東京23区の大学、デジタル系学部の定員増容認 政府検討
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13BI70T10C23A2000000/
『政府は東京23区の大学定員規制を2024年度にも緩和する検討に入った。原則禁止している学部新設や既存学部の定員増をデジタル分野に限り認める。IT(情報技術)企業が集まる都心部で産学連携を深め、成長産業の人材育成や国際競争力の向上につなげる。
内閣官房の有識者会議が近く定員規制の緩和案を示す。政府はこれに基づいて関連の政省令を改正し、定員増禁止の対象外となる基準を設ける方向だ。
内閣官房によると2…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。
残り771文字
すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
鈴木亘のアバター
鈴木亘
学習院大学経済学部 教授
分析・考察
デジタル関係学部の定員緩和ではなく、東京都23区内の大学の定員規制自体を撤廃すべきだ。デジタル学部に限らず、競争こそが教育にイノベーションを生み出す。競争を制限して良い結果が生まれることは何一つない。といっても、一度決まった政策を変えることは政治的に難しいから、まずは、地域大学振興法の施行から5年も経過していることを受けて、その効果をしっかりと検証することから始めてはどうか。果たしてそれで、都内大学への流入が減り、地方大学の流入が増…。』
『内閣官房によると21年時点で各大学の23区内にある学部への入学定員は約12万2千人で、全国(約62万3千人)の2割を占める。23区内に本部を置く大学は22年時点で101校あり、全体(807校)の1割強にあたる。
新設を認めるのはデジタル分野の人材を育てる情報系の学部や学科。既存の理工学部や情報学科、情報科などの定員拡充を認める案もある。増員は期間限定の臨時対応と位置づけ、一定期間を経た後に元に戻す。
経営余力のある大規模な私立大などを想定し、政府が全国知事会などと相談して判断する。
定員規制は18年に施行した地域大学振興法で導入した。28年3月末までの10年間の時限措置として23区内の大学の定員増を原則認めないと定めた。進学時に地方から東京への過度な人口流出を抑える狙いがある。
日本はデジタル分野の人材不足が指摘される。政府は30年に最大79万人ほど足りなくなると予測する。需要が旺盛な成長分野へ人材投入しにくい状態が続けば潜在成長率の低下を招きかねない。
データサイエンス系や情報系など「デジタル人材を育成する学部・学科」を有する大学は21年度時点で全国に137ある。入学定員は合計でおよそ2万1600人だ。企業にはこうした学部や学科からの人材輩出に期待がある。
20年度の大学発スタートアップの数は三大都市圏(東京、大阪、愛知)で平均422社だった。その他の地域は平均37社と差がある。
デジタル人材を活用する情報通信企業は東京に集中しており、実務家による講義やインターン受け入れといった機会提供の面でもデジタル教育は東京を拠点とするのが望ましいという見方がある。
政府によると海外で大学の立地だけを基準に定員抑制する規制はほとんど例がない。一極集中を抑える方策としては規制よりも地方大学自体の魅力向上、地方大学と企業の集積地づくりといった取り組みに軸足を置く。
【関連記事】
・デジタル時代、大学教育に変革迫る 公私立大理系拡充へ
・大学、データ人材育成に軸 実践型教育を産学で模索
・データサイエンス系学部、1900人増 17大学で23年新設
ニューズレター
多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
鈴木亘のアバター
鈴木亘
学習院大学経済学部 教授
コメントメニュー
分析・考察 デジタル関係学部の定員緩和ではなく、東京都23区内の大学の定員規制自体を撤廃すべきだ。デジタル学部に限らず、競争こそが教育にイノベーションを生み出す。競争を制限して良い結果が生まれることは何一つない。といっても、一度決まった政策を変えることは政治的に難しいから、まずは、地域大学振興法の施行から5年も経過していることを受けて、その効果をしっかりと検証することから始めてはどうか。果たしてそれで、都内大学への流入が減り、地方大学の流入が増えたのか、地方大学に行った学生は地方で就職しているのか、学生達は満足しているのかなど、検証すべき点は多い。また、大学の競争力低下など、副作用もしっかりみるべきだ。
2023年2月15日 20:45いいね
126
小黒一正のアバター
小黒一正
法政大学経済学部 教授
コメントメニュー
分析・考察 コメント欄の鈴木亘先生のご意見に賛成です。そもそも、2014年から東京一極集中の是正を図りながら、出生率の引き上げなどを数値目標に掲げる地方創生(東京23区の大学定員規制を含む)が推進されてきましたが、2021年の合計特殊出生率は1.30となり、6年連続の低下となっています。また、以下の試算のとおり、東京の人口を地方へ移住させても、出生率はほとんど上昇しないという事実も理解する必要があります。
[Q8]政府は、地方創生や東京の一極集中是正等で出生数を増やそうとしていたが、それでは不十分ということか。https://www.fsight.jp/articles/-/49535
2023年2月15日 21:51 (2023年2月15日 21:53更新)
いいね
49
ロッシェル・カップのアバター
ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング 社長
コメントメニュー
分析・考察 日本の大学には定員抑制の規制がかかっていると聞いたとき、とても驚きました。それは適者生存効果を阻害することになりますね。まあ、それが意図されているのかもしれませんが。
2023年2月15日 20:49 』