「パンケーキクラッシュ」で被害拡大か トルコの大地震

「パンケーキクラッシュ」で被害拡大か トルコの大地震
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230208/k10013974801000.html

『トルコ南部の地震について耐震工学の専門家は建物が垂直に潰れるように崩れる“パンケーキクラッシュ”と呼ばれる非常に危険な現象がみられ、被害を拡大させた可能性があると指摘しています。

トルコで調査の経験がある東京大学地震研究所の楠浩一教授は、今回の地震による建物の被害について「低層から中層に至るまで多様な建物が倒壊している。中でも柱が瞬時に強度を失い、建物全体が真下に折り重なるように崩れ落ちる『パンケーキクラッシュ』と呼ばれる非常に危険な壊れ方がいくつかの地点で起きている」と指摘しています。

以下は「パンケーキクラッシュ」のメカニズムのイメージです。

激しい揺れで、建物の柱が瞬時に爆裂するように壊れます。

そして、建物の各フロアが折り重なるように壊れていきます。

楠教授によりますと、パンケーキクラッシュが起こると、建物の中にいる人は逃げる間もないため、「被害が拡大した可能性がある」としています。

楠教授によるとトルコは地震が多く、現在の耐震基準は日本と変わらない水準だということですが、それ以前の古く耐震性の低い建物も多数、残っているということです。甚大な被害につながった原因などについては今後、建物の建築年代との関係を詳しく調べる必要があるとしています。

また、集合住宅がいくつも同じ方向に倒れる被害についても注目し、大きな揺れが一方向に働いた可能性があり、さらに分析が必要だとしています。

楠教授は今回の地震では日本の耐震基準を満たす建物でも大きな被害が出た可能性があったと指摘した上で「非常に大きな地震はまれであっても突然、発生するのはトルコでも日本でも同じだ。日本の耐震診断・補強は進んではいるが、古い基準で設計された建物はまだ残っている。耐震補強をさらに進めることが非常に重要だ」と話しています。

“日本の「震度7」に相当する激しい揺れ“

地震工学が専門の山形大学の汐満将史助教は日本時間の6日午前10時すぎに起きたマグニチュード7.8の地震について、トルコ国内にあるおよそ30の観測点で得られた地震計のデータを解析しました。

その結果、震源の直上にあたる震央から南西およそ60キロにあるハタイ県のハッサでは、日本の震度に換算して「震度7」に相当する激しい揺れが観測されていたことが分かりました。

震度7の揺れは1995年の「阪神・淡路大震災」や2011年の「東日本大震災」、2016年の「熊本地震」でも観測され、いずれも甚大な被害が出ています。また震度「6強」や「6弱」に相当する揺れが震源付近の長さおよそ160キロの範囲に及んでいたことも分かりました。

揺れの周期については、日本の中層以下の建物など比較的大きな構造物にも大きな被害が出るおそれのある、1秒から2秒程度の揺れも観測されたということです。

汐満助教は「日本の建物でも大きな被害が出うる震度6強から7相当の激しい揺れが生じたことが大きな被害につながったと考えられる。今回の揺れ方が建物にどう影響したか、今後、さらに検証が必要だ」と話しています。』