バイデン大統領、支援には限りがあるのでウクライナに反撃を急ぐよう要請

バイデン大統領、支援には限りがあるのでウクライナに反撃を急ぐよう要請
https://grandfleet.info/us-related/biden-urges-ukraine-to-speed-up-counterattack-as-aid-is-limited/

『米POLITICOは「欧米の武器支援も防衛産業の供給能力にも限界があるため、バイデン大統領は反撃を急ぐようゼレンスキー大統領に要請している」と報じており、ロシアには人的資源と時間という決定的な2つの優位性があると指摘した。

参考:‘One of the decisive moments of his presidency’: Biden heads to a troubled Europe
プーチンは西側諸国の抵抗が崩れるまで何年でも待つことが可能だと確信している

まもなくバイデン大統領はポーランドに向かいドゥダ大統領やNATO加盟国の指導者と会談し、ロシアと血みどろの戦いを繰り広げるウクライナを「最後の瞬間まで支援する」と公言する予定だが、この戦いは西側諸国の予想を裏切る方向に進んでいる可能性が高く、このタイミングでのバイデン大統領の演説は「ロシア軍がウクライナの抵抗にも関わらず依然として攻勢を維持している事実」と「欧州諸国の武器増産が思うように伸びておらず支援が将来的に縮小する可能性」を反映したもになると米POLITICOは報じている。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

ロシア軍は誤ったゲームプランによって侵攻初期に大きな損害を被り、さらにハルキウ州やヘルソン州で確保していた占領地域もウクライナ軍の反撃で失うことになったが、未だにロシア軍はウクライナ領の20%以上を維持して兵士の命を顧みない残忍な攻勢も衰える気配はなく、米政府関係者は「ウクライナ軍を遥かに上回る兵力を投入してロシア軍は驚くべき成功(恐らくバフムート周辺の戦い)を収めており、ウクライナ全土を支配するというプーチンの誓いは全く衰えていない」と指摘した。

さらに米国の諜報機関も「ロシアは侵攻初期に挫折を味わったかもしれないが、ウクライナやこれを支援する西側諸国に対して人的資源と時間という決定的な2つの優位性があると信じている」と、欧州の諜報機関も「プーチンは西側諸国の抵抗が崩れるまで何年でも待つことが可能だと確信している」と評価しており、特に西側諸国とって誤算だったのは経済制裁や膨大な損害にも関わらず「クレムリンは戦争継続に反対する大きな内圧を受けていない」という点で、少なくと2024年の米大統領選挙まで猛攻を続け「ウクライナ支援に否定的な新大統領の誕生を期待している」と予想する専門家までいるらしい。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

米POLITICOは「最近の世論調査でウクライナ支援継続を支持する有権者が減っている。バイデン大統領は昨年末に可決された資金で2023年中のウクライナ支援を継続できると考えているが、ウクライナ支援を疑問視する小さなグループが下院の共和党に存在し、このグループは確実に大きくなっている」と指摘、NATO軍の司令官を務めたデビッド・ヒックス元空軍准将は「バイデン大統領がNATOの結束を維持できるか確証がなく今後さらに困難が増すため、これまでに受けた支援でウクライナは結果を出さなければならない」と述べている。

ただウクライナ支援継続は超党派の議員が支持しているため直ぐに支援規模が削減される可能性は限りなく低いが、提供された装備や弾薬でウクライナ軍が具体的な結果を示さないと「戦ってロシア軍を追い出す」というゼレンスキー大統領の方針が米国を含む西側諸国から支持を失い、譲歩を伴う戦争終結を求める声が大きくなるだろう。

出典:Rheinmetall Denel Munition

もう一つの誤算は欧州諸国の武器増産が思うように伸びていない問題で、米政府関係者は「既に備蓄が尽きたNATO加盟国もあり、今後も欧州が砲弾などの消耗物資をウクライナに供給し続けられるのか」と懸念、ドイツのショルツ首相も「武器を一時的に増産するのではなく恒久的なものにしなければならない」と、フランスのマクロン大統領も「欧州はもっと防衛産業に投資すべきで、平和を望むなら平和を達成するたの手段が不可欠だ」と訴えているのが興味深い。

