米独首脳、ウクライナ支援・ロシア制裁「必要な限り」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0409P0U3A300C2000000/
『2023年3月4日 8:42
【ワシントン=坂口幸裕、ベルリン=南毅郎】バイデン米大統領とドイツのショルツ首相は3日、米首都ワシントンにあるホワイトハウスで1時間あまり会談した。米国の声明によると、両首脳はウクライナへの武器供与など支援を継続する方針で一致。侵攻を続けるロシアを巡っては制裁など「必要な限り代償を科す」と確認した。
バイデン氏は会談の冒頭に「あなたは(ウクライナへの)重要な軍事支援に踏み出した。自国に歴史的な変化を促し、国防費を増やし、ロシアのエネルギーからの脱却を進めた」と評価。今後も協力していく姿勢を強調した。ショルツ氏は「必要な限り支援し続けるメッセージを出すのが非常に重要だ」と述べた。
米独は1月下旬、ウクライナが強く求めてきた戦車の供与を同時期に決めた。紛争がエスカレートするのを防ぐため戦車など攻撃兵器の提供に慎重だった両国が足並みをそろえて決断した経緯がある。
米ホワイトハウスは声明で「ウクライナの人々と世界の連帯を維持する重要性を話し合った」と記した。その他の世界的な課題についても意見を交わした。
米独首脳は第三国によるロシア支援を阻止する対策も話し合ったとみられる。米国は中国がロシアに無人機や弾薬など殺傷力のある武器供与を検討していると分析。米欧は支援を実行すれば経済制裁に踏み切る構えで、中国への圧力を強める。
米国は第三国を通じたロシアの制裁逃れが続いていると危機感を強めており、主要7カ国(G7)が発動している制裁の回避を阻むため米主導で運用を厳格化する仕組みをつくる。
米政府は3日、ロシアが侵攻を続けるウクライナに最大4億ドル(約540億円)相当の追加の軍事支援を決めた。ウクライナ南部ドニエプル川を挟んだ攻防をにらみ、ウクライナ軍が対岸に渡れるようにする折りたたみ式の橋を初めて送る。AP通信によると、最大18メートルで戦車に載せて移動できる。
高機動ロケット砲システム「ハイマース」や155ミリりゅう弾砲の弾薬も含む。今春に想定される戦闘激化に備える。2022年2月24日にロシアがウクライナ侵攻を始めて以来、米国が決めた対ウクライナ軍事支援は300億ドルを超えた。
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広瀬陽子
慶応義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説
ロシアの制裁逃れの主な手段としては、石油や天然ガスについては、中国、インド、トルコなどを中心とした非制裁参加国による大量購入や、瀬取りによる欧州を含む国の購入などがある。また、トルコなどが軍事関連の部品や製品をロシアに輸出していることも明らかになっている。さらに深刻なのは、旧ソ連諸国などを迂回してロシアが欧州などからの輸入を続けているという並行輸入である。
これらにより、制裁の効果は出ておらず、ロシア国民にも制裁を受けているという実感があまり出ていないという。
効果のない制裁は、制裁を行う国を苦しめるだけになり、ウクライナ疲れを醸成する可能性もある。
制裁を実効性のあるものとすることが急務だ。
2023年3月4日 12:15』