プーチン大統領の年次教書演説、戦争を先に始めたのは西側諸国とウクライナ
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『プーチン大統領は年次教書演説の中で「戦争を先に始めたのは西側諸国とウクライナでロシアは自衛のため武力行使しているに過ぎない。敵はロシアを引き裂けるならテロリストでも、ネオナチでも、悪魔でも利用する」と述べた。
参考:Послание Президента Федеральному Собранию
ロシアとウクライナの戦争を煽り、エスカレートさせ、犠牲者を増やした責任は全て西側諸国の指導者やキーウ政権にある
プーチン大統領の年次教書演説は約2時間にも及び、ウクライナとの戦争、家族を失った人々への包括的な支援、崩壊しなかったロシア経済、西側企業が去った隙間を埋めるビジネスチャンス、2024年の大統領選挙実施、高等教育の改革、戦略兵器削減条約の停止、核実験の再開準備などに触れた。
演説の冒頭でプーチン大統領が触れたウクライナとの戦争に関する内容は以下の通りだ。
1年前にロシアにとって歴史的な土地で暮らす人々を保護し、我が国の安全を確保し、2014年のクーデター後に誕生したウクライナのネオナチ政権を排除するため特別軍事作戦の実施が決定され、慎重に直面する課題に取り組んでいる。
ドンバスの人々は2014年以降、キーウ政権の憎悪に直面して封鎖と絶え間ない砲撃に晒されても自分達の土地で暮らす権利や母国語を話す権利のため戦い、ロシアよる救援を信じ待ち望んでいた。皆さんもよくご存知のようにロシアは問題を平和的に解決するため最善を尽くしたが、その背後で別にシナリオが準備されていた。
出典:Kremlin.ru/CC BY 4.0
西側諸国が約束した平和の実現はキーウ政権がドンバスを取り戻すための時間稼ぎに過ぎず、政治的な殺人、キーウ政権に批判的な人々の弾圧、ドンバスでのテロ行為奨励、西側諸国で民族主義者で構成された部隊の訓練などを行い、特に強調したいのは特別軍事作戦を開始する前からキーウ政権は欧米と防空システム、戦闘機、重装備を取得するため交渉を開始し、核兵器の再取得にも言及していた点で、米国とNATOは我が国の国境近くに基地と極秘のバイオ研究所を設置して、連中の奴隷と化したウクライナに大きな戦争の準備をさせていたのだ。
この事実を連中は認めている。公然と何も恥じることなく認めるのだ。まるでミンクス合意もルマンディー方式(ドイツ、フランス、ロシア、ウクライナによる4カ国協議)も外交的なショーでだったと言って、自分達の背信行為を自慢しながら喜んでいる。
戦火に包まれ血が流れるドンバスの平和的解決をロシアが誠実に求めていた時、連中は人々の命を弄んでいたのだ。このうんざりするような二枚舌はユーゴスラビア、イラク、リビア、シリアを破壊した方法と同じで、連中はこの恥辱を自ら洗い流すことは出来ない。なぜなら彼らに名誉や信頼や良識といった類の概念がないからだ。
出典:President of Ukraine ウクライナのNATO加盟申請
我々は全ての国にとって平等な安全保障システムが必要だと主張し、このアイデアを実現するため何度も欧米に働きかけてきたが、受けった反応はNATOの拡大、欧州とアジアにおける新たなミサイル防衛拠点の設置、ロシア国境近くへの部隊配備などで、2021年12月に安全保障条約に関する草案を米国とNATOに送ったがこれも拒否され、西側諸国はウクライナに侵略(ドンバスへの攻撃)のゴーサインを与えた。
日を追うごとに脅威は高まり、キーウ政権が2022年2月までにドンバスに対する攻撃準備の終えていたのは疑いようのない事実だ。
我々はドネツクや他の都市に対するウクライナ軍の空爆をよく覚えており、2015年にもドネツクに対する直接攻撃を試み、封鎖、砲撃、民間人へのテロ攻撃を続け、この全ては国連安保理が採択した関連文書や決議と矛盾し、誰もがドンバスで起こっている事態を無視し続けたを思い出す必要がある。
出典:President of Russia
繰り返しなるが戦争を始めたのは彼らであり、それを阻止するため我々は武力を行使したに過ぎず、今後も武力を行使し続ける。
ドンバスへの攻撃を計画していた連中はクリミアやセバストポリが次の目標であると明確に理解していたし、我々もそれを知っていた。このような計画も現在では公然と語られている。
西側諸国はミュンヘン安全保障会議でロシアを延々と非難したが、これは西側諸国が過去にやったことを忘れさせるためのもので、米国は2001年以降の軍事作戦で約90万人の人々を殺し、3,800万人以上の難民を生み出したと自ら明かしている。連中はロシアを非難することで自らの行いを人類の記憶から消し去り何もなかったことにしたいのだろうが、世界中の誰もが決して忘れないだろう。
