中国、銀行向け資金3.9兆円に拡充 不動産への融資促す
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2014V0Q3A220C2000000/
『【北京=川手伊織】中国人民銀行(中央銀行)は20日、事実上の政策金利と位置づける最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を据え置いた。金利を下げても住宅需要の刺激効果などが限定的で、景気回復を支えるため銀行への資金供給の拡充に注力する。市場に出回る中期資金を2月に1990億元(約3兆9000億円)増やした。銀行に不動産などへの融資拡大を促す。
LPRは優良企業に適用する貸出金利の参考になる…

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『LPRは優良企業に適用する貸出金利の参考になる1年物と、住宅ローン金利の目安となる期間5年超の金利がある。20日発表した2月のLPRはそれぞれ年3.65%、年4.30%だった。昨年9月から6カ月連続で据え置いた。
中国では住宅不況が長引いている。不動産シンクタンクの易居不動産研究院によると、春節(旧正月)の大型連休が21〜27日にあった1月の主要都市の新築販売面積は15平方キロメートルだった。2022年2月(同連休は1月31日〜2月6日)と比べて5%少なかった。
新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策が終わり経済は正常化が進むが、マンション市場は停滞から抜け出せていない。金融市場には「住宅ローン金利に関係する期間5年超のLPRには下げ余地がある」との見方もある。
それでも人民銀行が利下げを見送ったのは、金利引き下げによる需要刺激効果が限られるためとみられる。22年12月に新たに適用した住宅ローン金利は全国平均で年4.26%とすでに最低水準にある。22年1年間の下落幅は1.37%と7年ぶりの大きさだ。
住宅市場を刺激したい中国当局の思惑とは別に、住宅ローンの負担を軽くしたい持ち家世帯が借り換えなどに動いた。株式や不動産の投資収益が伸び悩むなか、手元資金を住宅ローンの前倒し返済に充てて借り入れを減らす富裕層もいる。
人民銀行が注力するのが銀行への中期的な資金の供給拡充だ。
15日には市中銀行に1年間の資金を融通する中期貸出ファシリティ(MLF)で、4990億元供給した。満期を迎えた3000億元を差し引いて、市場に出回るお金は1990億元増えた。資金供給を純増させたのは22年12月から3カ月連続だ。
銀行の流動性を高めて融資を拡大させる狙いがある。人民銀行などは1月に主要行を集めた会議で、経済回復を加速させるために積極的に融資を拡大するようハッパをかけた。人民元建ての新規貸出額は1月、前年同月比23%増の4兆9000億元となり、確認できる02年以降で最大を記録した。
このうち96%は企業向けだった。当局の意向を受けて、国有大手行がインフラ投資を手掛ける国有企業などへの融資を拡大したもようだ。
政府は住宅不況への対策として不動産開発企業への資金支援も強化している。開発企業向けの融資も全体の貸し出しが伸びる一因とみられる。
21年に本格化した不動産向け金融規制で、開発企業は資金不足に陥った。工事が中断し家主への引き渡しが遅れる物件が続出。頭金を支払ったり住宅ローンの返済が始まったりしたのに引き渡しが済んでいない物件は全国に2600件以上あり、対象の住民は188万人に上るという。
資金不足による工事の中断が、中国の住宅市場で9割近くを占める予約販売への不信感を強めた。政府は資金支援で早期竣工を促し、開発企業の信用力を高めてマンション取引を正常化させたい考えだ。
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点 記事にある通り、1月の人民元建て新規貸出額は4兆9000億元へと前年同月比23%も急増し、過去最高になった。これはさすがにペースが速すぎると判断したのだろう。2月は「適切な伸び率」で貸し出しを行うよう一部の銀行に対して中国人民銀行が要請したことが複数の銀行関係者の話で分かったと、ロイター通信が20日に報じた。また、この報道によると、人民銀行は1月に一部大手国有銀行の本店に対し、同月の貸し出しの一部について記帳処理を翌月以降にするよう要請する通知を出した。貸出統計の数字が突出するのを防ぐ狙いとのこと。中国経済は引き続き、当局による「管理」の色彩が濃い経済だということが、あらためてうかがえる。
2023年2月21日 7:40いいね
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察 なぜ人民銀行は金利を下げないのか。国有商業銀行は利下げによって、今、確保している利ザヤが縮小するからである。かつて、朱鎔基首相(2000年前後)の時代、商業銀行の手数料業務を拡充すべきと呼び掛けられた。しかし、銀行は証券に手を出すと、金融リスクが一気に高まってしまう。理財商品などの影の銀行業務はその一端である。結局、人民銀行は利下げを見送って、預金準備率操作や量的緩和を実施するしかない。しかし、こんなに景気が後退しても、金利を3-5%」のレベルに維持するのは異常といわざるを得ない
2023年2月21日 7:48 』