エネルギー危機で、壊れるイギリス

エネルギー危機で、壊れるイギリス : 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/30864287.html

『 イギリスが、かなり酷い事になっています。エネルギー価格の高騰で、イギリス伝統のパブが、週に21件のペースで閉店しています。店舗を維持するだけの利益を稼げなくなっているからです。そして、この問題の本質は、単にロシアのウクライナ侵攻だけが原因ではない点です。実は、イギリスのエネルギー価格の高騰は、その前から始まっていて、根本的な原因は、再生可能エネルギーにシフトをしすぎた事です。イギリスの電力事情は、既に40%が風力発電に切り替わっていて、石炭火力発電所は、どんどん閉鎖しています。予定していた原発の建設を白紙に戻し、「再生可能エネルギー先進国だぁ」と、自慢していたのですが、自然だのみの発電は、その年の風加減によって、非常に不安定になるものになりました。

まぁ、イギリスとかEUの場合は、自業自得の面があるのですが、そこで電力供給不足になると、世界中から天然ガスや石炭を高値で買い漁る為に、その余波をくらって、発展途上国が、ものすごい皺寄せを受けています。下手すると、入札にも参加できないくらい、価格が高騰したのです。結果として、毎日8時間停電するような生活を強いられています。結局のところ、欧米がエコだぁ、先進だぁと、思想で何かを始めて、弊害がでると、金の力で、その被害を全部、発展途上国に押し付けます。今のSDGsは、極めて上っ面の理想論で構成されています。

私は、このブログの記事で、「無茶な再生エネルギー政策を進めていると、欧州で凍死者が出るよ」と言う事を以前に投稿しているのですが、イギリスで出始めましたね。光熱費が払えなくて、暖房を止めた状態で、凍死する人が出ました。この生活苦に堪りかねた市民が、ガンガンとストライキを始めて抗議しているのですが、これが、また社会の混乱に拍車をかけています。

イギリスのストライキというのは、周りに対する配慮が一切無いのですね。例えば、今、問題になっているのは、医療機関の大規模ストライキです。期間中に急患が発生しても、基本的に受け付けてもらえないので、労働運動が人命を脅かす事態になっています。イギリスは、労働党政権の時代に、物凄く分厚い社会福祉制度を設定しました。殆ど、自己負担無く医療が受けられる上、一定の条件をクリアすると、病気を直す為に通院するのに必要だった交通費まで税金で負担してくれたのです。国民を国の財産と考える、「思想的」には素晴らしい制度ですが、産業が斜陽のイギリスに、冷静に考えて、制度を維持できるだけの税収が確保できると思いますか?

当然ながら、国の財政は逼迫して、制度は維持していますが、執行に行列待ちができる事態になっています。結局、無い袖は振れないので、医療行為を限定する事で、膨大な経費を抑えなくてはなりません。例えば、救急車を呼ぼうと電話をしても、話を聞いた窓口が「緊急性が無い」と判断した場合、救急車を出してもらえません。素人が電話口で、自分の症状について説明するのですから、的確に伝えられるわけもなく、救急車を要請したのに出してもらえず、自宅で亡くなった人もいます。そして、今回の医療機関のストライキで、治療予約の強制キャンセルが、13万件以上も出ています。これは、診察してもらう為に、医療機関を予約して、待ち状態になっていた人達の数です。制度上の医療は提供するけれど、その恩恵に預かれる対象者は、財政上の理由から限定されていて、予約した上で何週間も待たされるのです。そして、緊急性が無いと判断されると、予約すらできません。結果、予約待ち状態が、常に十万人以上抱えるようになっています。

病気の一般的な進行スピードを考えると、予約待ちしている間に悪化して死んでしまうかも知れません。制度上の分厚い福祉を維持する為に、草の根の医療行為が崩壊しているのです。イギリスでは、大学関係者も、ストライキをします。その間、閉校になる為、当然ながら授業に遅れが出ます。それは、ストライキの影響なのですが、イギリスでは、それをカバーするという事を一切しません。授業料は、しっかり徴収されて、規定の授業を受けられず、進学に影響が出る事になります。

維持する仕組みを考えなければ、思想的に素晴らしい制度なんのは、いくらでも設定できます。何かと言うと、政治家が欧米に見学に行って、「制度が素晴らしい」と言い、「それに比べて日本は」と言いますが、ちゃんと社会に、どう浸透しているかという実態まで見ないと、ただの勉強会で終わりです。だから、どう考えても国土に合わない、太陽光発電なんかを、無理矢理推進する事になります。太陽光パネルを設置する為に、各地で起きている環境破壊、森林伐採は、数十年に渡って、国土を痛めつけるはずです。一度、破壊した森は、簡単に回復しないからです。問題は、その制度が、堅実に維持する仕組みが、ちゃんと整えられているかです。思いつきで全力疾走すると、取り返しのつかない事態に陥ります。で、まさにイギリスが、それです。

間もなく、EV化をどんどん進めている北欧が、この列に加わると見ています。ノルウェーの新車販売のEV率は、80%近いですが、その費用は、自国で取れる北海油田の原油を他国に売った利益で賄っています。税制上の優遇処置、電気ステーションの設置、EV購入時の補助金も、殆どが原油の採掘量を上げて補填しています。それゆえ、ノルウェー以外への原油の輸出は40倍になり、自国が脱化石燃料を達成する為に、他国のCO2排出量を40倍増やしています。ノルウェーは、豊富な水資源があるので、自国の発電量だけなら、水力発電で、かなりいけるのです。これ、地球環境という事で考えると、意味がある事なのでしょうか。そして、原油の売却代金が無ければ、このEV優遇制度も維持不可能なのです。

思想で突っ走る、思想で現実を変えようとする危うさというのは、実に危険です。』