なぜなら欧米は民主主義と自由という言葉を隠れ蓑に新自由主義と全体主義という本質的な価値観を強要してくるからで、異なる価値観や民族全体にレッテルを貼り、その国の指導者を侮辱し、これに反対する意見を弾圧し、汚職やスキャンダルに塗れている姿を我々は知っている。敵のイメージを作り出すことで国内経済、社会問題、民族問題などの矛盾から国民の目をそらそうとしている。
出典:President of Russia
1930年代に西側諸国はドイツでナチスが政権を握るのための道を開いたことを思い出してほしい。そして現代ではウクライナを反ロシアの国に変えようとしている。このやり方は新しいものではなく19世紀のオーストリア・ハンガリー帝国やポーランドなどの国々で何度も試された手法で、欧米諸国は2014年のクーデター(マイダン革命)を支援してウクライナを反ロシアの国に変えることを強行した。
最近、ウクライナ軍のある旅団の一つにドイツ・ナチス軍の師団と同じ「エーデルワイス」の名が与えられ、ウクライナ軍の装甲車両にはドイツ・ナチス時代の軍が使用していた徽章が描かれており、キーウのネオナチは自分達が誰の後継者であるかを隠そうともしない。これを西側諸国の権力者が気づかないことに驚いているが、結局はロシアと戦う国ならどこでも良いのだ。西側諸国はロシアを引き裂くのが目的なのでテロリストでも、ネオナチでも、悪魔でもロシアと戦う限り連中の支援を利用できる。
これまで何度も言ってきたが、我々はウクライナの人々と戦争しているのではない。
出典:BREAKING NEWS: UKRAINE インフラ攻撃を受けるキーウ
ウクライナの人々はキーウ政権や西側諸国の人質で、ネオナチ達は国の政治、軍事、経済を掌握し、数十年に渡って産業を破壊して天然資源を略奪してきた。この行動の帰結は社会の劣化や貧困・不平等の増加に繋がり、このような状況では戦争のための人的資源を集めるのが容易だ。この国の指導者は国民のことを消耗品として考えているのが事実で、本当に悲しいことがだがコレが現実だ。
ロシアとウクライナの戦争を煽り、エスカレートさせ、犠牲者を増やした責任は全て西側諸国の指導者やキーウ政権にあり、ウクライナの指導者は国民や国益のためではなく第三国の利益のため働いている。欧米はウクライナを対ロシア戦のテストもしくは実験の場として利用しており、長距離攻撃兵器がウクライナに到着すればするほど我々は脅威を国境か遠ざけることを余儀なくされるだろう。
以上が冒頭約20分で触れた内容の要約(残りの経済や教育は詳しくないのでパス)で、新たな動員や春攻勢などに関する話は年次教書演説に登場せず、戦略兵器削減条約の停止が「戦いのエスカレーション」を少しだけ前進させたという印象だ。
関連記事:プーチン大統領、ロシアの解体を企む者との戦いは我々にとって宿命
関連記事:プーチン大統領がウクライナ侵攻に踏み切った理由、クリミアの復讐を未然に防ぐため
※アイキャッチ画像の出典:President of Russia
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投稿者: 航空万能論GF管理人 ロシア関連 コメント: 55 』
『
K(大文字)
2023年 2月 22日
・敵対者へのナチスのレッテル貼り
・被害妄想の開陳
・“西側”への責任転嫁
まぁ、言ってることは開戦時から何も変わらない。特に新味のある内容でもなかったですね。
ただ、このセンテンス。
>この国の指導者は国民のことを消耗品として考えているのが事実で、本当に悲しいことがだがコレが現実だ
この1年間の経過を見て、本当にどのツラ下げてこれを言うのか…単に鉄面皮なのか、自覚すら無いのか。ドン引きです。
47
2023年 2月 22日
返信 引用
まあ世論の反発を恐れて三十万人しか動員出来ていないロシアからすると百数十万人動員して交代も守らず使い捨てにしているウクライナは普通にそう見えるんじゃないですか?
13
K(大文字)
2023年 2月 22日
返信 引用
そうですね。
当然、ウクライナ側も無謬とは言えないところもあります。
ただ、我々は日々接する情報からロシアのやり口が囚人部隊や督戦隊の投入、歩兵を囮に使った火点の炙り出し…と言ったシロモノだと分かっているので、「ロシアの方がブッチギリでヤバイだろ」と理解できる訳ですが、ロシア内部では自国の戦い方はどう理解されているのか?
