2億人退職の中国、衰える活力 窮余の定年延長が波紋
全人代2023 3期目の習政権(下)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM231CS0T20C23A2000000/
※ こういう問題(定年延長とか、給付額の引き下げとか)は、そもそも「都市部」の公務員・会社員の人々(4億人くらい)についての問題だ…。
※ 9億人くらいいる「農村部」の人々については、全くの「任意加入」なんで、「定年」も「給付額」も、制度としての問題とならない…。
※ 「農民」身分なんで、「定年」も、無い…。そもそもが、そういう人々の「社会保障」自体が、全くの「任意加入」なんだ…。
※ 日本の「国民年金」みたいな、ある程度強制加入の制度とは、相当に異なっている…。
『「毎年1万元(約19万3000円)を積み立てよう」。湖北省武漢市でIT企業に勤める李麗さん(仮名、25)は今年から夫と老後の備えを始めた。積立金は2人の合計年収の5%。納税や住宅ローンの返済も考えると決して少なくない。
将来への不安を強めたきっかけは2月、職場の窓から眺めた医療保険改革を巡る抗議活動だ。多くの高齢者が個人向け医療費補助の減額などへの反対を訴えた。「医療保険の削減が既に始まった。公…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
『公的年金なんてもらえなくなるんじゃないか」
なかでも都市部の会社員らが加入する「都市従業員基本年金」への懸念は強い。積立残高を月平均の支出額で割った月数をみると、2012年は18.5カ月だったのが21年は11.2カ月まで短くなった。この10年近くで支払い余力が4割も減ったことを意味する。
いま中国では日本と並ぶ世界最速のペースで少子高齢化が進み、働き手の数も減り続ける。
1963?75年生まれは各年2000万人を超す中国の「団塊世代」だ。法定退職年齢(男性は60歳、女性管理職は55歳)に達すると大量退職時代に突入する。国勢調査などをもとに試算すると、2023年から10年間で退職者は計2億2800万人に及ぶ。
社会保障負担でみると22年に現役2.26人で高齢者1人を支えていたのが、20年後には1.25人まで減る計算となる。
このままでは経済成長の阻害要因となりかねない――。習近平(シー・ジンピン)指導部の危機感を映すように出てきたのが定年延長論議だ。
政府内では30年かけて男女の退職年齢を65歳にする案が浮上する。現役世代の減少や年金財政の悪化に対応する。社会科学院の鄭秉文主任は「中国の平均退職年齢は54歳で、先進国より11年も早い」と引き上げ余地は大きいと指摘する。
退職を控えた人々には不安がくすぶる。中国メディア「生命時報」の調査で「何歳で退職するのが健康に良いか」と聞くと、全体の74%が「55歳未満」と答えた。「61歳以上」は6%のみ。早期退職を望む声は根強い。
現代中国の子育てスタイルも一因だ。都市部では高い住宅費や教育費を賄うため一般的な夫婦は共働きする。退職した人は家庭内で孫の学校への送迎などを期待される。
一方で就職難を抱える若年層には定年延長によって就職の枠がさらに狭まるとの不満もある。
理由は違えど各世代で不協和音が生じる定年延長。とはいえ社会保障の破綻を避ける有効策は限られる。
事実上の一党独裁下にある中国では一般の人の政治参加意識は比較的薄い。それでも自らの生活に直結する問題には敏感になる。武漢市などで起きた医療保険改革を巡る抗議運動はその典型だ。
定年延長は、政府も慎重に事を進める構えだ。「真剣に検討し十分に論証を重ね、適時着実に実施する」。13日の全国人民代表大会(全人代)閉幕後の記者会見で、李強(リー・チャン)首相は慎重な表現に徹した。
高齢者層の比重はますます高まる。「シルバー社会主義」というべき状況下で対応を誤れば、反発の矛先は直接、共産党に向く。
多部田俊輔、土居倫之、川手伊織が担当しました。』