迫られる脱・日銀緩和頼み 政府は成長の約束果たすとき
岐路の異次元緩和㊥
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1314S0T10C23A2000000/

『【この記事のポイント】
・金融緩和の恩恵に甘え政府の財政規律は緩んだ
・成長戦略、財政健全化の政府約束は果たされず
・緊張感をもち履行を迫るのも新体制日銀の仕事
「補正予算が必要だ」。政府が新型コロナウイルス禍に始めた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」。ただでさえ異例の策だが、その返済に困る経営者にせがまれた与党議員が補助金を求め声を上げる。
【前回記事】植田日銀、10年緩和の出口担う 市場のゆがみ限界に
2023年度予算案を国会審議するさなか与党議員
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多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
永浜利広のアバター
永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
ひとこと解説
近年の成長戦略の世界的潮流は、財政政策を伴うものになっています。
代表的なのが、バイデン政権の元でイエレン米財務長官が進めているMSSE(モダンサプライサイドエコノミクス)です。
具体的には、財政健全性の見方を変えることにより、人的資本の蓄積やインフラ整備、R&D強化、温暖化防止面等での財政需要を拡大することでサプライサイドを強化し、長期の成長力を確保するというものです。
日本も見習うべきでしょう。』
『2023年度予算案を国会審議するさなか与党議員が補正予算に言及するのは本来ご法度だ。財務省も歯止め役を果たせない。
黒田東彦総裁が就任する直前、2013年1月に政府と日銀はそれぞれの役割を記した共同声明(アコード)を結んだ。日銀は2%のインフレ目標に向けて金融緩和に取り組み、政府は成長戦略を実現し財政健全化を進める。そんな相互努力の約束だった。
それから10年。市場機能の低下という副作用を生むほど金融緩和に突き進んだ日銀に対し、政府は約束を果たしたと言いがたい。
それどころか、金融緩和が生み出した恩恵に甘え、財政の規律は緩んだ。日銀が大量の国債を市場で買い、政府が簡単に借金を重ねられる状況は、事実上の財政ファイナンスだ。
黒田総裁の就任前の12年末に691兆円だった普通国債の残高は10年間で4割以上増え1000兆円を超えた。国内総生産(GDP)に対する政府債務の比率は主要国で突出する。
財政の大盤振る舞いは経済を強くするどころか、逆に衰えを招いた面もある。帝国データバンクによると実質破綻状態で事業を続けるゾンビ企業は21年度に18万8000社。ゼロゼロ融資が拍車をかけた。
ゾンビ企業は全体の12.9%に達する一方、廃業率は先進国平均の半分以下の3%どまり。産業の新陳代謝が進まず、変革は生まれない。デジタル投資はこの10年は微増にとどまり、3〜5割伸びた米欧に劣後する。潜在成長率は0.3〜0.5%に低迷する。
グリーン革命と呼ばれる脱炭素の社会づくりの停滞は象徴的だ。再生可能エネルギーへのシフトに逆行するガソリン補助金は3カ月の予定だったが延長を繰り返し、1年以上も続いている。使われる国費は当初の計画の70倍にあたる6.2兆円に膨らんだ。
米欧はコロナ対応から財政健全化にかじを切り、世界が日本に送る視線は厳しい。「金融支援策の対象は存続可能な企業に限定されるべきである」「エネルギー補助金はもっと対象を絞ることができたはずだ」。国際通貨基金(IMF)は1月に発表した声明で日本への注文を並べた。
英国債の投資家向け広報(IR)で来日した英債務管理庁長官が9日、財務省を訪れた。金融引き締めに動く中央銀行の国債売却と英政府の国債発行が重なって市場が混乱しないよう「中銀とよく連携している」と説明した。
市場の英国売りで政権が倒れた22年の出来事は関係者の記憶に生々しく残る。英国のような激しいショックに見舞われる前に、日本の財政を立て直し経済を成長に導けるかどうか。
共同声明でうたった約束を政府に迫る緊張感はこの10年、日銀にも足りなかった。独立性と適切な距離感を保ち政府と向き合うところから、植田和男氏の総裁としての仕事は始まる。
多様な観点からニュースを考える
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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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ひとこと解説近年の成長戦略の世界的潮流は、財政政策を伴うものになっています。
代表的なのが、バイデン政権の元でイエレン米財務長官が進めているMSSE(モダンサプライサイドエコノミクス)です。
具体的には、財政健全性の見方を変えることにより、人的資本の蓄積やインフラ整備、R&D強化、温暖化防止面等での財政需要を拡大することでサプライサイドを強化し、長期の成長力を確保するというものです。
日本も見習うべきでしょう。
2023年2月16日 8:33 (2023年2月16日 8:35更新)
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中空麻奈のアバター
中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
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今後の展望さまざまな捉え方は可能でも、日銀は2013年1月アコード以降、一貫して緩和をし、深掘りし、日本の景況感を下支えしてきたのは確か。この間に経済成長出来なかったのは、むしろ政府の経済対策に問題があったと言われても仕方がない。更に問題は財政再建が出来なかったどころか、悪化の一途を辿ったことだ。その意味で、日銀幹部が新しくなったところで、アコードの見直しをするのなら、政府のコミットメントは欠かせないものとなる。ただし、アコードはなくていいもの、である。それを設定するとすれば、何のために設定し、何があればアコードの終了となるか、も考慮しておくべきではないだろうか。
2023年2月16日 9:43いいね
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説日本経済にとってもっとましな政策がなかったのか。これまでの30年間、景気が後退すると、いつも輸血しかされない。人、物、金のなかでいつも金に頼っている。しかし、そのツケがこれから回ってくる。物価は上昇している。デフレからインフレになっている。低所得層の生活が脅かされる。でも、財政は巨額の赤字。しかも、国家の債務はGDPを大きく上回っている。それでも、国家予算は毎年最多更新。そろそろ政策を転換しないといけないのでは。
2023年2月16日 7:03いいね
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