韓国大統領、日米台と半導体で協力 シャトル外交に期待
書面インタビュー
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM154NH0V10C23A3000000/
『【ソウル=恩地洋介】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は15日、日本経済新聞などの書面インタビューに応じた。韓国経済を支える半導体産業を巡り、日本と米国、台湾によるサプライチェーン(供給網)協力に期待を示した。日本が強化した韓国向け輸出管理に関しては「政策対話を通じ、解決策が早急に導き出されることを期待する」と指摘した。
韓国は米中対立の先鋭化に伴い、半導体を巡る地政学リスクを意識している。…
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『韓国サムスン電子は15日、政府の支援を受けてソウル市近郊に新たな半導体拠点を建設する計画を公表した。
総額300兆ウォン(約31兆円)の巨額投資で、日本の装置や素材メーカーとの連携にも期待がある。尹政権は2022年5月の発足以来、日米両国と経済安保で連携を強める方針を唱えてきた。
尹氏は「半導体産業を主導する韓国、日本、米国、台湾などの実質的な協力は、国際供給網の安定に寄与する」と指摘。「相互補完的な協力分野を発掘していけば、シナジー(相乗効果)を創出できる」との認識を示した。
歴史問題を巡る日韓の外交対立は経済協力にも影を落とした。日本は19年7月に韓国向け輸出管理を厳格化した。韓国政府が3月6日に元徴用工問題の解決策を発表したことで、両政府は3年ぶりに厳格化の解除に向けた対話を再開する準備に入った。
尹氏は16日に日本を訪れ、岸田文雄首相と会談する。会談では首脳が互いに両国を行き来する「シャトル外交」を提案するとみられる。
インタビューでも「今後も形式や時期にこだわらず随時、意思疎通していくことを希望する」と訴えた。欧州諸国の首脳は問題が生じた際、すぐに互いの国を訪れているとして「約2時間で行き来できる韓国と日本もこのような協議が可能だ」と強調した。
尹氏は日本を「普遍的価値を共有し、安全保障や経済、科学技術、グローバル課題など様々な分野で協力するパートナー」と位置づけた。「韓日間の未来志向的な協力は世界全体の自由、平和、繁栄に貢献すると確信する」と強調し、若い世代の相互訪問が活発になることに期待を示した。
尹氏は17日に日韓の経済団体の会合に参加し、経済安保や先端技術開発などの協力を呼びかける見通しだ。
韓国大統領府の崔相穆(チェ・サンモク)経済首席秘書官は15日、日本との経済協力に関して「供給網のパートナーである日本との関係改善は韓国にとって必須だ。日本との関係が疎遠になり、韓国経済には相当な損失が発生した」と述べた。
書面インタビューは日本経済新聞と朝日新聞、毎日新聞が個別に要請し、韓国大統領府がまとめて回答した。
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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説 半導体は米国が進める民主主義国家陣営による経済安全保障の象徴です。
一方で台湾と並ぶ半導体大国の韓国に対し、日本は2019年以降、半導体材料の輸出管理を強化する措置を続けています。韓国はずいぶん前に日本が指摘した問題点の改善措置を講じており、経済面でも関係を強化するのが相互利益です。
尹錫悦大統領は「モメンタムが失われないうちに」と周囲の慎重論を押し切って6日に元徴用工問題の解決策を発表し、その10日後には来日するという電光石火の展開です。このため首脳会談の共同声明づくりも間に合いませんでしたが、この決断力とスピード感は韓国への疑心を拭いきれない国会議員や世論にも響くのではないかと思います。
2023年3月16日 7:58 』