米共和、気球撃墜「遅きに失した」 対中国強硬論拍車も
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『【ワシントン=坂口幸裕】米上空を飛行していた中国の偵察気球を4日に撃墜した米政府の対応を巡り、野党・共和党は「遅きに失した」などと批判を強める。1月28日に米領空に入ったと確認したにもかからず、撃ち落とすまでに8日間を要した判断を問題視する。今回の事件で連邦議会の対中強硬論に拍車がかかり、米中の緊張が高まる可能性がある。
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上院共和トップのマコネル院内総務は5日に声明を発表し「バイデン政権は優柔不断で、遅きに失した」と断じた。米国とカナダの上空を通過し「両国民を危険にさらすことなく直ちに撃墜できた場所があった。抑止力を強化する機会を逸した」と記した。
下院共和のマイク・ギャラガー中国特別委員長は4日、米フォックスニュースで「なぜもっと早く撃墜しなかったのか。恥ずかしく、理解しがたい」と非難。「中国共産党は米国を試し、できるだけ多くの機密情報を集めようとしている。政権の対応は多くの疑問を投げかけられている」と訴えた。
共和のマルコ・ルビオ上院議員は撃墜前にツイッターで「バイデンが撃墜さえしないなら、中国がインドや日本から領土を奪ったり台湾を侵攻したりしても何もしないというメッセージになる」と警告していた。
マージョリー・テーラー・グリーン下院議員は4日、トランプ前大統領と話した直後にツイッターに「トランプ大統領なら米国に入る前に撃ち落としていた」と投稿した。
2024年大統領選をにらむ与野党はともに対中強硬姿勢に傾く。今年1月には議会下院に中国問題を集中的に扱う「中国特別委員会」の創設を与野党の賛成多数で決めた。安全保障や経済など米政府の対中国政策を監視する狙いだ。
バイデン米大統領の発言からは議会からの「弱腰」批判を意識した様子がうかがえる。4日、記者団に「2月1日にできるだけ早く気球を撃墜するよう命じた」と強調。残骸の落下で住民に被害が出るのを懸念した国防総省から「最も安全な場所で実行するのを待とう 」と進言され、同省の見解を尊重したとの経緯を自ら説明した。
米軍は米連邦捜査局(FBI)と協力し、撃墜した気球の回収作業を急ぐ。気球には軍の機密情報が含まれている可能性があり、中国側の反発も予想される。与党・民主党の上院トップ、シューマー院内総務は4日の声明で「機材を回収し、中国共産党が使用した技術を分析できる」と指摘した。
民主からは気球飛来を受けて決めたブリンケン国務長官の訪中延期について「中国に行くべきだった。中国との直接的な衝突は望んでおらず、対話は前進させるべきだ」(下院軍事委員会幹部のアダム・スミス氏)との声があがった。
元米国務省高官は「対話軌道に再び戻すには時間がかかるだろう」と話す。米中は偶発的な衝突という不測の事態を避けたいとの思いで一致する。当面は緊張をはらみながら対話の糸口を探る展開が続くとみられる。
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察気球問題で一番ロスを被っているのは北京である。ただでさえ、対立がエスカレートしている米中関係が火に油を注ぐようにさらに悪化してしまう可能性が高い。ブリンケン国務長官の北京訪問もドタキャンされてしまった。これで習主席は2月中にモスクワを訪問したら、米中の対立は完全に解消できなくなる。近い将来、マッカーシー下院議長はおそらく台湾を訪問する。北京はまた軍事演習するかどうか。いつものことだが、国際情勢はちょっとしたことで急変してしまう。今こそ、リスク管理が求められている
2023年2月6日 7:55 (2023年2月6日 8:15更新)
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