中国の土地買収阻止、米国で広がる 偵察気球で不信増幅

中国の土地買収阻止、米国で広がる 偵察気球で不信増幅
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN190ZK0Z10C23A2000000/

『中国資本による土地の買収を阻もうとする動きが全米で広がっている。安全保障の強化や食料の安定供給を理由に南部バージニアや中西部サウスダコタなどの各州議会が法整備に動いた。中国の偵察気球事件で増幅された米世論の対中不信が慎重論を脇に追いやっている。

「サウスダコタ州は中国共産党と戦うための青写真を描き、模範を示す」。同州のクリスティ・ノーム知事は15日、ワシントンで講演し、中国など外国資本による農地…

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『同州のクリスティ・ノーム知事は15日、ワシントンで講演し、中国など外国資本による農地の取得を厳しく審査する委員会を設ける法案を州議会が準備していると力説した。

保守強硬派の次のリーダー候補の一人に数えられるノーム氏。同州議会上院の委員会は法案を可決しており、「外国の邪悪な政府を隣人にしたくない」と言い放った。

隣のノースダコタ州では空軍基地近くに中国企業が製粉工場を建設する計画を巡り、米空軍が懸念を示していることが表面化。連邦政府レベルでは安保上の観点から外国企業の対米投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)があるものの、この件は審査対象外となったことから、各地の危機感がかえって高まった。

中国警戒論の火に油を注ぐように、中国から飛来した偵察気球事件が発生。米軍が4日に大西洋上で撃墜するまで米領空を横断し、米下院は野党・共和党に民主党も加わった全会一致で「中国が傲慢に米国の主権を侵害した」と非難する決議案を可決した。

バージニア州議会は気球事件の騒動のさなか、中国を念頭に置いた「敵対国」への農地の売却を禁じる法案を可決した。国の定めに準拠し、中国やキューバ、ロシア、イラン、北朝鮮などが対象。共和党のグレン・ヤンキン知事が強く後押ししている。

南部テキサス州でも中国を念頭に不動産取得を幅広く制限する法案が浮上。グレッグ・アボット知事は法案が州議会を通れば署名する意向を示した。

米農務省によると、2021年末に海外の個人・団体が保有する米国の農地は約4000万エーカー(1エーカーは約0.4ヘクタール)で米国の民間農地の約3%。国別ではカナダ、オランダなどが上位を占め、中国は約38万4000エーカーと外国人保有の1%弱にすぎない。

それでも共和党を中心に中国警戒論が世論全体を覆い、連邦議会でも農地への投資をめぐるCFIUSの審査機能を強化する法案をめざす動きが出ている。反アジア感情をあおることへの懸念や、投資減少による地域経済への悪影響を心配する声は、強まる一方の対中不信の前にかき消されている。

(ワシントン支局長 大越匡洋)

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池上彰
ジャーナリスト・東京工業大学特命教授
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別の視点 日本でも沖縄の離島の一部が中国人に買われたと報道され、ニュースになっています。日本もバブル期にハワイのゴルフ場を次々に買収してアメリカの反感を買った歴史があります。資本主義国である以上、土地の売買は自由ですが、「相互主義」の観点が考慮できないかと思ってしまいます。中国の土地はすべて国有地。外国人が購入できないからです。「外国人が自由に土地を買うことができる国の国民に限って自国の土地の売買を認める」という法制度の整備は無理なのでしょうか。
2023年2月20日 18:38 』