ドイツ、対ロ強硬鮮明に ウクライナ支援「必要な限り」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR160D90W3A310C2000000/
『【欧州総局=赤川省吾、南毅郎】ドイツのショルツ首相は日本経済新聞の取材で、ウクライナ侵略を続けるロシアの行為を「黙認できない」と指摘し、対ロシア強硬姿勢を鮮明にした。ウクライナへの「支援疲れ」については全面否定し「必要な限り長く支援する」と明言した。欧州は長期戦に備えつつある。
中国への批判は慎重な言い回しに終始したのと対照的に、ロシアを強い調子で非難した。
「ロシアは帝国主義的な道を選んだ」「…
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『「国境を武力で変えてはならないという合意を破棄した」。いつも冷静沈着なショルツ氏だが、話題がロシアに及ぶと舌鋒(ぜっぽう)が鋭くなった。
外交による打開を図るため、ショルツ氏はプーチン大統領と電話協議を繰り返している。
戦争が始まってからの1年間でプーチン氏の態度に変化を感じたかをたずねると「ほとんど変わっていない」と即答。ウクライナとベラルーシを取り込んだ新しい大ロシアをつくろうとしていると指摘したうえで、それを「ばかげた目標」と切り捨てた。
ショルツ氏の出身母体であるドイツ社会民主党(SPD)が冷戦期から主導したのがドイツの対ロシア(ソ連)融和策だ。その路線は完全に行き詰まった。ロシアを信じていたからこそ、失望も深いのかもしれない。
ウクライナ支援では、ドイツは世界最強とされる主力戦車「レオパルト2」の供与を表明した。隣国ポーランドなどと協力しながらウクライナにおける戦車部隊の編成を目指す。
焦点となっている戦闘機の供与についてショルツ首相は「議論は無駄だ」と否定した。すでに供与済みの武器の「保守・点検や修理、部品・弾薬の供与」には積極的にかかわる姿勢を表明した。
ウクライナ東部ではドネツク州の要衝バフムトなどで激しい戦闘が続く。
ロシア軍の完全撤退が見込めないなか、東西分割による停戦案など「ウクライナの頭越しに決めてはならない」と指摘。東西分断の歴史を持つドイツとして当事者の理解なしに周辺国が勝手に和平交渉を進めるべきではないとの考えを明らかにした。
「戦争の終わらせ方」を巡る議論も時期尚早だとの立場だ。仮に停戦しても、ロシアは再軍備したのち再びウクライナを侵略するかもしれない――。そんな懸念を払拭するため、英国やドイツなどが個別にウクライナと軍事同盟を結ぶ構想がある。だがショルツ氏は「臆測」と語ったのみで言質を与えなかった。
戦争が長期化したことで、歴史や文化を共有してきた欧州とロシアの絆は切れた。もはやロシアを含めた欧州秩序は望めないだろう。
「ドイツは自らの責任を果たす必要がある」との表現で、ショルツ氏は欧州の安全保障に責任を持つ覚悟を述べた。今後はドイツを含めた北大西洋条約機構(NATO)が軍事力でロシアと対峙する。
ロシアとの経済関係も急速に細る。ドイツは天然ガスの過半をロシア産に依存してきたが、開戦後に脱ロシアに動いた。ショルツ氏は「記録的な早さでロシア産の石炭、石油、ガスから独立した」と強調した。
Olaf Scholz
中道左派・ドイツ社会民主党の出身。労働社会相、ハンブルク州首相、財務相などを歴任し、2021年から現職。64歳。
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