米国、韓国「黄金の4年」に望み 日米韓協力で実績狙う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1605H0W3A310C2000000/
『【ワシントン=坂口幸裕】米政府は関係正常化に動く日韓に3カ国による協力分野の拡大を働きかける構えだ。日韓が歩み寄った元徴用工問題を巡り、形骸化した2015年の慰安婦合意の二の舞いになりかねないとの懸念が残る。それだけに4年ほど任期がある韓国の保守政権のもとで、安全保障協力の実績を積み上げる狙いだ。
「日韓の新たな和解を持続的な関係進展につなげるため支援していく」。16日の日韓首脳会談を受けた米国…
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『16日の日韓首脳会談を受けた米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官の発言は米国の期待と不安を映す。
期待は軍備拡張を進める中国や北朝鮮の脅威をにらみ、日韓と足並みをそろえた東アジアの安全保障体制の再構築にある。米国は核を含む戦力で同盟国を守る「拡大抑止」の強化を話し合う新しい枠組みを日米韓で設ける案を検討する。3カ国の軍事演習や情報共有の拡大も選択肢になる。
中国に強硬姿勢をとる日米と、韓国にはなお温度差はある。米国は対中感情が悪化する韓国世論の変化を踏まえ、北朝鮮だけでなく段階的に中国を念頭に置いた軍事協力を深める余地はあるとみる。
米国の不安は韓国の内政に向く。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は16日の岸田文雄首相との会談で、元徴用工問題の解決策を着実に履行すると明言した。しかし、韓国は政権交代が起きると前政権の方針が覆る「moving the goalpost(ゴールポストを動かす)」と批判されてきた経緯がある。
前米NSC東アジア担当部長で米戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長のクリストファー・ジョンストン氏は「重要なのはやり遂げることだ」とクギを刺す。
15年末には安倍晋三元首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)元大統領のもとで、両国が譲歩して慰安婦合意をなし遂げた。その直後も米国には3カ国協力の深化を期待する声が広がったが、成果は乏しかった。
当時と政治状況が異なるのは22年5月に韓国大統領に就いた尹氏の任期が27年まで4年以上ある点だ。慰安婦合意から朴氏が退くまで1年あまりしかなく、次の文在寅(ムン・ジェイン)前政権で合意は事実上ほごにされた。
ジョンストン氏は「朴氏の任期終了間際だった慰安婦合意と対照的に、今回は韓国の次期大統領選までに時間がある」と指摘する。日本との安保協力に積極的な尹政権のもとで腰を据えて成果づくりを進める余裕がある、との見立てだ。
まず試されるのが24年春に予定する韓国の総選挙(国会議員選)になる。与党の勝敗は尹氏の政権基盤を左右するだけに、懸案処理の推進力にも連動する。
厳しさを増すアジアの安全保障環境を見すえ、過去に浮き沈みを繰り返してきた日韓関係を安定的に発展させられるのか。バイデン政権が重視する同盟・有志国の能力を総動員する「統合抑止力」を具体化する指導力が問われる局面に入った。』