「20世紀システム」が大きな危機に 世界秩序の作り直しが問われる
https://www.asahi.com/articles/ASR2Q3K4JR2KUPQJ00G.html
『耕論 「戦争の世紀」なのか
ロシアのウクライナ侵攻は、世界史においてどんな意味を持っているのでしょうか。国際政治学者の白石隆さんは、「20世紀システムの大きな危機」を示すものだと考えます。第2次世界大戦後につくられた秩序はなぜ崩壊の危機にあるのか。これからの世界秩序はどんなものになっていくのか。巨視的なスケールで語ってもらいました。
しらいし・たかし
1950年生まれ。熊本県立大学理事長。文化功労者。専門は国際関係論、東南アジア政治。著書に「海の帝国」など。
――ロシアによるウクライナ侵攻開始から1年が経ちました。この戦争は、世界に何をもたらしたのでしょうか。
「ロシアのウクライナ侵略は、第2次世界大戦後の世界秩序だった『20世紀システム』の深刻な危機を意味するものではないかと考えています」
――20世紀システムの危機とは、どういう意味でしょうか。
「1944年、経済学者のカール・ポランニーは著書『大転換』で、19世紀システムが終わったと書きました。19世紀システムとは、国際的には『力の均衡』と経済の自由放任主義、国内的には民主主義と市場経済です。この四つの柱の上に成り立っていた」
「19世紀システムが第2次世界大戦で崩壊してしまったあと、フランクリン・ルーズベルト米大統領が中心になって20世紀システムを作りました。国際政治的には、『アメリカの平和(パクス・アメリカーナ)』、経済では、通貨安定のためのブレトンウッズ体制と自由貿易を目指した関税貿易一般協定(GATT)体制です。そして国内政治的では自由民主主義、国内経済では市場経済でした」
インタビュー後半では、「20世紀システム」は維持できるのか、新たな世界戦争を起こさないためには何が必要かを論じます。
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「この四つの柱に支えられた秩序は、何度か大きく変わりました。『アメリカの平和』はずっと同じですが、ブレトンウッズ体制は1970年代に崩れ、変動為替相場制と国境を超えた自由な資本移動が柱になった。貿易自由化も進展し、世界貿易機関(WTO)ができた。グローバリズム時代の到来です。グローバリズムとは実のところ、20世紀システムを全世界に拡大するということだったと思います」
「このポスト冷戦時代の国際システムは、2008年の世界金融危機まではそれなりに機能していたように思います。しかしそれ以降、急速に変質していき、今回のロシアのウクライナ侵略で極めて深刻な危機に陥ったのではないでしょうか」
――なぜでしょうか。
「それを考えるには、フラン…
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