写真、連絡先、予定、下書き…スマホからあらゆるデータを吸い出すTikTokを米国政府が危険視するワケ

写真、連絡先、予定、下書き…スマホからあらゆるデータを吸い出すTikTokを米国政府が危険視するワケ 中国アプリは「安全保障上の脅威」になりつつある
https://president.jp/articles/-/60259

『2022/08/08 17:00

青葉 やまと
青葉 やまとフリーライター・翻訳者

若者に浸透するTikTokの裏の顔

中国ByteDance(バイトダンス)社の動画アプリ「TikTok(ティックトック)」の勢いが止まらない。

ダンス動画や料理、コミカルな寸劇、そして「チャレンジ」と呼ばれる各種の流行企画など、バラエティー豊かな短編動画で若いユーザーを中心に人気を博している。

iPhone上に表示されたTikTokなどSNSの各種アイコン
写真=iStock.com/5./15 WEST
※写真はイメージです
全ての画像を見る(4枚)

ブルームバーグは6月、TikTokが今年の収益を前年比3倍となる120億ドル(約1兆6000億円)にまで伸ばしており、「ソーシャルメディアにおけるFacebookの支配を脅かしている」と報じている。

特に9歳から20歳未満の少女たちを魅了しており、こうしたユーザーは「Facebookを開こうなどとは考えない」層だと記事は指摘する。

一度見始めると止まらない中毒性も魅力だ。アプリを開くと画面いっぱいにおすすめのショート動画が表示され、気に入らなければ上へスワイプすることで、キャッチーな音楽に乗せたショート動画が次から次へと表示される。

従来のソーシャルメディアは、フォローした友人同士の限られたコンテンツを主体としていた。TikTokではアルゴリズムがおすすめ動画をセレクトし、世界中のショート映像をテンポよく視聴できる点がうけているようだ。

米データ分析企業のdata.ai社によると、中国を除く世界ユーザーの月間平均TikTok視聴時間は、2018年からの3年間で実に4.7倍に増加した。現在ではユーザー1人あたり月に19時間以上利用しており、Instagramの利用時間を75%も上回る。

急拡大中の同アプリだが、ダークな一面があるとの指摘が絶えない。

動画機能は「羊の皮をかぶったオオカミ」

米連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員は6月24日、AppleとGoogleに宛て、両社のアプリストアからTikTokを削除するよう求める書簡を送っている。

氏はまた、TikTokが「国家安全保障上の重大な脅威」をもたらしているとの報道があると指摘した。FCC全体としての指示ではなくあくまで一委員としての書簡だが、スマホ業界を実質的に支配する2大ストアから駆逐すべきという大胆な提言だ。』

『カー委員はツイートを通じ、「TikTokはよくある動画アプリというわけではない。(動画アプリとしての姿は)羊の皮だ。機密データを大量に収集しており、新たな報告によるとそれらは、中国からアクセスされている」と指摘している。

TikTok is not just another video app.
That’s the sheep’s clothing.

It harvests swaths of sensitive data that new reports show are being accessed in Beijing.

I’ve called on @Apple & @Google to remove TikTok from their app stores for its pattern of surreptitious data practices. pic.twitter.com/Le01fBpNjn
— Brendan Carr (@BrendanCarrFCC) June 28, 2022 

同委員はまた、「TikTokはユーザーのダンス動画を監視しているだけではない」と述べ、具体的に収集されているデータを挙げた。

それによると、「閲覧履歴、キー入力のパターン、生体認証の識別子、下書きメッセージ、メタデータに加え、(コピー&ペーストの際に)端末のクリップボードに保存される、文、画像、動画」が収集されているという。米政府の要職者や軍関係者などの個人携帯から、重要なデータが漏洩するリスクも無視できない。

公平を期すため補足するならば、送信先として挙げられている「中国」にはやや語弊がある。NBCニューヨークは、中国政府がデータを閲覧しているわけではなく、運営元の中国ByteDance社による閲覧だと補足している。

ただし、米シンクタンクの大西洋評議会の研究員は米CNNに対し、中国政府は法令に基づき中国国内の民間企業にデータ提出を命じることが可能だと指摘している。同研究員は、この法制度が根源的な懸念を生んでいるのだと指摘する。

ネットでつながるグローバルなネットワークの概念
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

ユーザーの情報を執拗に集めている恐れ

英ガーディアン紙によると、米豪のサイバーセキュリティー企業であるインターネット2.0社は、TikTokが「過剰な」データを要求し、ユーザーが許可に同意しない場合は「執拗に」繰り返し許可を求めてくると指摘している。iPhoneに搭載のiOSでは一定のセキュリティー機構がこの動作をブロックしているが、データ収集はAndroid端末で顕著だという。

同社が分析したところTikTokは、ユーザーの連絡先リスト、カレンダー上のスケジュール、外部ハードディスクを含むデータなどをスキャンし、さらに1時間ごとに位置情報の取得も試みているという。

こうしたデータの多くは、本来は動画閲覧という目的に必要ないものであり、個人情報の過剰な収集だとの批判がある。

米軍事ニュースサイトの「ミリタリー・タイムズ」は、収集されているデータのうち、特に位置情報が安全保障上の脅威になると指摘している。

仮に一定数のアメリカの兵士たちが個人のスマホに同アプリをインストールし、収集した位置情報が中国政府に渡ったならば、アメリカ軍全体としての動向が国外に漏洩しかねないとの懸念だ。

この記事は無料会員登録後に お読みいただけます

会員特典

特典1
過去の記事含め、約3万本の全ての記事が閲覧できます
特典2
メールマガジンをお届けします
特典3
記事を印刷に最適化して表示できます 』

 ※ 無登録閲覧は、ここまで。