世界の構造は、武漢肺炎で確実に変化した。

世界の構造は、武漢肺炎で確実に変化した。
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/30978504.html

『武漢肺炎が世界の経済に与えた影響は、大きいのですが、単なる対策に費用がかかったという事柄以上に、人の生活スタイルや働き方さえ変えてしまって、その影響で産業の構造すら変化しています。武漢肺炎自体は、多くの国で収束化していますが、パンデミック前と後で、大きく変わったのは、働き方です。

アメリカのオフィス・ビルの空室率は、パンデミック前と比べた場合、50%超える所が多くなっています。これは、単にオフィス・ビルを運用する不動産会社の収益が下がったという事のみならず、オフィスに通勤するサラリーマンをターゲットにした、あらゆる業種の収益も下げています。例えば、ランチ需要を狙ったカフェやレストラン、タクシー、オフィスに関する各種サプライ需要など、大都会特有の需要が激減した為、地域経済を押し下げる程の影響が出ています。

原因は、武漢肺炎で、リモート・ワークを、やってみたら、定型業務については、わざわざ出勤してもらう必要のある業務が少なかったという事を経営者が実感した事です。オフィスの維持費用なんていうのは、経営者からしたら、巨額の固定経費です。無くて済むなら、無くしたいですね。その為、週に1日程度の出勤で済まし、日常業務はステイ・ホームでこなしてもらう事業所が増えています。

例えば、サンフランシスコのオフィス・ビルの稼働率は、パンデミック前と較べて40.1%です。サンフランシスコと言えば、ついこの間まで、ハイテク企業の従業員が、住居を構える都合で、不動産の価格が爆上がりしていた地域です。そんな人気の地域にも関わらず、オフィスの維持費が、場所代に釣り合わなくなって、今は空洞化が進んでいます。シリコン・バレーのあるサンノゼの稼働率は、41.6%です。昨今のハイテク企業不況で、リストラもバンバン進んでいますが、オフィスを畳む企業も増えています。ロサンゼルスで45.0%。シカゴで45.2%。テキサス州のオースティンは、63.1%と、50%を超えています。つまり、そこそこ地方で、不動産価格の安いところは、回復していますが、不動産価格が爆騰していた地区のオフィス・ビルの稼働率は、50%以下という事です。

なぜ都市が構成されるかと言えば、狭い地域にインフラ・オフィス・人材が集中していた方が、事業を推進するにあたって、有利である事が常識だったからです。実際、この集中が事業の推進に有利であるという事は、丸の内ビル街を見ていると判ります。例えば、ある外国人が、都市開発のような企画を抱えて、訪れた時、日本であれば、この数ブロックのビルを訪問するだけで、事業計画から契約まで済んでしまいます。いちいち、地方へ移動する必要はありません。これが、「狭いがゆえに、機動的な日本の商社の武器」です。

それゆえ、高い賃料を払ってでも、都会にオフィスを構えますし、社員を通勤させて集めるわけです。または、都市の一等地にそそり立つ「本社ビル」は、その企業の業績の象徴でもありました。そういう象徴的なビルは、数え切れないくらい建設されています。都市の機能とは、この一点に尽きます。

しかし、ネットが発展するにつれ、人が必ずしも物理的に集まる必要性が無くなってきました。会議でも何でも、ネット上で可能ですし、なんなら会議をしながら、資料集めすらできてしまいます。予め、会議資料を作成して、人数分印刷して、席の前には肩書と氏名を印刷したプレートを立てるなんていう会議スタイルは、過去のものになりつつあります。

それでも、社員がオフィスに集まって仕事をするというスタイルは、なかなか廃れる事は無かったのですが、パンデミックで強制的にリモート・ワークを、やってみた結果、「案外、人が集まってやる必要のある仕事って無いんじゃないか」という事になり、ならば、不必要な経費はカットしようという流れになっています。このリモート・ワークの一般化による、経済の損失が年間で124億ドル(1兆6600億円)に登るとする試算があります。前段でも述べてように、いわゆる貸ビル・不動産業の収益が減るだけではなく、通勤する人々を当て込んだ従来の業種も、多大な影響を受けるからです。消費が減れば、それが有効か無効かに関わらず、経済規模は縮小します。

また、不動産価格は、需給によって決まるので、必要とする企業が減れば、ビルの評価価格も下落します。予測では、ニューヨークでも、オフィス・ビルの評価額は4割減になると言われています。不動産評価額が下がる上、現在、負債を抱えてオフィス・ビルを運営している企業にとっては、ここ1年で急騰した政策金利が、借り入れ金利の増大という二重の負担になっています。恐らく、今年中に、大手で倒産するところが出てくると思われます。企業が所有する資産が、評価額と金利の両方で、圧迫されるからです。

つまり、武漢肺炎が、今まで当たり前とされていた都市機能の一部を、不必要なものとして価値観を変えたのです。今までの常識が、そう言い切れない時代が、既に始まっています。 』