中国の政府活動報告、識者はこう見る

中国の政府活動報告、識者はこう見る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB051AA0V00C23A3000000/

『伊藤信悟・国際経済研究所主席研究員「目標達成も不動産に不安」
中国政府は内外情勢の厳しさなどを踏まえ、2023年の経済成長率目標を「5%前後」と抑えめに設定した。1月に撤廃した「ゼロコロナ」政策からウィズコロナに姿勢を転換することで、成長目標は達成できるという見方が強い。
不安要素は、不動産市場の弱さと輸出環境の悪さだ。先進国が進める利上げや、激しい米中対立も悪影響を与えるだろう。外資系企業による対中投資が遅れるとの見方もある。
経済政策については、22年12月の中央経済工作会議で決めた内容の踏襲が多い。いつ、どのように経済政策を実行していくかという具体的な言及はなかった。一定の強度を持った景気対策が必要である一方、過度に財政・金融政策に頼れば需要を先食いし、のちの経済が落ち込む懸念がある。
新たに首相に就任する李強(リー・チャン)氏は改革の深化、開放の拡大に注力していくことが必要だ。中長期にわたって経済成長を堅持し、自律的な成長を実現できるかが焦点になる。…

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『佐々木智弘・防衛大学校教授「台湾への強硬姿勢が後退」

2023年の国防費伸び率は経済成長の目標を大きく上回った。中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記が22年10月の共産党大会で掲げた方針に沿い、強軍路線を継続する姿勢を強調した形だ。
米欧に対抗しうる軍事力を備える必要があるとの危機感から、国防費が上乗せされた面もある。西側諸国がウクライナへの軍事支援を強めるなか、中国は米欧の軍備の先進性を痛感している。
政府活動報告では台湾独立に反対する方針を引き続き示した一方、昨年の共産党大会と比べると強硬姿勢はトーンダウンした。24年1月の台湾総統選を控え、軍事的な圧力を強めすぎると、中国に強硬的な与党・民主進歩党(民進党)陣営にとって有利に働くと習指導部が感じているようだ。
偵察気球問題などを受けて米国との関係は足元で悪化しているが、露骨な対米非難はなかった。国際社会における中国の役割を強調することで、米国への対抗心を暗に示すにとどまった。』