兵器輸出、米シェア4割で突出 ロシアは2割割り込む
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR07DK30X00C23A3000000/
『【ブリュッセル=竹内康雄】スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は13日、兵器の国際移転に関する報告書を公表した。ロシアのウクライナ侵攻など地政学的な緊張を背景に米国の輸出は拡大し、世界の兵器輸出に占めるシェアが4割に達した。2位のロシアは2割を割り込み、米国の軍事大国としての地位が一段と増している。
世界の輸出入など兵器の移転は2018〜22年に13〜17年比で5.1%減少した。欧州は輸入を47%増やした一方、アフリカやアジア・オセアニア、米州、中東は軒並み減らした。
米国は兵器の輸出を18〜22年に13〜17年に比べて14%増やし、世界の兵器輸出の米国のシェアは33%から40%に上昇した。輸出先はサウジアラビア、日本、オーストラリアが上位3位を占め、ロシアとの対立が深まる欧州向けも増えている。
2位のロシアのシェアは22%から16%になった。輸出先はインド、中国、エジプトで3分の2弱を占めるが、足元ではいずれもロシアからの輸入を絞り込んでいる。インド、中国は自国産兵器を増やしている一方、エジプトには米国からロシア製の兵器を購入しないよう圧力がかかっているとみられるという。
西側諸国の対ロ制裁で中立国もロシアの兵器を買いにくい状況になっている。ロシアは輸出より自軍への供給を優先している面もありそうだ。
3位のフランスはシェアを伸ばした一方、4、5位の中国、ドイツはシェアを落とした。上位5カ国で全体の4分の3のシェアを握る。
実際、欧州はウクライナに兵器や弾薬を支援し続けているが、補充が追いつかない状況だ。欧州メディアによると、欧州では年30万発の155ミリ砲弾が製造されるが、ウクライナは約3カ月で消費するという。
欧州連合(EU)の国防相会合は8日、防衛産業の生産能力を高める必要性で合意した。ボレル外交安全保障上級代表は記者会見で「我々は戦時下にあり、言い方は悪いが、戦争のメンタリティーを持たねばならない」と語った。
各加盟国が共同で弾薬や兵器を調達したり備蓄したりするほか、防衛企業と契約を結んで長期的な需要を保証する動きも出ている。米国も生産の拡大を急いでいる。
SIPRIは実際の貿易額には触れていないが、米ロッキード・マーチンや英BAEシステムズの22年の受注は過去最高になるなど、ウクライナ向けの軍事支援や自国の防衛力強化で需要は急増している。
スウェーデンの防衛大手サーブは23年の売上高が前年比15%増えると見込む。ヨハンソン最高経営責任者(CEO)は米CNNに、在庫補充やウクライナ支援に伴う生産増が「何年も続くだろう」と語った。
輸入をみると、インドがトップで18〜22年は11%のシェアだった。サウジアラビア、カタールと中東勢が2、3位を占め、オーストラリアと中国が続く。韓国は7位、日本は9位でアジア諸国が目立つ。中国と北朝鮮への警戒の高まりから、長距離ミサイルなどの兵器の調達を急増させている。
ロシアの侵攻を受けるウクライナは、22年単年ではカタールとインドに次ぐ3位の兵器輸入国だった。18〜22年では14位で、輸入全体の2%を占めた。』