SNSなんか、結構赤裸々な動画がアップされているように思うのですが。
2
XYZ
2023年 2月 22日
返信 引用
ロシアは「侵略」です。
ウクライナは「防衛」です。
同じ動員でも意味が全く違います。
ロシアは撤退すればそれで終わりです。
それなのに侵略を続けているのは自業自得です。
ウクライナは交代を守れるのが一番ですが、ルールを守って兵力不足になればウクライナという国家が消えます。
ウクライナが守れない原因はロシアの侵略です。
4
J
2023年 2月 22日
返信 引用
ウクライナの世論を、西側諸国の親ロシアの人は無視しているんですよね
2014年にクリミアドネツクルガンスクが独立する前のウクライナでは、親欧米派と親露派がそれぞれ約半数で拮抗し、若干の浮動票で政権が決まってました
その状態から親露地域のクリミアドネツクルガンスクが独立したから、現在も残ってる地域は親欧米派が圧倒的に多い
世論調査で徹底抗戦が圧倒的多数なのは当然なんです
とはいえクリミアドネツクルガンスク以外にも、2004年や2010年までの選挙で親露優勢だった地域はあるので、そのような地域ではロシア併合賛成、欧米のほうが敵という声も聴けます
世論調査結果とそういう人で正反対の内容ですが、その声だけを「西側が報道しない真実」「ウクライナ国民の本当の声」のように扱ってるのが西側諸国にいる親ロシアの人たちです
残っている地域でそういう人たちは少数派なのだから民主主義の原則で、多数派である親欧米派の徹底抗戦という民意に従ってもらうしかない
キーウ政権がウクライナ国民を無理やり戦わせてるのではなく、多数派である親欧米派に多数決で負けて巻き添えになった親ロシア派というだけなんですよね
なぜか知らないけど西側にいる「真実」を知ったという親ロシアの人たちは、親欧米派が多数であり徹底抗戦が民意だってのを無視したがる 』
『 ため息
2023年 2月 22日
ぐうの音も出ないほどプーチンはロシアの言い分を主張しました。
欧米の首脳陣はこれに論理的に反論できるのでしょうか。
「よいしょ」させてもらうと、ミリタリーブログとしてこれを掲載した
ことに管理人さんすごいな、、、です。
この演説は、プーチンの考えではなくロシア全体の意志として考えるべき
でしょう。欧米に対する敵対・決別宣言、というかハイブリッド戦争の
事実上の宣戦布告と言えます。
これを踏まえて日本はどうするべきか、、、。私は膨張する中国に
対応する為、ロシアとはうわべだけでも良好な関係を結ぶべきと考えている
ので、日本はこれまで以上に難しい立場に立たされます。
日露両国と同時に敵対するのは危険すぎます。またそんな力もない。
※一点僭越ながら補足すると、欧米は第三世界(インド・中国・中南米・
アフリカ・中東・東南アジア)の視点を全く無視していることです。彼らは
民主主義や自由主義というタグを、都合のいいように解釈運用する欧米に
ウンザリしていますから、ロシアのこの事実上の宣戦布告を見て少なからず
追従する国々はあるでしょう。それは後々アメリカの覇権を揺るがすかも
しれませんね。
13
通りすがり
2023年 2月 22日
返信 引用
関連記事にも出てるけど、管理人さんはウクライナ侵攻に関するプーチンの演説内容は全部翻訳して記事化してるから、別に今回だけを特別取り上げたわけじゃないで。
30
ため息
2023年 2月 22日
返信 引用
そうなんですね。確認不足でした。
ありがとうございます。
panda
2023年 2月 22日
返信 引用
結局のところ彼は思考が冷戦時代で止まっているのでしょう
独裁者の妄執にどれだけの人々が被害を受けていることか
25 』
『 xuh23
2023年 2月 22日
ロシアとうわべだけの良好な関係を結んだとしても中国の膨張は止まりませんね。
最終的にロシアは日本ではなく中国の方に付きますよ。
またロシアはハイブリッド戦争に失敗したからウクライナに軍事侵攻しました。
ですので欧米はロシア(プーチン)の言い訳に耳を貸さないでしょうね。
30
ため息
2023年 2月 22日
返信 引用
中国の膨張は当分止まらないので、少なくともロシアと敵対するのは
日本に危険ということです。最終的とは、全面核戦争のことですか?
