ロシア、ウクライナ東部要衝包囲か 人海戦術で被害拡大

ロシア、ウクライナ東部要衝包囲か 人海戦術で被害拡大
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR03DJL0T00C23A3000000/

『【フランクフルト=林英樹】ロシアの民間軍事会社ワグネル創設者、プリゴジン氏は3日、部隊を派遣するウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトについて「実質的に包囲した」と通信アプリで述べた。ウクライナから通じる道は1本しか残っていないといい、ゼレンスキー大統領に撤退を命じるよう促した。

米シンクタンクの戦争研究所は2日の報告書で「ロシア軍はバフムトの南西部からの攻撃を一時的に緩めている」と指摘。北東部からの攻撃に集中することで「ウクライナ軍に撤退圧力をかける狙いがある」との分析を明らかにした。

ウクライナ国家安全保障国防会議の幹部は3日、バフムトでの戦闘について「困難かつ苦しい状況だ」と地元のテレビ番組で語った。そのうえで、ロシア軍兵士の被害がウクライナ軍の7倍に上っているとのデータを明らかにし、ウクライナ軍兵士の奮闘をたたえた。

バフムト制圧に固執するロシア軍の人的被害は増加傾向にある。米シンクタンクの戦略国際問題研究所は、多数の兵士投入で圧倒しようとするロシア軍の人海戦術について「わずかな領土の獲得と引き換えに、甚大な犠牲を受け入れている」と指摘する。

同研究所の試算では、民間軍事会社の戦闘員を合わせたロシア軍兵士の戦死者は、侵攻開始から1年間で6万〜7万人に上る。第2次世界大戦以降、旧ソ連とロシアによるすべての軍事行為での戦死者の合計よりも多いという。一方、ロシア軍が獲得した東部戦線全体での領土は2022年9月以降で約1036平方キロメートルにとどまっている。

ロシア当局は2日、ロシア西部ブリャンスク州にウクライナの部隊が侵入し、住民2人が死亡したと発表した。ウクライナ側に味方し、ロシア軍と戦うパルチザン部隊のひとつが同日、侵入を認める動画をSNS(交流サイト)に投稿した。

ロシアのプーチン大統領は「テロ行為だ」と非難し、追加のテロ対策を政府に指示した。同部隊は住民の攻撃について「ロシア側のうそだ」と否定している。』