米中貿易、4年ぶり過去最高 日用品・食品など依存高く
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『【ワシントン=飛田臨太郎、ニューヨーク=堀田隆文】米国の中国とのモノの貿易額が2022年に4年ぶりに過去最高を更新した。米商務省が7日発表した貿易統計によると輸出入の合計額は6905億㌦(約91兆円)で、最も多かった18年を上回った。米国は玩具などの日用品、中国は大豆などの食品関連で輸入が増えており、相互依存はなお高い。
米中両政府が18年夏から19年に繰り広げた制裁関税の応酬や、新型コロナウイ…
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『米中両政府が18年夏から19年に繰り広げた制裁関税の応酬や、新型コロナウイルス危機に伴うサプライチェーン(供給網)の混乱で米中貿易は19〜20年に落ち込んだ。22年は米政府が10月に先端半導体の輸出規制を導入するなどハイテク分野での取引規制を強化したが、消費財の貿易は増えた。世界的なインフレが貿易額を押し上げた面もある。
米中貿易戦争の影響が本格化する前の18年と比べて貿易構造は変化した。米国の22年の中国からの輸入額は5367億㌦で過去最高の18年とほぼ同水準だった。輸入額に占める比率が高まったのは玩具やプラスチック製品などの汎用品だ。
1〜11月の玩具やゲーム類は7.5%と18年比で2ポイント以上増えた。22年前半は米個人消費が好調だった。丸紅ワシントン事務所の阿部賢介氏は「輸入業者にとって、制裁関税がかかっても中国製品の原価の安さのメリットが大きかった」と語る。
トランプ前政権が課した玩具やプラスチック製品など中国製品への計3700億ドル分の制裁関税は現在も大半が残ったままだ。バイデン政権は見直しを検討したが、22年8月のペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問などで関係が悪化し、機運が薄れた。
米国からの22年の対中輸出は1538億㌦と過去最高を更新した。最も変化が大きかったのは大豆やトウモロコシなどを含む穀物類で、1〜11月の輸出額に占める比率は11%と18年の同時期(3%)から大幅に上昇した。中国の消費量が多い大豆の生産は米国と中南米が8割を占め、食用だけでなく養豚など飼料用の需要が拡大している。
一方、航空機や宇宙関連の輸出に占める比率は18年の14%から3%に落ち込んだ。米ボーイング製などの民間航空機は中国向けの最大の輸出品だったが、貿易戦争とコロナ危機で受注が低迷した。中国は国産航空機の製造開発に力を入れる。
米中の政治的緊張を抱えながらも、企業は双方の巨大市場でビジネスチャンスを逃すまいと動く。米中ビジネス評議会のクレイグ・アレン会長は「安全保障に関係のない95%の貿易産業は関係が継続している」と明かす。
貿易統計に表れない企業活動もある。中国企業は米国への輸出継続に向け、生産拠点としてメキシコに注目する。中国の家電大手ハイセンスはメキシコの新工場で米国向け冷蔵庫を生産する。
米ピーターソン国際経済研究所のバーグステン氏は「米国が中国を封じ込めようとしても失敗する。機能的なデカップリング(分断)戦略を模索しながらも、世界経済は米中が引っ張っていくべきだ」と指摘する。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の佐々木伸彦理事長は「日本企業はチャイナリスクを注目しているが、チャイナチャンスも同時にみるべきだ。機微な技術品目には留意が必要だが、それ以外の分野はチャンスを逃さない対応が求められる」と強調する。
米中貿易が今後も伸び続けるかは不透明だ。中国の偵察気球が米国に飛来した問題で、米中外交は厳しさを増す。ボストン・コンサルティング・グループは1月のリポートで、米中貿易額が31年にかけて10%減ると予測した。
米貿易赤字、2022年過去最高156兆円
米商務省が7日発表した22年の米国のモノの貿易赤字は1兆1818億ドル(約156兆円)で過去最大を更新した。前年に比べて10%近く増加した。同年前半に個人消費が伸び、輸入品の需要が高まった。
輸入は3兆2466億ドルと14.7%増えた。携帯電話などの消費財が伸びた。新型コロナウイルス危機後のサプライチェーン(供給網)の混乱が一服し、産業関連の輸入も増加した。
輸出は2兆647億ドルで17.7%増加した。原油や天然ガスの輸出が大きく伸びた。欧州を中心にロシア産から米国産にエネルギー調達を切り替える動きが広がった。
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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Economy/U.S.-China-trade-hit-record-in-2022-despite-tensions
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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説米中貿易そのものは増えていますが、中身が確実に変わってきました。安全保障に関係するデジタル分野などでは中国の影響を削ぎ、それ以外は元に戻す動き。つまり、「デカップリングの精緻化」が進んでいます。
2023年2月8日 0:51 (2023年2月8日 0:52更新)
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説景気回復局面で輸入が増えやすい、すなわち貿易赤字が膨らみやすいという、米国経済の体質には変わりがないことが確認されたと言えるだろう。このため、コロナ禍を脱した22年に、対中国も含めて、米国の貿易赤字幅は拡大した。
2023年2月8日 8:08いいね
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察したがって、いつもコメントさせていただいているのは、日米欧にとってゼロチャイナはありえない。いかにウィズチャイナを続けるかがポイント。ただし、半導体などの最先端技術と部品は徹底的にディカップリングしていくものと思われる。日米欧にとって中国は巨大な市場であり、日用品の供給元でもある。サプライチェーンを強靭化するという意味では、中国への依存度を多少調整する必要があるかもしれないが、中国に代わる国は見つからないのは確かなことである
2023年2月8日 7:27』