同盟不在のウクライナ、命綱は装備 長期戦の懸念

同盟不在のウクライナ、命綱は装備 長期戦の懸念
防衛・大転換 激動の世界④
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN20D5O0Q3A120C2000000/

 ※ 「同盟(≒軍事同盟)」の神髄は、「自国民の兵士を、犠牲を厭わず差し出すことと、見つけたり!」だな…。

 ※ そういう「本質」を、分かっている人間が、何割いることやら…。

『バイデン米大統領は2月20日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃的に訪問した。ゼレンスキー大統領は会談後の記者会見で「この訪問の成果は必ず戦場や領土の解放に反映される」と話した。

重要だったのは米国からの武器支援を継続するとの約束だ。主な対象は事前に表明済みのものにとどまったものの、バイデン氏は「ウクライナが今後も勝利を続けると確信している」と強調した。

ロシアが侵攻してからの1年間、米国は…

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『ロシアが侵攻してからの1年間、米国は支援の質を徐々に高めてきた。当初は携行型対戦車ミサイル「ジャベリン」が効果を発揮した。その後は高機動ロケット砲システム「ハイマース」や防衛用の長距離地対空ミサイル「パトリオット」も提供を決めた。

ウクライナはかねて戦車や戦闘機を求めていたが、主力戦車の供与が決まったのは2023年1月になってからだ。戦車を使いこなす訓練は途上にある。

「ウクライナが国境を越えて(ロシアを)攻撃できるようにはしない」。バイデン氏は説く。ゼレンスキー氏が欲しい戦闘機や長射程ミサイルの提供に慎重なのはそのためだ。

ウクライナが米国製兵器を使ってロシア領土を攻撃すれば、米国も巻き込まれかねない。第3次世界大戦や核攻撃のシナリオが現実味を帯びてくる。』

『一方で、強力な装備がないままならウクライナは決め手を欠く。戦線は膠着し、ウクライナだけでなく米欧にも「支援疲れ」が出てくる。米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は「(紛争は)少なくとも数年単位」と語る。

ウクライナはなぜ苦境を強いられるのか。米欧など30カ国は北大西洋条約機構(NATO)がある。一国が攻撃されれば他の加盟国が結束して反撃する。

世界最大の軍事同盟に入る国はロシアも簡単に手を出せないが非加盟のウクライナは違う。同盟国もない。米欧は武器・弾薬を支援しても一緒には戦わない。』

『同盟不在の危険性を実感したフィンランドとスウェーデンは22年、NATOに加盟を申請した。ウクライナも参加を求めるが、いまの危機には間に合わない。』

『侵攻の長期化は遠方の安全保障も揺るがす。ウクライナに武器を渡すため、米国はイスラエルと韓国に置く米軍の装備をまわす。駐留米軍の戦力が落ちれば、両国に近いイランと北朝鮮への抑止力は低下する。

元米海兵隊大佐で武器調達に詳しいマーク・カンシアン氏は米軍の武器の在庫を問題視する。ウクライナに大量に提供した155㍉りゅう弾砲の弾薬を侵攻前の水準に戻すなら最短5年かかり、ジャベリンも5〜6年必要だと試算した。』

『日本も影響は受ける。侵攻が長く続けば東アジアの軍事バランスも崩れかねない。世界的に米軍の武器・弾薬の在庫が減るだけでなく、米国製の装備を購入する日本や台湾の防衛力の整備も遅れる心配がある。脅威は連鎖し、世界に広がる。』