[FT]カーター元米大統領の真の功績

[FT]カーター元米大統領の真の功績
価値観、バイデン氏と重複
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB274UH0X20C23A2000000/

『米国政治では、実際の功績が見過ごされて記憶されていることが多い。功績を詳細に調べれば、カーター元大統領はソ連崩壊の種をまいたと評価されるはずで、レーガン元大統領が現代の聖人であるかのように扱われることはなかっただろう。

だが、世論は誘導されやすい。第2次大戦前後の英国の政治に例えると、ナチスドイツに対して宥和(ゆうわ)政策を取って失脚したチェンバレン首相がカーター氏で、その後任として対ドイツ強硬…

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『デタントとは米国がソ連の勢力範囲を認め、互いの問題について不干渉とすることを意味した。また、デタントによってソ連は核戦力で米国と対等になることができた。カーター氏が大統領に就任する前の8年間で米国の防衛費は実質ベースで40%近く減少していた。

だが、カーター氏はこの両方を反転させた。核戦力の面では新しい戦略核兵器の開発を進め、核ミサイルのパーシング2や中距離巡航ミサイルの欧州への配備を決めた。不干渉の面では、キッシンジャー元国務長官がニクソン、フォード政権下で進めたソ連の反体制派や衛星国家を放置する路線を覆した。

その結果、旧チェコスロバキアの人権活動グループ「憲章77」やポーランドの自主管理労組「連帯」などの抵抗運動がカーター政権時代に生まれた。カーター氏は「人権は我々の外交政策の魂だ」と宣言したこともあった。』

『80年代初め、政策金利が20%に達するなかでカーター氏に選挙での勝ち目はほぼなかった。ただ、インフレと戦える実力があることを知ったうえで、ボルカー氏をFRB議長に任命したことは注目に値する。

これに限らず、カーター氏は多くの正しいことをしたが、世間は正当な評価をしてこなかった。そのため左派はカーター氏を嫌った。右派はカーター氏の功績をレーガン氏の功績だとみるふりをした。米国がいかに冷戦で勝利したかについても同様のことが言える。

カーター氏のケースが示す教訓は、善行に見返りを期待してはならないということだ。歴史の審判は偏見に満ちている。』