日銀異次元緩和、出口へ重責 総裁候補に理論派・植田氏
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『【この記事のポイント】
・10年続いた大規模緩和からの出口が次期総裁に託される
・国債市場の機能低下、混乱のなかの難しいかじ取り
・日銀が政府と結んだ共同声明の見直しの行方も焦点
政府が日銀の次期総裁に起用する方針を固めた植田和男氏を待ち受けるのは、10年続いた異次元緩和の手じまいという重責だ。マイナス金利政策や国債の大量購入を続けてきたが、成長と物価上昇の好循環は実現できず、市場機能の低下などの副作用…
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『国内屈指の金融政策の研究者である植田氏のかじ取りに市場の注目が集まる。
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歴代最長となった黒田東彦総裁の後任選びは難航した。政府が本命視していた雨宮正佳副総裁が、今後の金融政策には新しい視点が必要だと就任を固辞したためだ。政府が最終的に頼ったのが植田氏だった。経済学者でありながら実務経験もあり、現在の金融政策に精通していると判断した。
日銀の異次元緩和は前例のない実験だった。国債の大量購入で、日銀の国債保有額は13年3月の125兆円から23年1月の583兆円へと4倍超に拡大。発行済み長期国債の5割以上を買い占めた。上場投資信託(ETF)の保有額(簿価ベース)も1.5兆円から36.9兆円に増え、多くの上場企業の主要株主になる異常事態となった。
22年12月に日銀が副作用を解消するために長期金利の上限を引き上げると、金融政策の出口を見込んだ市場との攻防が激化した。1月の国債購入額は23兆6902億円と過去最多に達した。次期総裁は異例の混乱のなかで就任を迎える。
植田氏はマサチューセッツ工科大学で経済学の博士号を取得し、金融政策の理論に精通する。1999年のゼロ金利政策や2001年の量的緩和政策の導入に審議委員として関わった。異例の政策の導入を理論的に支えたのが植田氏だった。
植田氏は22年7月の日本経済新聞の「経済教室」で「異例の金融緩和枠組みの今後については、どこかで真剣な検討が必要だ」との考えを示した。一方で拙速な引き締めには警鐘を鳴らすバランス感覚をあわせ持つ。
10年目の異次元緩和政策には課題が多い。物価上昇率は22年12月に4.0%となり、日銀の物価目標の2倍に達した。ただ、エネルギー価格の上昇や円安などの要因が大きく、賃上げを伴いながら物価が持続的・安定的に上昇していくという日銀の目指した姿はいまだに実現できていない。
政策の限界が近づくなか、海外の投機筋は金融緩和の縮小を見込んで国債を売り続けている。日銀の国債購入の副作用で「(債券市場の)流動性の低下などは続いており、日銀はこの点を無視できない」(米ニューバーガー・バーマンのフレディリック・レプトン氏)との見方がある。
日銀が13年に政府と結んだ共同声明の見直しも焦点だ。物価2%目標を「できるだけ早期に実現する」という文言が、緩和一辺倒の硬直的な政策運営につながったとの指摘がある。岸田文雄首相は「見直すかどうかも含めて新しい日銀総裁と話をしなければならない」との立場だ。植田氏の判断に注目が集まる。
政策修正を探るにしても、経済・物価への影響を見極めながら慎重に進めざるを得ない。金利上昇は家計や企業の負担増に直結するためだ。国債残高が1000兆円規模に膨らむ財政への影響も大きい。金融政策の正常化は「狭い道」で、一歩踏み外せば金利上昇や円下落を招きかねない危うさもある。
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この記事の英文をNikkei Asiaで読む https://asia.nikkei.com/Economy/Bank-of-Japan/BOJ-governor-pick-Ueda-faces-disentangling-decade-of-ultraloose-policy?n_cid=DSBNNAR 』