李克強氏が最後の政府活動報告 発信力低下、苦闘の10年

李克強氏が最後の政府活動報告 発信力低下、苦闘の10年
在任中の平均成長率6.2%
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM051SA0V00C23A3000000/

『【北京=川手伊織】中国で5日開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、李克強首相が任期最後となる政府活動報告を読み上げた。2013年の首相就任後は経済減速への対応に追われたほか、習近平(シー・ジンピン)国家主席が経済政策への関与を強めたことで発信力は低下した。苦闘の10年間だった。

「中華民族の偉大な復興を全面的に進めるため、たゆまず努力をしよう」。李氏が約1時間かけて読み上げた政府活動…

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『「中華民族の偉大な復興を全面的に進めるため、たゆまず努力をしよう」。李氏が約1時間かけて読み上げた政府活動報告をこう締めくくると、人民大会堂に集まった各地や軍から選ばれた約3000人の代表から拍手が沸き起こった。

首相在任中の13〜22年の平均経済成長率は6.2%だった。期間中は新型コロナウイルス禍や不動産不況など、中国経済には多くの逆風が吹き荒れた。そんな李氏をより悩ませたのが、存在感の低下だった。

中国は国家主席が政治と外交、首相が経済という役割分担をしてきた。首相に就いた当初は、高度成長から安定型経済への発展を提唱し「リコノミクス(李経済学)」ともてはやされた。』

『ただ16年ごろから、習氏による経済政策への関与が強まった。習氏に近い劉鶴(リュウ・ハァ)氏が副首相に就き、マクロ経済政策の司令塔として米中貿易摩擦への対応などで陣頭指揮を執った。』

『中国経済は昨春、上海市の都市封鎖(ロックダウン)で大きく悪化した。李氏は22年5月、全国の政府職員10万人超が参加した会議で景気対策を仕切る姿勢を示した。経済や雇用重視を前面に出す李氏の復権への期待も高まったが、結局は幻に終わった。5日の全人代開幕式を終えて習氏と握手する場面もあったが、完全に引退する方向となった。

今回の政府活動報告には、李氏が中国が抱える問題について警鐘を鳴らす表現もみられた。多くの中小零細企業が経営難に直面するなか、雇用の安定という政府の任務が「甚だ難しくなっている」と懸念を示した。

地方政府の硬直的な対応についても「実態からかけ離れ、民意を無視している」と厳しい口調で指摘した。「ゼロコロナ」政策をめぐって地方官僚が中央に対して過度に忖度(そんたく)した結果、一部の地域では過剰な規制を強いた。李氏は退任に当たり、コロナ対策を念頭に官僚らの対応を批判したとみられる。』