気球撃墜の要件緩和、空路安全確保で可能に 政府検討

気球撃墜の要件緩和、空路安全確保で可能に 政府検討
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『防衛省は15日、日本に他国の気球が飛んできた場合の武器使用基準を緩和する方針を示した。現在は戦闘機など有人機の飛来を念頭に正当防衛と緊急避難のみに限定している。人が乗っていない気球や無人機に撃墜などの対応をとりやすくする。

自民党の国防部会などの合同会議で説明した。過去に日本の領空内で確認された少なくとも3つの飛行物体が中国の無人偵察用気球と推定されるとの分析も提示した。

日本に中国の気球が飛来…

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『日本に中国の気球が飛来したり米軍が中国の偵察気球を撃墜したりした状況を踏まえて対策を強化する。

気球は国際法で航空機と位置づけられ、許可なく日本領空に侵入すれば国際法違反になる。自衛隊は戦闘機の緊急発進(スクランブル)による警戒監視などの対領空侵犯措置をとる。

自衛隊法84条は領空侵犯機を着陸や退去させるために「必要な措置」を講じられると定める。その際の武器使用の権限は明記しておらず、政府は正当防衛と緊急避難に限ると解釈してきた。

政府はこれまでの国会答弁などで具体例として領空侵犯機が実力で抵抗したり、弾倉を開いて爆弾を落とそうとしたりするケースを例示した。実態は警戒監視にとどまっている。

現行の政府解釈では偵察用気球の領空内飛行を止める手段は乏しい。気球が日本国内で電波情報の収集などにあたれば安全保障上の懸念になる。政府内では「航空機の飛行経路の安全確保に影響を及ぼす」場合には武器使用を可能とする案が浮上する。

浜田靖一防衛相は「国民の生命と財産を守るために必要と認める場合には所要の措置をとる」と話す。

自民党は16日に改めて合同会議を開き、政府と具体的な要件について協議する。松野博一官房長官は15日の記者会見で気球対策について「同盟国・同志国と緊密に連携しつつ、これまで以上に情報収集・警戒監視に努める」と強調した。

政府・自民党内には気球による領空侵犯対応の実効性を疑問視する声がある。飛行機などに比べて速度が遅い気球はレーダーなどで把握しにくいためだ。

米軍は今回撃ち落とした気球より以前の4回の飛来はいずれも即時に探知できていなかった。米軍が2月に入ってから気球などを次々と撃墜しているのは高い高度をより入念に調べるなどレーダーの監視体制を強化したからだとされる。

領空侵犯した気球を発見できたとしても、いきなりミサイルで撃つわけではない。まずは退去を求める警告などの手順を踏む必要がある。無人の気球では意思疎通できない可能性が高いうえ、飛行の意図や軍事用か民生用かといった識別も難しい。

15日の自民党会合では領空侵犯した気球について「すぐに撃墜すべきだ」との意見が出た。その一方で他国の飛行体に武器を使えば事態のエスカレーションを招く恐れがあり、厳格に運用すべきだとの指摘もある。

撃墜するための技術も課題となる。米軍は4日にF22戦闘機から空対空ミサイルを発射しておよそ6万フィート(1万8000メートル程度)の高度の気球を落とした。機内装備なども含めて高高度での戦闘に適しているのがF22戦闘機だが、日本は保有していない。

自衛隊が持つF15戦闘機なども高高度で対応すること自体は可能であるものの、気球や無人機などを標的にした訓練もしていない。武器使用基準を緩和しても実際の対応をすぐに変えられるわけではない。

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