最終戦争以前の駆け引きのことを言っています。
欧米(NATO)とロシアは全面戦争突入というコメントを書きました。
4
2023年 2月 22日
返信 引用
仮に日本とロシアが友好国になれたとしてもロシアは日本が窮地に陥れば中国と共に攻め込むでしょう。
ロシアはそういう国です。
ロシアとの友好は核なしには成り立ちません。
まあ別に今回の件でウクライナに肩入れする必要もないとは思いますけどね。
24
ため息
2023年 2月 22日
返信 引用
ロシアは「そういう国」というのが分からないですね。
政治体制が違う、価値観が違うで敵味方を選別してしまっては周りが
敵ばかりになります。アメリカも信用のならない国なのですから、
領土問題で譲歩しないのは当然としても、そこはイデオロギーは別に
是々非々で外交するべきではないでしょうか。
ロシアの言い分は別にしても、ロシアが勝利して終わった方が日本の
国益になります。領土問題を除けばロシアと敵対する理由がないのです。
8
774rr
2023年 2月 22日
返信 引用
> ロシアが勝利して終わった方が日本の国益になります
😵💫
24
2023年 2月 22日
返信 引用
私もロシアと敵対する必要はないと考えています、そこは相違ありません。
ウクライナ現政権も全く支持出来ませんしね。
しかし日露より中露の方が歴史的にはるかに関係が深く、ロシアが二者択一で日本を選ぶことは考えにくいです、そしてそれは日本が米露を天秤にかけても同じことが言えるでしょう。
端的に、互いの不信が深すぎます。
4
変なの来てんな
2023年 2月 22日
返信 引用
>ロシアの言い分は別にしても、ロシアが勝利して終わった方が日本の
>国益になります。領土問題を除けばロシアと敵対する理由がないのです。
ならない、ならないです。
ロシアが弱体化してくれた方が日本の国防は安定するし
北方領土が戻ってくる可能性も高まります。
28
名無し
2023年 2月 22日
返信 引用
不可侵条約を破って火事場泥棒し始めた過去をお忘れか。
ロシアが勝った方が日本の国益とか、
ものすごいアクロバティックな論法ですなぁ
中国の侵略が早まるだけですけど
34
HY
2023年 2月 22日
返信 引用
戦前日本は日ソ中立条約を結んでソ連とは敵対しない方針をとりました。当時の中国(中華民国)との戦争に集中するためです。その後も終戦工作でソ連を頼るなどしていましたが、結果は歴史が証明しています。ソ連は裏切りました。ロシアは裏切ります。
そもそも「ロシアと敵対しない」とおっしゃいますが、プーチンのウクライナ侵略の動機の一つが「ウクライナがNATOに加盟して米軍基地が置かれるから」なのはご存じでしょう。世界一の米軍基地を抱えている日本は最初っから「ロシアの敵」ですよ?
それとも日米同盟破棄を主張しますか?
4
トーリスガーリン
2023年 2月 22日
返信 引用
>>ロシアは「そういう国」というのが分からないですね。
過去の発言からみるにプーチンの認識している世界観では核もって自律的に行動出来ない国家は主権国家ではありません
つまりプーチンは日本をプレイヤーではなくアメリカの付属物としか認識していません
アメリカと安保条約を結んで核の傘の提供を受け在日米軍を駐留させている以上、米露間での対立が完全に解消されない限り日露間でどれだけ関係改善だのを進めようと安全保障的には全く意味がないという事です
※民間交流やらまで無意味とは言いませんが、それが安全保障に大きな影響を及ぼすことはプーチン政権が続く限りあり得ないでしょう
1 』
『 2023年 2月 22日
ぐうの音は出ますね。
外交(というより情報戦)で敗れて堪えきれずに戦争を始めたのはロシアです。
マイダン革命でウクライナの政権転覆を図り、ウクライナの反露民族主義を煽り、ミンスク合意を最初から破られる前提で戦争準備に使ったのはまあロシアの言うとおりですが、先に手を出してしまったのはロシアです。
やり方が下手でしたね。
まあしかし西側は大義名分を得て西側の結束を図ることには成功しましたが、それに第三世界が追従しなかったことも事実なわけで、やはり世界情勢の変化は感じてしまいますよね。
ロシアの主張は欺瞞に満ちていますが、西側の主張も欺瞞まみれ、こんなことを続けていればいつかかつての第三世界の中から反旗を翻されて西側支配は終わるでしょう。
日本がうまく舵取りできればいいのですが。
19
ため息
2023年 2月 22日
返信 引用
情報戦でロシアは負けたのでしょうね。プーチンももっと早く軍事介入
していればと以前言っていましたから。この発言も今更?遅い!ですかね。
ハイブリッド戦争で既に負けたというのも、確かにそうかもしれません。
4
とり
2023年 2月 22日
返信 引用
第三世界なあ…
巷ではやれ次はインドの時代だとかインドネシア、ナイジェリアの人口が牙を剥くとか言われてるが、第三世界=熱帯地方は地球温暖化でオワコンになると思うんだよな。地形的に高台であるアフリカはともかく、東南アジア、インドはもう厳しいわ。』