日NATO会談 ようやく対中認識が一致した
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230201-OYT1T50207/
『(※ 読売新聞の社説)
日本は、欧米の軍事同盟には参加できない。だが、抑止力を向上させるため、安全保障協力を深める意義は大きい。
岸田首相は、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と首相官邸で会談し、防衛分野での連携を強化する方針を確認した。
特筆されるのは、日・NATO間でまとめた共同声明だ。
声明では中国を名指しし、「軍事力強化と軍事活動の拡大」について、透明性の向上が必要との認識を示した。「台湾海峡の平和と安定の重要性」にも言及した。
ストルテンベルグ氏が前回2017年に来日した際の声明にも、中国の現状変更の試みを懸念する表現はあったが、名指しでの批判は避けていた。
中国は南シナ海で軍事拠点化を進め、台湾周辺では威圧的な活動を繰り返している。こうした覇権主義的な行動に対するNATOの警戒感の高まりが、今回の声明に反映されたと言えるだろう。
共同声明では、ロシアによるウクライナ侵略を強く非難し、中露の軍事連携に懸念を示した。
中露が揺るがしている国際秩序を回復するには、日米欧の結束が欠かせない。
共同声明ではまた、日・NATO間で具体的に協力する防衛分野として、サイバーや宇宙を掲げた。欧州とアジアといった地理的な距離に関係がなく、連携しやすい分野と言えるのではないか。
ストルテンベルグ氏は来日前、韓国を訪問した。現地での講演では、韓国によるウクライナへの軍事支援の必要性を訴えた。
日本は昨年、防衛装備移転3原則の運用指針を見直し、ウクライナに防弾チョッキや防護マスクを提供したが、殺傷能力のある装備は対象外のままだ。
政府は先月から、ロシア軍が敷設した地雷などの除去に向け、ウクライナ政府職員に対する訓練をカンボジアで始めた。内戦後のカンボジアで地雷除去に携わった経験を踏まえたものだ。日本の強みを生かした支援を続けたい。
政府はこれまでに、ウクライナに対して食料や発電機の提供、財政援助などで総額約15億ドル(約1950億円)を投じている。だが、先進国の中では見劣りする。
日本周辺の安保環境の悪化を考えれば、ウクライナ危機は人ごとではない。アジアで有事が発生した場合、日本が欧州の支援を頼ることもあり得よう。着実にウクライナ支援を重ね、欧州との信頼関係を醸成することが大切だ。』