対ロシア制裁、台湾侵攻自制させる効果 CIA長官
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1009I0Q3A310C2000000/
『【ワシントン=坂口幸裕】米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は9日、米欧などがロシアに科した経済制裁が中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に台湾侵攻を自制させる効果があるとの見解を示した。対ロ制裁で結束した西側諸国の対応を踏まえ「彼はある程度冷静になっているだろう」と述べた。
9日に開いた米連邦議会下院の公聴会で発言した。バーンズ氏はロシアによるウクライナ侵攻を「習近平ほど熱心に見ていた人物はいないだろう」と指摘。「ロシアに長期的な経済的代償を科すために西側が連帯を維持し(エネルギー価格上昇など)短期的な経済損失に対処できた」と話した。
中国は新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策で景気が冷え込んだ。バーンズ氏は対中経済制裁を念頭に「コロナから抜けだして経済を回復させ、世界経済とかかわろうとするときに考慮しなければならない」と語った。台湾侵攻に踏み切れば中国が経済的な打撃を被るとクギを刺す狙いがある。
米国家情報長官室は8日に公表した報告書で、中国が将来的に台湾侵攻に踏み切る場合に備え、米国の介入を抑止できる軍事力を2027年までに整える目標に取り組んでいると記した。米空軍高官が内部メモで台湾有事が25年に起こると予測して準備を急ぐよう指示したことも1月に明らかになっている。
ヘインズ国家情報長官は同じ公聴会に出席し、習指導部が「平和的な手段で台湾統一をなし遂げることを望んでいる」と分析。将来の台湾統一をにらみ平和的に実現するのが難しいと判断すれば「軍事的に達成しようとする可能性に備えて計画を立てているのは確かだ。どのような紛争でも経済的に甚大な影響を及ぼす」と警告した。
米欧メディアによると、中国はロシアの要請を踏まえて無人機や弾薬を提供する案を検討している。米欧は殺傷力のある武器を供与すれば経済制裁に踏み切る意向を示しており、中国に軍事支援を断念するよう圧力を強めている。
バーンズ氏は中国が武器供与を検討している「明確な証拠がある」と断言。現時点で送るかどうかは決めていないと説明し、習指導部にとっては経済的な要因が大きな判断材料になるとの見方を示した。』