ウクライナ軍、動員の必要性があるもの人々の熱意が冷めつつある
https://grandfleet.info/european-region/ukrainian-army-needs-to-be-mobilized-peoples-enthusiasm-is-waning/
『ウクライナ軍南部司令部が管轄するオデーサ市内で「動員対象者を力ずくで連行した余波」が続いており、現地メディアの取材に応じた南部司令部のナタリア・グメニュク報道官は「動員の必要性があるもの人々の熱意が冷めつつある」と述べた。
参考:ОК “Юг”: Потребность в мобилизационном ресурсе есть, а энтузиазм у людей падает
求心力を維持するには1日でも早く反撃を開始して戦果を提示するか、戦意を高揚させるようなプロパガンダが必要なのだろう
オデーサ市内のプリヴォス市場付近で軍の採用官は動員対象者の腕や足を掴んで入隊事務所に力ずくで連行しようとしたが、この過程で「採用官は動員対象者に暴行を加えた」と現地メディアと報じており、南部司令部も「オデーサで起こったことは事実で正式な調査が行われており、この地区の採用責任者は懲戒処分を受けた。動員対象者への通知に関わる軍人に弁護士や心理士を交えた追加研修を実施している」と発表した。
Одесита жорстко затримав військкомат посеред вулиці: ОК “Південь” каже, що винних покарають pic.twitter.com/gwUmp9YCSR
— Українська правда ✌️ (@ukrpravda_news) February 14, 2023
このような問題は度々Telegram上でも報告されており、軍の採用官が無理やり家から動員対象者を連れ去ろうとして母親が抵抗する様子なども流失済みで、動員を逃れるため国境を無断で越えようとして拘束されたというニュースはもはやウクライナの日常だ。
この問題について現地メディアの取材に応じた南部司令部のナタリア・グメニュク報道官は「敵と戦う前線部隊に休息を与えるためにはローテーションを行う必要があり、新たな動員が必要とされているものの動員対象者の間で(ロシア軍との戦いに参加するという)熱意が冷めつつある」と述べて注目を集めている。
出典:Генеральний штаб ЗСУ バフムートで戦う兵士の様子
グメニュク報道官は「我々は前線のニュースに共感し、東部戦線で何が起こっているのか、そこで戦う部隊が本当に長い間困難な状況に置かれているのを理解している。このような地域で同じ部隊が長期間戦い続けるのは不可能なため新しい部隊と交代させ、安全で落ち着いた地域で消耗した体力を回復させる必要があり、そのために動員した人々で新たな戦力を形成しているのだ」と言及。
さらに「我が国の動員は高い市民意識に依存しており、対象者が自ら入隊事務所で自身の情報を更新し、住んでいる居住地を登録し、呼び出しがあれば速やかに指定された場所へ出頭する必要があるのだが、登録した居住地に住んでいない人や、わざと動員を避けようとする人も多く、動員計画と既存の法律には矛盾も存在するため必要な動員対象者を招集するのが難しくなっている」と述べているのが興味深い。
🇺🇦🪖Ukrainian recruitment officers kidnapped a boy in front of his mother to be used as cannon fodder.
The video stops when the military man starts swinging his first against the mum.
Now he will go to fight for “freedom and democracy” pic.twitter.com/xhsfIPA4JF
— AZ 🛰🌏🌍🌎 (@AZgeopolitics) February 6, 2023
以前、ウクライナ軍でも命令不服従、戦場からの逃亡、上官への暴力などが横行しているため軍人に対する刑事責任を大幅に強化する法案(法律8271号)が採択され成立、しかし同法案は起訴された軍人の上訴権を剥奪するため「基本的な人権が守られていない」という批判が集中し、バフムートで戦っていた匿名の将校は「前線での逃亡は約束されたローテーションが守られていないためで罰則の強化は役に立たない」と米メディアに明かしていたことがある。
この将校は「場合によっては指定された陣地を放棄することが無意味な死から兵士を救う唯一の方法になる。弾薬の補給や味方の救援が期待できない塹壕の中で数日も不眠不休で座っていれば戦闘力は0だ。戦闘の疲労とトラウマは精神障害を引き起こし兵士の規律に混乱、怠慢、堕落をもたらす。これが兵士の戦闘能力と命令服従に大きな影響を及ぼす。罰則を強化すれば指揮官の不味い命令から逃れる方法を兵士から奪うことになり、根本的には大軍のロシア軍と戦う負担を前線の兵士に押し付けて約束したローテーションを軍は守っていないのだ」と述べていた。
出典:Zelenskiy Official
つまり侵攻開始から約1年が経過し、ミサイル攻撃やイラン製無人機の脅威は残るものの直接的な侵攻の脅威が去ったウクライナ北部地域や中央地域、ロシア軍の直接侵攻から最も縁遠い西部地域やオデーサ州では日常生活(アルコール飲料の販売制限緩和など)が多少なりとも戻ってきており、ロシア軍との戦いに参加する熱意が低下し「動員を避ける行動」をとる人々が増加傾向なのだろう。
結局、軍が要求する動員対象者の招集が満たせないとローテーションに必要な戦力の準備に遅れが生じ、その分だけ前線で戦う兵士の交代や休息が減って不満がたまり、これを見た人々が動員を更に嫌忌するようになれば「市民意識に依存した動員計画」が「法律による強制的な動員計画」に切り替わるかもしれない。
出典:Сухопутні війська ЗС України
今直ぐウクライナ軍を支える動員計画が破綻するとは思えないが、戦いが長期化すれば「祖国をロシアの侵略から守る」という熱狂から人々が冷め始めても不思議ではなく、こういった部分での求心力を維持するには1日でも早く反撃を開始して戦果を提示するか、戦意を高揚させるようなプロパガンダが必要なのだろう。
戦いが長期化すれば歪みが生じるのは当たり前で戦争という物語にも光もあれば影もあり、出来だけ今回の戦争の実態(遠く離れた日本から傍観しているだけは限界があるは承知している)に迫るには「美しい物語と同じだけ残酷な物語にも触れる必要がある」と管理人は考えている。
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※アイキャッチ画像の出典:Операція об’єднаних сил
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 12 』