台湾「政治の理想で飯食えない」 ハイテク天下あと3年

台湾「政治の理想で飯食えない」 ハイテク天下あと3年
台湾、知られざる素顔③
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM043DH0U3A200C2000000/

『「中国半導体大手のSMIC(中芯国際集成電路製造)だって、台湾が一から育てた。中台は元々、ズブズブの関係だ」

米国による半導体制裁で最大の標的となったSMIC。かつて12年間勤めた台湾人50代男性、徐進哲(仮名)は振り返る。

徐は2000年のSMIC創業直後「TSMC(台湾積体電路製造)の約300人の同僚技術者とSMICに移り、軌道に乗せた」。SMICは政府肝煎りの国策会社。「上場前にその会社の…

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『中国にはこうした「台商」と呼ぶ台湾人ビジネスパーソンが今なお80万人規模で暮らす。改革開放後、いち早く小さな台湾を飛び出し、中国にモノ作りを教え、鴻海(ホンハイ)精密工業創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)など、巨万の富を築いた台商は数知れない。
「台商の皆さんの発展を心からお祈りします。(中国との)交流は発展の基礎となります」

2月2日、春節に合わせて台湾に帰省した台商の交流会。駆けつけた総統の蔡英文(ツァイ・インウェン)は最大限の気遣いをみせ、祝辞を送った。外交で対中強硬姿勢を見せる普段の顔とはまるで違う。台商は親中派が多数。だが台湾経済の生命線で、とても敵には回せない。「政治の理想で飯は食えない」(台湾大手首脳)。台湾の苦しい現実がまさにここにある。』

『「有事だといまさら慌て、米国の言うがまま中国と距離を置いても、米国がその穴埋めをしてくれるわけでもない」(台湾経済界)。実際、台湾は米国との自由貿易協定(FTA)締結を悲願としてきたが、門前払いの苦渋の歴史を味わい続けた。

唯一の外交カード、TSMCさえ「絶対的なリードはあと3年ほど」。中台の業界に精通する徐らはそう口をそろえる。

台湾経済の未来は険しい。人口はアジアでネパールに続く14位の2300万人。25年以降は2割が65歳以上の超高齢社会に突入し、当局試算では今後40年余りで700万人もの人口急減に直面する。(敬称略)』

『多様な観点からニュースを考える
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神保謙
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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分析・考察 台湾経済の中国に対する依存関係と、本日の日経新聞のもう一つの記事「米国、対中強硬策一段と」を併せて読み比べると、米中台関係の複雑な構造への理解につながる。台湾経済の中国離脱は容易でないばかりか、台湾経済にとって戦略的判断とも言い難い。米国での半導体生産に関する補助金の見返りに中国への半導体関連投資を禁じることや、中国特定企業との全面的な取引停止など、実は台湾経済にとって痛手となる潮流に向き合っている。こうした潮流が台湾経済の中枢のなかで反米論に発展すると、全体の戦略的構図が揺らいでしまう。
2023年3月2日 7:41』