米国のシンクタンクは「今回の戦争は欧州諸国の防衛産業能力と武器備蓄に潜んでいた重大な欠陥を露呈させた。そして米国の防衛産業も十分なスピードで需要に対応できないと考える人が多い」と指摘しており、米POLITICOは「欧米の武器支援も防衛産業の供給能力にも限界があるため、バイデン大統領は反撃を急ぐようゼレンスキー大統領に要請している」と報じている。

つまり米国や欧州が本気を出せば「第二次大戦を彷彿とさせる生産力でロシア軍を物量で圧倒的できる」というのは民需や経済効率を無視する戦時体制の話で、いつ消えてなくなるのか分からない戦争需要のため株主が存在する防衛産業企業も無闇に生産設備を拡張する訳がなく、欧州の防衛産業企業が生産規模の拡張に動いているのは「予算の裏付けがある欧州諸国の国防予算増額に対応した範囲」であり、この程度の増産ではウクライナ需要を到底カバーできないという意味だ。

米国も国防予算を増額しているもの伸び率の大半は高騰したインフレ率を吸収するために消え、防衛産業企業が155mm砲弾や対戦車ミサイルなどの増産に動き始めたのは2023年度予算が成立して「資金供給の裏付け」が確保できたためで、政府発注に依存せず「自社資金で生産設備を拡張して積極的にウクライナ需要を取り込もう」という動き特に見られない。

出典:SAAB GLSDB

これを「欧米の怠慢=ウクライナを勝たせる気がない」と見るかどうかは人によって異なると思うが、欧米企業の生産力拡張は「政府が約束した国防支出」と「資金供給の裏付けが取れたウクライナ支援」に依存しているため、企業の自発的な生産力拡張に期待するのは無理がある。

因みにゼレンスキー大統領は伊メディアの取材に「短期戦で勝利することを目指して準備を進めており2014年の失敗は繰り返さない」と述べている。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Noah D. Coger
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投稿者: 航空万能論GF管理人 米国関連 コメント: 25 』

『 TKT
2023年 2月 20日

返信 引用 

第二次世界大戦のことばかりではなく、日本の近くで行われた
「朝鮮戦争」
のことも、思い出してみる必要があるでしょう。

第二次世界大戦のソ連軍はアメリカやイギリスのレンドリースのおかげで勝てたんだ、というような主張もありますが、朝鮮戦争の北朝鮮軍、中国人民志願軍、ソ連空軍にはそういう図式は全く当てはまらないのです。

釜山円陣での攻防戦、マッカーサー指揮による仁川上陸作戦の後、アメリカ軍主力の国連軍はソウル、平壌を奪回し、、敗走する北朝鮮軍を一気に鴨緑江まで追い詰めましたが、そこで突然出現したのが、大量のソ連製兵器で武装した中国人民志願軍であり、さらにアメリカ製戦闘機を上回る性能を持ったジェット戦闘機、
「MiG-15」
であったのです。

その後、再びソウルから退却した国連軍は、
「ヴァンフリート砲弾量」
によって、中国人民志願軍の南下を阻止し、再びソウルを奪回しますが、38度線の付近では中国軍も大量のソ連製榴弾砲による砲撃で応戦し、
「鉄の三角地帯」
と呼ばれる地区では、両軍による壮絶な砲撃戦が行われますが、ソ連に支援された中国人民志願軍が先にタマ切れになることは結局なかったのです。

制空権奪回のためにMiG-15に匹敵する性能を持つF-86が投入されるようになっても、機数では常にMiG-15の方が圧倒的に上回っていたのです。すでに朝鮮戦争で
「アメリカの物量の限界」
は明らかになっており、またそれを支えるためにはすでに日本の生産力、工業力が頼りになっている状態でした。

アメリカがかつての敵国であるドイツや日本に国産戦車の開発を許可したのも、朝鮮戦争、ベトナム戦争で、すでにアメリカの工業力、生産力が限界に達してたためなのです。
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