バイデン大統領、再選にらみ「公約」 ねじれ議会が壁
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『バイデン米大統領は7日の一般教書演説で「対立のための対立はどこにもいきつかない」と述べ、政策実現に向けて野党・共和党の協力を求めた。任期4年を折り返し、2024年大統領選への再選出馬を探る同氏の後半戦は、上下両院で多数派が異なる「ねじれ議会」が壁となる。共和党は強硬姿勢を崩しておらず、内政の停滞は必至だ。
順調だった演説が突然止まったのは、バイデン氏が移民問題に触れた瞬間だった。「国境を守れ」。…
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『「シーッ」と口をすぼめたのは、政権・与党側ではなく大統領の後ろで議場を見下ろしていた共和党のマッカーシー下院議長だ。党内の足並みの乱れを象徴する場面だった。
共和党は下院の過半数を僅差で奪還したため、マッカーシー氏はフリーダム・コーカス(自由議連)と呼ばれる一部の強硬派に配慮せざるを得ない。バイデン政権は政府の債務不履行(デフォルト)を避けるために、この不安定な野党から政府債務の法定上限を引き上げる協力を得る必要がある。
バイデン氏は演説で、格差是正や財政再建に向けて富裕層に最低税率を設けることを提案した。1月から1%の税率で導入された企業の自社株買いへの課税を4倍にする考えも示した。だが共和党はかねて減税を訴えてきた経緯がある。
バイデン氏は米アップルや米グーグルなどの巨大IT(情報技術)企業への規制強化も訴えた。「反トラスト法(独占禁止法)の執行を強化すると同時に、IT大手が自社製品を不当に有利にすることを防止するための超党派の法案を可決しよう」と呼びかけた。
共和党内は政府が企業活動に介入することに慎重な考えが多い。議会は22年までの2年間も複数のテック規制法案を審議したが成立しなかった。ねじれ議会で法整備を実現する道は険しい。
バイデン氏は演説で、殺傷力の高い銃の販売禁止や人工妊娠中絶を巡る権利の保護を訴えた。共和党内は銃規制の強化に慎重で、中絶禁止を求める議員が多い。いずれも超党派で妥協点を探る機運は乏しい。
バイデン氏は演説で気候変動対策について言及するなか、草稿にはない一文を加えた。「我々は少なくともあと10年は石油を必要とすることになる」。真意は不明だが、エネルギー業界に近い共和党に歩み寄る姿勢を見せたと受け止める声がある。
ただ共和党の態度はかたくなだ。7日、共和党を代表して反論演説をした南部アーカンソー州のサンダース知事は「政権は完全に急進左派に乗っ取られた。選択肢は正常か狂気かだ」と主張。この2年の政権運営について「巨額の無駄な支出をした」と断じた。同氏はトランプ前大統領の報道官を務め、近い関係にある。
共和党は歳出削減を求めている。バイデン政権が新たな財政政策を実現する余地は乏しい。
バイデン政権の前半2年は上下院とも与党・民主党が過半を握るなか、新型コロナウイルス禍に対応する1.9兆ドルの米国救済計画法に加えてインフラ投資や半導体の国産化支援、気候変動対策での歳出法を通した。大企業向けの最低税率も導入した。
一方でアフガニスタンからの強引な撤退は国内外から強い批判を浴びた。ガソリンの高騰など高インフレも対応が後手に回ったとして支持率低下の要因になった。「2年で1200万人の雇用を生み出した」。バイデン氏は過去のすべての政権を上回る規模だと胸を張ったが、コロナ禍で2000万人超の雇用が失われた反動という側面も大きい。
バイデン氏はまだ24年の大統領選で再選を目指すかどうかを明らかにしていない。もし続投を狙うなら、今回の「公約」を1〜2年で着実に実現できるかが当落を左右する。
今回の演説は共和党員への言及が12回と前回22年の約4倍に増え、超党派で政策を進めたいバイデン氏の願望がにじみ出た。前回最も多かったロシアへの言及が大幅に減り、外交より内政に多くの時間を割いた。ねじれ議会のもとで政権奪還を目指す共和党とどう折り合いを付けるのか、難題が待ち構えている。(ワシントン=高見浩輔)
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