米国、気球分析で「中国の能力と意図明確に」 返却否定

米国、気球分析で「中国の能力と意図明確に」 返却否定
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN06CGK0W3A200C2000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は6日、米軍が4日に撃墜した中国の偵察気球を分析すれば中国の偵察能力と意図が明らかになるとの認識を示した。記者団に、回収した気球の残骸を中国に返却する予定はないと表明した。

撃墜した偵察気球は南部サウスカロライナ州の沖合6マイル(約10キロメートル)ほどの米領海に落下した。残骸は少なくとも7マイルほどにわたり散らばってい…

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『残骸は少なくとも7マイルほどにわたり散らばっているもようだ。米軍によると、気球の大きさは高さ最大200フィート(約60メートル)だった。海面の残骸に加え、無人機を使って海中からの回収も急ぐ。

カービー氏は気球の解析で「能力だけでなく中国が気球を使って何をしようとしたのか、より明確にできる」と指摘。「(飛来中の)気球の監視と残骸の回収によって得られる情報は価値があると証明されるだろう」と語った。

米国は過去に少なくともトランプ前政権時代に3回、バイデン政権発足後に1回は米領空で中国の偵察気球を確認している。カービー氏は飛来の範囲や通信技術など「能力を改善しようとしている。中国が国家安全保障上の利益があると信じているのは明らかだ」と話した。

飛行した西部モンタナ州には大陸間弾道ミサイル(ICBM)を運用するマルムストロム米空軍基地がある。米国防総省は「軍事施設を偵察しようとした」(高官)と断定。カービー氏は中国側が制御でき、速度を変えたり旋回したりする能力を持つ偵察気球だったとの見方を示した。

中国外務省の毛寧副報道局長は6日の記者会見で、米国が撃墜した中国の偵察気球を巡り「中国は一貫して国際法を順守し、ほかの国の主権を尊重している」と主張した。

カービー氏は米領空内で気球を撃ち落とした対応について国際法違反ではないと明言した。「米国は国際法に従い、領空内で撃墜した。国際法を守らず、米領空を飛行させた中国とは異なる」と訴えた。

これからの米中関係に関し「世界でも最も重要な2国間関係のひとつだとのバイデン大統領の考えは変わっていない。米国は中国との紛争を求めていない」と指摘。気球の飛来を受けて延期を決めたブリンケン米国務長官の訪中を巡っては「時期が来れば中国側と議論を始めるだろう」と述べた。

国務省のプライス報道官は6日の記者会見で、撃墜の事実は事後に中国に通告したと明かした。「中国にとって驚きはなかったはずだ。ブリンケン氏が3日に(中国外交担当トップの)王毅(ワン・イー)氏に電話で『米国は国益を守るために適切な行動をとる用意がある』と強調していた」と説明した。

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・米軍、過去の気球飛来を即時発見できず 欠陥認める
・米軍、偵察気球の残骸回収 中国の情報収集能力を分析

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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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ひとこと解説 今回、中国の偵察気球を撃墜する任務を担当した二人のパイロットたちのコールサインは”FRANK01″ 、”FRANK 02″であり、第1次世界大戦で14機ものドイツ軍偵察気球を撃墜した英雄Frank Lukeにちなんでいる。中国の国防部は対抗して「中国は類似の状況で類似の対処を行う権利」を明言した。この偵察気球問題は、米中間の安全保障対立を間違いなくさらにエスカレートさせている。
撃墜された気球はカナダ領空を通過したのち、アメリカに入ったものである。さらに、もう一つの偵察気球が中南米上空に発見されたようだ。コロンビアやコスタリカがどう反応するのか。問題は米中関係以外にも波及しそうだ。
2023年2月7日 8:27 (2023年2月7日 8:47更新)
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今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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分析・考察 根源的には、中国政府の「相手の立場に立って考える」という経験と自覚の不足から生じている問題では。しかもこの気球飛来と撃墜は、中国のような巨大な国の場合、この自覚が首脳や外務省など一部にあるだけでは不十分なことをも示したと思います。政府の活動を分担する細部にまで浸透していないと、このタイミングで米国に気球を飛ばしてしまう、通知が発見されてからになるという国全体として自覚がないと言われても否定できない行動をしてしまうのでしょう。この事態を受けて中国政府の内部で自覚が細部に浸透すればよいのですが、権威主義の中国ではそれも難しそう。今後も同様の事態が起こるリスクは大きいと思います。
2023年2月7日 13:09いいね
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察 今回の中国の米国の気球への対応について、ニューヨークタイムズ紙に米国の中国専門家の見方が掲載されています。共通しているのは中国政府の危機管理能力の欠如が、今後も米中の不要な対立を高めかねないという危機意識です。今回の事件で、ブリンケン国務長官の訪中が延期されましたが、気球を管理する人民解放軍の部局が、昨年11月の習・バイデン首脳会談で米中関係改善の貴重な成果であるこの外交日程を考慮せずに気球を運行させていたのではないか、という疑問をテイラー・フラベルMIT教授は持っています。これが偵察機墜落のような展開の早いものなら事態は深刻だとドリュー・トンプソン元国防総省中国部長は指摘しています。
https://www.nytimes.com/2023/02/06/world/asia/china-balloon-xi-jinping.html
2023年2月7日 7:34いいね
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察 この小さなことがここまで大事になってしまったというのは、やはり北京のリスク管理に問題があるといわざるを得ない。この気球について国際法上の解釈はわかれているが、立場を置き換えれば、外国、たとえば、米国気球は中国の上空に進入した場合、どんな結果になるか。偏西風によって従来の軌道から外れてしまったならば、いち早く沿線国に知らせておけば、大事にならなくて済むはず。一番よくないのは報復措置を取るとちらつかせること。それによって、問題の解決に資しないだけでなく、国際社会における中国イメージが悪くなる。外交は中国から外国をみる目だけでなく、外国から中国をみる目も必要である
2023年2月7日 8:03いいね
145 』