アメリカの高金利政策で、不動産保有者が危ない

アメリカの高金利政策で、不動産保有者が危ない
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/31151183.html

『アメリカで政策金利が引き続き引き上げられていますが、これで財務内容が悪化するのは、銀行や金融機関だけではありません。実は、額で言うと、最も巨額なのが、商業用不動産ローンを抱える不動産保有者です。個人が住居用に借りる不動産ローンは、MBSという債権になり、これの価値の下落が、債権で資産運用をしている銀行にボディーブローのように効く事は、すでに以前の記事で書いています。シリコンバレー銀行が資金不足に陥った、大きな要因の一つが、こうした債権価値の下落です。その原因は、アメリカの政策金利の引き上げです。

しかし、単純に考えると、金利が上がるのですから、通常の貸出での銀行の収入は上がるはずです。つまり、投機的な資産運用で利益を出すのではなく、利益幅は薄いものの、通常の銀行業務を行っていれば、政策金利の引き上げは、むしろ歓迎すべき事のはず。つまり、今の金融機関が、集めた資金を、通常貸出の金利ではなく、市場に投資をして稼ぐのがメインになっているかの証拠でもあります。特に、アメリカの銀行は、銀行業務と投資銀行業務の区別が無いですからね。と、考えると、今、巨額の資金を借り入れている顧客は、この急激な金利の上昇で、大丈夫なのかと思うのが先ですよね。大丈夫じゃないんですよ。

商業やオフィスの巨大な不動産は、借り入れしないと建設する事ができないし、所有するにも巨額の資金が必要です。こうした巨額の借り入れをしている商業用不動産ローンを抱えている顧客は、これから厳しい現実に直面する事になります。特に問題なのは、こうした地元密着の借り入れというのは、まさに財務体質の脆弱な地方銀行のテリトリーだという事です。かつ、つい2年前まで、市場に金が溢れていた上に、ゼロ金利政策だった事もあって、不動産関係の投資は、イケイケドンドンで、大金を借りまくって、投資するのが当たり前でした。これだけ高金利になると、前述のように、債権資産運用をしている銀行は、財務が苦しくなるので、貸し剥がしなど、日本のバブル崩壊でもお馴染みの、「現金を取りに行く」行動を行う銀行も増えると思われます。

そして、アメリカの商業用不動産ローンの借り替えは、2023年度で4000億ドル、2024年度で5000億ドルが予定されています。両方で9000億ドル(117兆円)の規模になります。このうちの400億ドル(5兆2000億円)程度、返済が滞るとモルガン・スタンレー証券は試算しています。

こういう状態になると、少しでも現金にして返済に回す不動産オーナーが出てきて、不動産の投げ売りが始まる可能性があり、不動産価格が下がると価値の毀損で、担保にしている銀行にも、不動産を所有しているオーナーにとっても、資産を削られる事になります。つまり、アメリカの景気全体が、不動産発の市場規模の縮小で、長期の後退に入るきっかけになるかも知れません。

つまり、不動産バブルは、何も中国に限った話ではなく、アメリカでも起きていたのです。日本で、批判する視点から記事になっていなかっただけで、サンフランシスコの不動産なんかは、テック企業が集中している事もあり、何十年も住んで暮らしている人が、家賃の高騰で払えなくなり、テントで公園で野宿をしながら、職場に通うなんて光景も珍しくなかったのです。殺人的な家賃を苦も無く払える高給取りだけが、住める街になっていました。そして、このタイミングで、対価を支払わされる時期が来たという事です。』