MMT理論は、理論と呼べるモノではない。 : 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/30911476.html
『今、話題になっているMMT理論ですが、簡単に言ってしまうと、「自国の発行する通貨で借金をするのであれば、いくら借金をしても構わない。なぜなら、自国の通貨は、いくらでも発行できるから」という話です。いやいや、そんな単純なものではないよと、ここで反論が出てくるのは判っています。しかし、端的に言ってしまえば、そういう話である事は、MMT推進論者の方でも、異論は無いでしょう?
このブログで、何回も言っているように、通貨の価値を支えるのは、「それに価値があると信じる人々の信頼」です。法定通貨は、発行国の経済や安全保証、宗教、文化的に安定している事が、その価値の担保になっています。仮想通貨は、まさに単なる誰も価値を保証しないデジタル・トークンですが、それに価値があると信じて所有する人々に支えられて、価格がついています。つまり、根拠になるものが、その通貨に対する人気だけなので、価値が上昇するのも下落するのも、青天井です。
少しでも、自分で市場に参加して、相場を張った経験のある方なら、おおよそ同意していただけると思いますが、そもそも経済に「理論」なんてものは存在しません。理論で何かかが大丈夫である事を保証する事もできないし、逆に何かが絶対に危ない事を証明する事もできません。これは、嫌でも経済に関わらないといけない人々が、願望として「経済に理論がある」と信じたがっているというだけの話です。例えば、各国の財務省やら中央銀行やらです。なので、何理論であろうと、それを奉じていれば、その国の経済が安定するなんて事は、そもそも無いです。
そして、自国発行通貨であれば、いくら借金しても大丈夫というMMT理論が、その国の政治家や財務省あたりから歓迎されるのは、考えれば理解できます。何しろ、予算が使い放題という事ですから、何でも好き放題にできますからね。しかも、増税という国民から嫌われる議論をしなくても済みます。MMT理論が成り立つなら、これほど素晴らしい事はありません。
しかし、ここでシツコイようですが、通貨というのは、それを使う人々が価値があると考えるから、価値が発生しているだけで、それ自体は、コンピューター上の数字、もしくは、ただの硬貨、複製しにくい紙切れです。つまり、信用が価値を支えています。大量に自国通貨を発行した結果、何よりも、我々日本人が自国通貨に対する信用を失った時、円は紙くずになります。そんな事があるかと言えば、最近の円安と、長期間に渡る賃金上昇率の停滞で、早くも「海外で1ヶ月、働いただけで、80万貰えるよ。日本を脱出して、海外で働こう」みたいな動きが出てますよね。実質的に自分が受け取るサラリーに興味があっても、日本円の価値に固執して働いている人は少ないでしょう。なので、価値に差額が生まれれば、とっとと海外に出て働き始める日本人は、決して少数派ではないです。
そもそも、移民の主な原因は、自国で食い詰めた国民が、豊かな外国へ生きる為に出国する事でした。日本も、貧しい時代には、ブラジルやアルゼンチンへ移民しました。未開拓の土地があり、移民の受け入れに熱心だったからです。つまり、日本人が円の価値を信じている限りは、早々に円が紙切れになる事はありませんが、信用を失った場合、恐らく数年で円の価値が喪失する事もあり得ます。
戦後の日本も、戦費で膨らんだ借金をチャラにする為、インフレ誘導した事もありますし、預金封鎖をした事もあります。これは、国の借金をチャラにする為、負債を国民の財産と相殺したという事です。結果、現金で資産を持っていた国民は、資産価値が半分以下になりました。通貨切り替えという禁じ手を使えば、合法的に、こういう事はできます。つまり、「日本国が破綻しない」というのは、こういう強制力を持った国民財産の没収も含むのです。国が破綻しない事は、我々国民の財産が安泰である事とバーターでは、ありません。
よく言われる、「日本の持つ資産と借金を相殺すれば、まだ日本は黒字だ。日本には、まだ経済的な余力がある」的な議論がありますが、これも、定形モデル化できない事に、無理矢理理屈をつけた話以上のものではありません。この程度の理論武装は、円に対する信頼が崩れた瞬間に、吹っ飛びます。円に対する信頼とは、端的に言えば、日本の発行する国債を誰かが買っているうちは、いくら借金しても大丈夫という事です。日本人が円に対する信用を無くすという事は、国債の引き取り手が誰もいなくなるという事です。
自国発行通貨を、信用していない代表と言えば、中国です。中国人は、元の価値を信用していません。富裕層であれば、あるほど、外貨に替えようとします。その為、中国共産党は、法律で縛って、元の流出を止めなければ、国の経済が傾くほどです。これが、世界第二位のGDPの経済大国の実情です。他の国でも、自国の通貨を、まったく信用していない国は、数多くあります。ハイパーインフレで有名になった、ジンバブエでは、一度自国の通貨発行を停止して、ドルで決済する事態にまでなりました。国の経済が、通貨の価値を担保できないので、外国の通貨を決済に使わざるを得ないのです。
国の経済は、何かの理論に沿って運用しているから、大丈夫という事は、ありません。究極的には、その国の未来について、国民が希望を持ち、信じているかどうか? それぐらい、抽象的な話なのです。』