「H3」打ち上がらず 補助ロケットに着火しなかったもよう
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230217/k10013983201000.html



※ 今日は、こんな所で…。
『日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機は17日午前10時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられる予定でしたが、ロケットは打ち上がりませんでした。補助ロケットに着火しなかった模様だということで、JAXA=宇宙航空研究開発機構が詳しい状況を調べています。
「H3」の初号機は、17日午前10時37分に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定でした。しかし、ロケットの発射台から白い煙が上がりましたが、機体は打ち上がりませんでした。
種子島宇宙センターでは「メインエンジンには着火したが補助ロケットには着火しなかった模様だ。状況確認には時間がかかる見通しだ」というアナウンスが流れました。
補助ロケットは、「SRB-3」と呼ばれ、「H3」ロケット用に改良されました。長さはおよそ15メートルで直径2.5メートルの円筒に入った固体燃料を燃やし最も推進力が必要な打ち上げの初期段階に使用されます。
「SRB-3」は、搭載する衛星の重さに応じてロケット本体に取り付けますが、部品を減らし、軽量化や低コスト化につなげたほか、取り付けにかかる日数も2日と、これまでの半分で済むよう開発されたということです。
今回の初号機には2本装着され、計画では、打ち上げの0.4秒前に点火して燃焼を始め、発射から1分56秒後、高度43キロでロケット本体から切り離される予定でした。
JAXAによりますと、初号機の打ち上げは17日は行わず、燃料を抜き取ったあと、ロケットの組み立て棟に機体を戻すことになる可能性が高いとしていて近く会見を開いて状況を説明したいとしています。
JAXA「失敗とは判断できない」
JAXAの広報担当者は報道陣の取材に対して、「メインエンジンには着火したもののロケットの両側についている補助ロケットのSRB-3には着火しなかった。どうしてこうなったかはまだ分からず若干時間がかかるようだ。今この状態ではきょう再び打てるということはないのではないか。まだ打ち上げてはいないので、失敗とは判断できない。打ち上がる前に分かったので、新しい打ち上げを目指すことになる」と話しました。
新型国産ロケットの仕様
【「H3」とは】
新型ロケット「H3」は、JAXA=宇宙航空研究開発機構と三菱重工業が9年前から開発しています。
日本の大型ロケットとしては「H2」以来となるおよそ30年ぶりの新規開発で、現在の日本の主力ロケット「H2A」の後継機として総開発費2000億円余りの国家プロジェクトとして進められています。
「H3」の全長は最長で63メートル、直径は5.2メートルあり、燃焼を終えると順次切り離す2段式ロケットで、第1段と第2段には、ロケットを飛ばすための推進剤に「液体水素」と「液体酸素」を使っています。
エンジンはいずれも新型で、
▽第1段のメインエンジンが「LE-9」。
▽第2段のエンジンが「LE-5B-3」。
▽さらに、「SRB-3」という固体燃料を使う補助ロケットを搭載することができます。
「H3」は、「H2A」に比べて、
▽エンジンの第1段では部品の数を、▽補助ロケットでは本体との結合点を減らすなど、独自の技術を採用して設計をシンプルにしています。
【発射台】
発射場は、鹿児島県の種子島宇宙センターですが、発射台も新たに開発していて、打ち上げ作業の効率化を図る工夫を施しています。
【搭載重量に応じて変更可能】
「H3」は、
▽メインエンジンを2基から3基に増やせるほか、
▽補助ロケットの本数も最大4本まで搭載可能です。
▽人工衛星を覆うカバー「フェアリング」の大きさも長短2種類あり、
搭載する人工衛星に応じて仕様を変えられるのも特徴です。
【初号機は】
今回打ち上げる初号機は、
▽メインエンジンが2基、
▽補助ロケットが2本、
▽フェアリングは短いタイプを使用するため全長は57メートルで、
▽人工衛星を含めない重量はおよそ422トンです。
地球観測衛星「だいち3号」を搭載します。
特徴は「安く大きく」
【パワー増強とコストダウン】
新型ロケット「H3」の最大の特徴は、▽パワー増強と、▽コストダウンの両立です。
【日本のロケット長所と短所】
現在の主力ロケット「H2A」は、打ち上げ能力を強化した「H2B」も含め、これまで55回打ち上げられ、失敗は2003年、「H2A」6号機の1回だけで成功率は98%を誇ります。
一方で、「H2A」は、打ち上げ1回当たり、およそ100億円かかります。
商業衛星の打ち上げ需要が高まり、世界中で新型ロケットの開発が進む中で、H2Aでは将来、価格競争の面で不利になると指摘されています。
【「H3」が掲げる目標】
「H3」は全長が最長で63メートルと、「H2A」より10メートル長いほか、直径も1.2メートル大きい5.2メートルで、国内のロケット史上最大。
打ち上げ可能な重量は、「H2A」のおよそ1.3倍に増強されました。
そしてコスト面では、打ち上げにかかる費用をおよそ50億円と、「H2A」の半分程度に抑えることを目指して開発。
独自の技術を採用してエンジン部品の数をこれまでの3分の1程度に減らしたほか、
ロケットの発射台も新たに開発していて、打ち上げ作業の効率化を図る工夫を施しています。
さらに、受注から打ち上げまでの期間を2年から1年に短縮するとともに年間6機の打ち上げを目標に掲げています。
【高い信頼性も維持】
「H3」は、これまで築いてきた日本のロケットへの高い信頼性を維持しながら、新しい宇宙開発時代に必要なパワー増強とコストダウンを両立させ、各国がしのぎを削る国際的な打ち上げビジネスに対抗するのがねらいです。』