中国、政府活動報告「安定」33回 「改革開放」は最少

中国、政府活動報告「安定」33回 「改革開放」は最少
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM050MO0V00C23A3000000/

『【北京=渡辺伸】中国の李克強首相による5日の政府活動報告では「安定」との言葉が33回登場し、習近平(シー・ジンピン)指導部の発足後で最も多かった。新型コロナウイルス禍で傷んだ経済の安定を最優先する姿勢が浮かんだ。ロシアによるウクライナ侵攻で高騰した「エネルギー」「食糧」の使用も最多となり、「戦時下の全人代」もにじんだ。

毎年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で首相が読み上げる政府活動報…

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『ロシアによるウクライナ侵攻で高騰した「エネルギー」「食糧」の使用も最多となり、「戦時下の全人代」もにじんだ。』

『「安定」を意味する中国語の「穏定」は22年比で38%増の33回だった。漢字1文字で落ち着いていることを示す「穏」の字は「穏定」の一部に使われる場合も含めて90回となり、同18%増えた。いずれも過去最多だった。李氏は報告で物価や雇用、サプライチェーン(供給網)を安定させると強調した。』

『「エネルギー」は22年比17%増の14回、「食糧」も同89%増の17回といずれも過去最多だった。ウクライナ侵攻後に原油やガスが高騰し、中国は石炭火力発電を増やして乗り切った。ギョーザや麺類をつくるのに欠かせない小麦の国際価格も高騰し、庶民の不満が高まらないように中国政府は国内生産や輸入の増加で安定供給を図った。』

『一方、鄧小平が提唱し、中国の経済成長の原動力となった「改革開放」は22年から横ばいの3回にとどまった。22年や17年などと並び、過去最少だった。18年には10回も登場しており、近年は使用頻度が低迷している。

「改革」の単語も40回で22年から5%減った。18、19年は100回を超えていたが、直近4年は30〜40回台にとどまる。目先の景気安定を重視し、既得権層の反発がある改革に後ろ向きな習指導部の姿勢が浮かぶ。』

『習指導部が貧富の格差是正へ掲げるスローガン「共同富裕(共に豊かになる)」は21〜22年は1〜2回使ったが、23年はゼロだった。共同富裕には「裕福な人の資産を取り上げて貧困層にばらまくのではないか」との疑念が民間企業家らから出ている。民間投資を引き出し、経済回復につなげるため、一時的に「封印」した可能性がある。』

『「強軍」の使用回数は4回だった。最近は横ばい傾向だが、0〜2回だった13〜17年と比べると多い。米国に対抗するため、空母などの軍艦や戦闘機の開発・配備を強化している習指導部の路線を映している。』

『「中国式現代化」というフレーズは過去11年間で初めて登場した。昨秋の共産党大会で大きく打ち出した概念で、民主主義や人権保護などと距離を置きつつ、国家を発展させる方策と受け止められている。欧米流と異なる「中国流」の発展方式を海外に輸出し、「グローバルサウス」と呼ばれる途上国への影響力拡大を目指すとみられる。』

『「習近平同志を核心とする」の文言は22年と同じ7回で、過去最多だった。この文言は習氏の権威の高まりを測るバロメーターとして使われており、昨秋の党大会で習氏の権力基盤が固まったことを映したとみられる。』