中国の偵察気球「衛星補う狙いか」 識者に聞く

中国の偵察気球「衛星補う狙いか」 識者に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB104P80Q3A210C2000000/

『米政府は、撃墜した中国の偵察気球の解析を進めている。米国務省は9日、中国がこれまで40カ国以上の領空に偵察気球を飛来させていると明らかにした。中国の狙いや今後の注目点を識者に聞いた。

回収の気球「送信記録の有無が焦点」 明海大の小谷哲男教授

偵察気球は衛星に比べて、リアルタイムで情報が得やすい。解像度の高い画像に加え、宇宙空間まで届かない低周波数の電波を捕捉できる。中国は軍事基地間の通信の傍受な…

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『中国は軍事基地間の通信の傍受など、衛星の偵察能力を補うために偵察気球を使った可能性がある。回収した気球機器内に中国に送られたデータが残っているがが焦点になるだろう。

米軍が回収した気球からは電源確保のための太陽光パネルや、通信傍受のためのアンテナなどが確認された。間違いなく偵察用といえる。主な偵察対象は米国や米国の同盟国にある米軍基地だろう。台湾やインドなど中国と何らかの対立を抱える国・地域の情報を得ようとしていることも考えられる。

米政府が気球の解析情報を一部公開したのは、中国が偵察気球を今後使うのを難しくするためだろう。「気象観測用」との中国の主張を真っ向から否定し、中国による偵察の実態を国際社会に広める狙いがある。バイデン政権による対応への野党・共和党などからの批判を念頭に、中国の責任を問う立場をアピールする面もある。

「妨害電波、活用試した可能性」 拓殖大の佐藤丙午教授

拓殖大の佐藤丙午教授

気球の飛来が中国による広い意味での「実験」であったのは間違いない。中国から制御が可能で、位置情報を確認しながら飛ばしていたと推察される。気球に使われる素材の耐用性をテストしていたとの見方も出ている。

搭載されていたとみられる太陽光発電パネルの規模から、ある程度の電力を必要とする機器だろう。何らかの妨害電波を出して、衛星と地上基地との交信など軍事活動を妨害する作戦への活用を試していたのではないか。

回収した気球の解析が進めば、さらに多くのことが明らかになるだろう。仮に気球が米上空を通過後に中国に戻るルートを予定していたとすれば、地球を一周できる高度な飛行・制御技術を持つといえる。過去に偵察用と疑われる気球が確認された時に、日本などがどれだけ脅威を認識し、情報を共有していたのかも検証が求められる。

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