深まる世界の危機、米政治は膠着の2年へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN31DSK0R30C23A1000000/
『インフラ投資法や雇用創出、対中国を意識した半導体補助金法。バイデン米大統領が7日夜に臨んだ就任3年目の一般教書演説を聞くと、予想通り過去2年の成果を並べ立てた。だが次の2年への勢いは十分ではない。
中間選挙で議会下院の多数派を共和党が握るねじれが生じ、次の2年は立法の成果がほぼ見込めない。記者席から半円の議場を見渡すと、民主党議員が占める右半分だけが起立して拍手し、左半分の共和党議員はただ座って…
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『「うそつき!」。バイデン氏が「一部の共和党員はメディケア(高齢者向け公的医療保険)と社会保障を廃止しようとしている」と述べると、共和党側で強烈なブーイングが広がった。強い米国を訴えたときにだけ「USA!」の掛け声が起きた。
バイデン氏は2024年次期大統領選での再選に意欲を示し、最近も全国を遊説して回る。しかし、年明けからつまずいた。
副大統領時代の機密文書を私邸などに持ち帰っていたことが発覚。トランプ前大統領を同様の問題で「無責任」と批判してきた言葉が自身に跳ね返った。詳細を十分に説明しない姿勢も米メディアの不評を買った。
出馬を正式表明する機会を探るものの、米紙ワシントン・ポストと米ABCの最新の世論調査では民主党寄りの有権者でさえ6割近くがバイデン氏以外の候補を望む。
議会の党派対立は、バイデン政権が過去2年で積み重ねた外交の手足も縛りかねない。中国の偵察気球問題は「バイデン政権は優柔不断」(上院共和のマコネル院内総務)といった批判に火をつけ、「弱腰」を許さぬ空気を一段と濃くした。
民主党は大統領候補と「恋に落ちたがる」と評される。ビル・クリントン氏やオバマ氏のように、支持層を熱気で巻き込む候補を得たときに民主党は大統領選に勝利した。保守のイデオロギーに染まる共和党と違い、雑多な利益集団の集まりである民主党は党内を結束させるためにより多くの熱量を必要とする。
バイデン氏はカリスマとはいえず、その言葉は熱狂を生まない。それでも20年大統領選はトランプ政権の継続阻止という目標が追い風となった。「反トランプ」以外に何を自身の次の求心力とするのか。今回の演説でもビジョンはつかめなかった。
「CRINGE」。米議会では「中国、ロシア、イラン、北朝鮮、世界的過激派」の頭文字から、米国への脅威をこう呼ぶ。世界で危機は続き、深まっている。米政治が膠着する2年は、世界にとって長い2年となる。
(ワシントン支局長 大越匡洋)』