米国は、近い将来、民間の貨物船が「原子炉」を普通に搭載するようになるという未来を構想している。
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『Mikal Boe 記者による2023-3-1記事「Advanced Nuclear Power Could Transform U.S. Maritime Industry」。
米国は、近い将来、民間の貨物船が「原子炉」を普通に搭載するようになるという未来を構想している。これはエミッションをゼロにするのに最も著効があるため。沿岸航路だけでなく、ミシシッピ川などの内水の河用バージにまで、原子炉を積極的に使わせるという。
従来の軍用の舶用原子炉は、高濃縮ウランを用いるものであったり、頻繁に燃料交換工事(ドックを1年以上占領)が必要だったりと、まったく商船向きじゃない。
しかし、現在、数種類の開発が実用寸前まで来ている小型商用炉を使うと、ウランは低濃縮で安全であるうえ、燃料交換のインターバルが十分に長く、水運会社が負担することになるトータルのランニングコストを舶用ディーゼル並にできると期待しているのだ。
新式の民間船舶用原子炉のタイプには2つの候補がある。MSR=熔融塩炉 と、HPR=マイクロ・ヒート・パイプ炉 だ。
熔融塩炉は、核燃料が600度前後の高温の液体中に混ざった形で、低圧で循環している。その発熱で発電してモーターを回すのだ。万一、この核燃料の溶けた液体がループの外に漏出すれば、液体はただちに冷えて固まる。したがって、環境を汚染しない。
MSR炉は、20年間にわたって、30MWを発電し続けられる。しかし商船はその65%くらいのパワーでも十分なので、炉の寿命は30年以上に延びるという。
米国は、穀物、石炭、石油、鉄鉱を大量に国外へ輸出している。それらは商船が頼りである。
米国の水運業界は、15万人の雇用をもたらしている。
米国の海上輸送荷物はしかし、1990年をピークに、逐年、扱い量が減ってきている。
米本土には総延長が12000マイルもの、可航内水路が四通八達している。殊に、五大湖=ミシシッピ=ミズーリ水系以東。西部沿岸だと、コロムビア河水系(シアトルあたり)。だから、平底バージによる内水輸送は、大活躍だ。鉄道で運ぶよりも、輸送費は半額で済む。トラックと比較すると「十九分の一」の運賃である。
2019年にミシシッピ水系を往来した貨物は6億3000万トンであった。』