ロシア、支配地半分失う 20万人死傷も「戦果」なく焦り

ロシア、支配地半分失う 20万人死傷も「戦果」なく焦り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR21DD10R20C23A2000000/

『【リビウ(ウクライナ西部)=久門武史、林英樹】ロシアはウクライナ侵攻で、2022年3月までに占領した土地のおよそ半分を春以降に失った。欧米の武器供与を受けたウクライナが奪還した。ロシア軍と民間軍事会社の死傷者は20万人規模との推計があり「戦果」を示せぬプーチン大統領には焦りもにじむ。

侵攻は24日に1年を迎える。ロシア軍による支配・侵攻面積は現在、ウクライナの東部・南部を中心に全土の18%を占め…

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『侵攻前はクリミアなど7%だったので、1年間で11ポイントしか拡大していない。米シンクタンク「戦争研究所」の地図データをもとに計算した。

侵攻開始から1カ月の22年3月下旬にロシアの支配面積は27%まで拡大していた。侵攻後にウクライナの20%分の国土を追加で占領したものの、ウクライナの反攻を受けて、およそ半分の9%分を手放した計算になる。

ロシア軍は22年4月には首都キーウ(キエフ)近郊から退いたほか、9月には東部ハリコフ州の要衝イジュームも失った。11月には南部ヘルソンも明け渡した。バイデン米大統領は21日のポーランドでの演説で「プーチン氏は自らが予測した勝利の代わりに、焼け焦げた戦車と乱れたロシア軍を残した」と皮肉った。

英国防省は17日、ロシアの軍と民間軍事会社の死傷者数が計17万5千〜20万人と分析した。このうち死者は4万〜6万人とし、昨年9月以降に大幅に増えたとみる。兵員不足のロシアは22年9月に部分動員を発令し、30万人を追加徴兵した。

プーチン氏は侵攻を続ける姿勢を崩さない。22日、モスクワ中心部に近い競技場で開かれた大規模集会に出席した。「万歳」を連呼して参加者を鼓舞し「我々が一緒になれば対抗できるものはない」と団結を訴えた。「国全体が(特別軍事作戦に参加する兵士を)支持している」と主張した。

集会は1年を迎えるウクライナ侵攻や、23日の祝日「祖国防衛者の日」にちなんだものとみられる。政権を支持する若者らが参加した。

ウクライナはロシア軍への反攻を続けている。ウクライナ軍は22日、前日から激戦地バフムトを含む東部ドネツク州とルガンスク州の7地域においてロシア軍が攻撃をかけたが、すべて撃退したと発表した。侵攻1年の節目となる24日を前にロシア側は支配地の拡大を目指してきたが、戦線は膠着状態が続いている。

ただ長引く消耗戦にウクライナ側の犠牲も膨らんでいる。ウクライナ政府は22年12月、軍の死者数を1万〜1万3千人と推定した。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は2月時点で民間人の死傷者数を2万1293人と発表したが「実際の死者数はもっと多い」とみている。

戦死したウクライナ兵の葬儀(21日、リビウ)
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