覇権国が没落する時、経済事件と共に戦争が起きる

覇権国が没落する時、経済事件と共に戦争が起きる
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/30970061.html

『 未来を確実に占う事ができない以上、歴史に学ぶ必要があります。以前の記事になりますが、基軸通貨の変遷という事で、「アメリカのドル覇権も、永遠ではない」という記事で、具体的な基軸通貨の移り変わりを解説した事があります。この記事は、歴史的な事実を、そのまま述べているだけで、今は盤石に見えるアメリカのドル覇権も、永遠には続かないという事を、エビデンスを踏まえて、予測した内容になっています。

また、別の記事になりますが、その時代の基軸通貨が終焉を迎えるタイミングで、歴史の教科書に載るような経済事件が起きている事も述べています。オランダのギルダーが基軸通貨であった時代には、「チューリップ・バブル」が起きました。チューリップの球根が、今の仮想通貨みたいな取引上のトークンとして機能して、希少な球根1ダースが、屋敷一軒と同じ値段にまで高騰した、典型的な経済バブル事案です。イギリスのポンドが基軸通貨だった時代には、「南海泡沫事件」が起きました。これは、典型的な株人気によるバブルです。そして、バブルという経済用語の語源は、この経済事件の「泡沫」から来ています。そして、恐らくアメリカのドルが基軸通貨の現代で起きた経済事件は、「リーマンショック」です。この後に、更にでかい経済事件が起きても不思議ではないですが、少なくても起きている事件の中では、筆頭候補です。

何年前の話をしているのかと思うかも知れませんが、歴史で数十年のズレなんて、「誤差」です。イギリスだって、「南海泡沫事件」が起きて、すぐに基軸通貨発行国の地位を譲ったわけではありません。それは、象徴的な出来事に過ぎず、実際に基軸通貨国が明確に移るには、さらなるイベントの発生が必要でした。

それは、戦争です。オランダからイギリスに基軸通貨発行国が移る時、イギリスとオランダの艦隊で決戦があり、最終的にはオランダの敗北を持って、ギルダーからポンドへ基軸通貨が移ったのです。この戦争と「チューリップ・バブル」は、直接の関係はありませんが、基軸通貨発行国が、没落するまでのはっきりした衰退を迎えるには、やはり戦争で次世代の新興国に破れるというイベントが必要なのです。

イギリスが衰退して、ポンドからドルへ基軸通貨が移るには、第一次世界大戦と続く第二次世界対戦が必要でした。これも、「南海泡沫事件」と戦争は、直接の関係はありませんが、共にドイツと戦って、巨額の戦費を費やした結果、「世界帝国」を築いていたイギリスは、経済的に没落し、アメリカに地位を譲る事になります。ここで、重要なのは、「戦争に勝利したか」は、基軸通貨国の変遷に、必ずしも関係無いという事です。イギリスは、戦勝国になりましたが、国が破綻する程の戦費を費やし、元々の自国の領土しか維持できなくなりました。アメリカが、国が借金できる上限を、わざわざ法律で制限しているのは、この時のイギリスの没落を見ているからです。まぁ、法律が施行されてから、70回以上も上限を上げてますので、事実上形骸化していますが、それくらい覇権国の衰亡と明確な関連性を認識していたのですね。

つまり、歴史的な事実として、基軸通貨が移り変わるには、2つのステップが存在します。

1.教科書に載るくらい歴史的な経済事件が発生して、その時代の金融システムの信用が揺らぐ。
2.基軸通貨発行国を巻き込む、戦争が起きて、勝ち負けに関係無く、国が傾く出費が発生する。

この条件が重なると、その時代の金融システムを支える信用に傷がついた状態で、基軸通貨発行国が、立ち直れない程の経済的な疲弊を、戦争による出費で抱えて、その時に比較的傍観的な立場でいられた国へ基軸通貨発行国が移るという事です。アメリカは、両方の大戦に参加していますが、第一次世界大戦は、ヨーロッパの戦争に加担するだけでしたし、イギリスに対しては巨額の貸付をした、債権国家でした。イギリスが負けると債権の回収が不可能になるので、参戦したという見方もあるくらい、イギリスはアメリカに巨額の借金をして、ドイツとの戦争を戦っていました。

第二次世界大戦では、始めは傍観していたものの、日本がアメリカと交戦状態になり、それによって、ドイツがアメリカに宣戦布告した事で、ガッツリと戦争に参戦します。しかし、アメリカ本土が戦場になった事はありません。昨今、話題になった風船爆弾が、アメリカ本土で爆発して、何名か被害者が出ましたが、それくらいです。傍観者ではなかったものの、戦争による経済に対する被害という意味では、最も傷が浅かった参戦国です。

こう考えると、アメリカが没落して、どこかに基軸通貨発行国が移るには、「リーマンショック」が、最初の要件と考えると、残るのは、アメリカが経済的に立ち直れないくらいの戦争が起きれば実現する事になります。それが、ありうるかと言えば、十分にありうると考えます。「歴史は繰り返す」からです。そして、それを阻止できるくらい「人類は賢くありません」。

ロシアがウクライナに侵攻する前までは、私も人類の進歩に多少の希望は持っていました。イギリス帝国が、世界を一周する勢いで、植民地を所有していた時代に、「イギリスは将来、没落する」なんて言っていたら、キチガイだと思われたでしょう。でも、起きたのです。結局、科学技術がいくら発達しても、情報の共有がいくら進んでも、人権意識が高まっても、国が諍いを起こす時の動機というのは、実に野蛮でクダラナイ理由から一歩も進化していません。人の意識が変わらない以上、3回目の基軸通貨の移譲は起きて、アメリカの覇権が崩れるという未来は、否定できません。恐らく金融面での信用を崩す経済事件の要件は、既に成立しています。後は、アメリカ主体の戦争が起きるかどうかだけです。そして、その勝ち負けと関係無く、アメリカは没落します。

その時に、アメリカの次に立っていられる基軸通貨発行国があれば良いのですが、もしかしたら、その時になって、始めて発行母体を持たない仮想通貨が輝くのかも知れません。こういう穿った考え方をすると、仮想通貨って、たんなる経済の徒花ではなく、存在に意味があったのかもとも思えます。歴史の必然で発明されたのかもと、ちょっとだけ思います。

残念ではありますが、私はアメリカの次は、無いんじゃないかと考えています。』