったが、これを契機にしっかりと個人情報保護を徹底してもらいたいものだ。』